第5話 残酷な天使と刑事

「じゃ、就活がんばれよ。またな。」

「おう。」

 やつは、見かけとは裏腹に、律儀だ。しかし、別れ際のこの言葉がやつとの一応、最後の言葉になった。翌朝、天使が死んだとのニュースが流れたからだ。


 自殺と報じられた。僕には信じがたかった。昨日会っている。何か悩んでいるような様子も無かった。目撃者の証言では、中学の同窓会で、盛り上がったかと思ったら、いきなり窓から飛び降りたらしい。

 僕に会った後、同窓会の会場へ行ったようだ。僕はとるものもとりあえず、彼の家に向かった。

 家から出ると、待ち構えていたかのように二人組みの刑事に事情徴収をされた。

「一応、型通りの質問ですので、ご協力ください。」

 そういうと、刑事は昨日、僕がどこで何をしていたか細かく聞いてきた。

「自殺なんですよね?」

 あまりのしつこさに僕は思わず言ってしまった。刑事たちの目の色が変わった。

「ほう、どうしてそう思いました?」


 待っていましたとばかりに、たずねてきた。

「話が細かいから。」

 そういうと、

「そうですか。これが、普通なんですよ。今日のところはこれで。」

 と、言ってそそくさと引き上げていった。

 やましいとこえろは何もないが、なんだか後味が悪い。昭和の頑固親父なら、

「塩持って来い!」

 といって、ぶちまけるところだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る