第14話 死人の口

 死人に口なしというが、ここは死人から直接話を聞こう。

「どうだったかな?あの夜、二次会で初めて行った店だからな。」

 雑居ビルの2階。初めての店の窓の位置など知るわけも無い。しかも、二次会。すでに日よけは出てなかったはずだ。1階は、看板も出て無い会員制のバーのようである。ママは住み込みのようだ。


 次の手がかりとしては、葬儀屋か坊主だ。

「葬式の調査は毎年、来るよ。地域によって予算とか規模とか。」

 これでは、一般の調査で店のほうの調査にはつながらない。

「出版社からお布施の調査ってのが来てたな。全国調査。うちは下請けだから、条件悪いけど、やってみる?」

 どうやら、これも街頭インタビューがメインらしい。何が、悪いのかって、まずは縁起が悪い話には回答数が少なくなる。さらに、坊主は絶対に金額はしゃべらない。大抵は、葬儀屋のほうが相場を提示してくる。


 まずは、年寄りに、自分の葬式の準備資金を聞く。

「うちに現金は無いよ。」

 最近の特殊詐欺の影響で、老人たちはやたら警戒心が強くなっているようだ。とりあえず、マイクとカメラを持って出る。こうすると、何かの取材と思って、饒舌になる。

 いきなりお布施について聞いても、答えてくれない。まずは、墓石の準備の話から入り、葬儀代、お布施と進めていく。年寄りは数十万ぐらいを想定しているようだが、若い連中は数万から、一式コミコミと考えているようだ。

「葬儀代もコミコミプランの時代になったのかねえ。」

 そう思いながら、いよいよ本丸の葬儀屋に向かう。西上葬儀社。平屋の小さな造りだ。葬儀は別の共同会館で行っているようだ。

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