第12話 日よけ
供養のことを知らせるという名目で、全員の住所と名前を教えてもらう。
待っている間に、僕はふと天使の落ちた窓から下を眺めた。
「下が見えない?」
下の住人が窓のすぐ下に茶色い布の日よけを出している。そのため、地面が見えないのだ。
「すみません。ちょっと確認したいことがありまして。」
僕はすかさず、下の部屋に行った。返事が無い。
「この下で先日の飛び降り事故の供養をしたいと思っていますので、一応許可をいただきたいと思いまして。」
そんな必要は無いのだが、方便ってやつ。
「それは大変ですね。うちはかまいませんよ。」
インターフォン越しに女性の声がした。
「上の窓から、清めのお神酒を巻くかもしれませんが、日よけにかからないようにしますので。」
「ああ、あれね。昼だったら声をかけてね。」
不思議なことをいうものだ。夜は留守ということなのだろうか?
「夜はいいんですか?」
当然のごとく、僕は尋ね返した。すると女性は、穏やかな口調で、
「夜は閉じてるから。以前上の店の客が窓からタバコをすてて、あやうく火事になりかけたのよ。だから、営業時間中は閉じることにしたの。手間だけど夜だから日よけは使わないしね。」
と、答えてくれた。
なるほど、天使のやつは日よけの上に降りるつもりで、落ちた可能性もあるわけだ。
まずは、天使の家に行って伝えた。
「ありがたいことです。警察は捜査内容は秘密と言って何も教えてくれなくて。」
おばさんは、仏壇に手を合わせる僕に話した。
警察というところは、遺族にも詳しいことは話さないところらしい。捜査情報が漏れると、万一にも殺人となったときに立件が困難になると考えているのだろう。
真実が知りたくて、裁判をするということをよく聞く。しかし、自殺では訴える相手もいない。
「何かわかったら、教えます。」
そういい残して僕はかれの家を後にした。
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