第11話 供養

 店では、天使がなくなって一か月ということで、坊主を呼んで供養することになた。僕としては、そんな話より、どうして天使が飛び降りることになったのかが知りたい。

「供養のためにも、状況をすこし伺えるといいのですが。」

 おそるおそる僕はオーナーに尋ねた。

「店長にきくとよかろう。」

「いえ、店長さんでは話しにくいこともあるかもしれませんので。」

 天使のやつは死んだショックで記憶があいまいだし、ここは客観的な事実が欲しい。

「わしも、警察から聞いただけだが、同窓会で悪ふざけが過ぎたということぐらいしか知らん。2階だから平気だと思ったのか。あとは、店長に聞いてくれ。」

 僕は、あとのことは会社に任せて、その場を去った。


 その夜、開店前に店長と話をする機会を得た。

「気がついたら、飛び降りてたのよ。5人ぐらいの集団だったかしら。」

 おっさん顔のお姉っぽい店長が暑苦しい顔を近づけながら話す。

「そうだ、外に飛び出したら、しきりにマッド・マッドとか叫んでたわね。それで、警察も自殺って思ったらしいし。直接、彼らに聞いてごらんなさい。」

 マッドというと、イカれているてことだろうか?店しても損害請求することも考えて、念のため全員の住所と職業は店でも控えていた。


 その後店は、客の死亡事故を、きちんと供養する店ということで、話題にもなり、客足は以前にも増すことになる。

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