第19話 粗大ゴミ
こうなると、キーマンは布団屋に思える。ただ、ここはあえて相手をじらそう。おそらく、他の三人のだれかから情報はいっているだろう。もしかしたら僕の写真も出回っているかもしれない。とにかく、無理につじつまを合わせようとして、考えすぎて矛盾が生じることに期待したい。
学校へ行くと、相変わらず寮の前は粗大ゴミが散乱していた。ゴザやベッドは当たり前。パンクした自転車に、謎の彫刻まである。寮の連中は、オブジェと呼んでいる。しかし、どうみても粗大ゴミだ。4月の新入生歓迎で使われた大きな立て看も放置されているし、ゴミ屋敷一歩手前という状態。僕も一年の時、お世話になったが、今よりましだったと思っている。おそらく、どの年の生徒もそう思いたがるだろう。
僕は実家は遠くはないが、今でも一人暮らしをしている。研究室は時間が不規則だし、友人と下宿で朝まで気兼ねなく騒ぐこともできた。
ゴミの中に、真っ白な大きな塊を見つけた。それは、その場に似つかわしくないほどきれいだった。
結構新しいベッド用のマットレスだ。一体誰が捨てたんだろう。マットレスをしげしげと眺めていると、
「いいだろ。ちょっと離れた公園で浮浪者がどこかで拾って使ってたんだが、邪魔になって売りに来た。若干破けてるがスプリングもしっかりしてる。5千円で買った。今夜、二階から飛び降りる一年の肝試しで使うんだ。昔、住んでたよしみだ。よかったら参加してみない。部外者だから一回五百円でいいよ。」
元寮長のやつが、得意げに話してきた。4年は何かと忙しいので、3年が寮長をすることになっている。
「いや、結構。」
冗談じゃない。なんで金払ってまで危険なことをしなきゃならないんだ。しかも、五百円あれば弁当2つは買える。
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