第2話 堕天使

「ナルキなんてスポーツメーカみたいでかっこいいじゃないか。おれなんて天使ってどうやってもしゃれにならないぜ。」

 天使のやつは、よく慰めてくれた。いや、本心で思っていたのかもしれない。

 幼稚園や保育園までは、大人たちが、かっこいいとか、すてきとかいう。でも小学校になると状況は一変する。

「ランドセルによく羽を描かれたなあ。」

 いまでは、笑っているが、当時はどんなに大変だったろう。教室でも、なにかにつけ、

「何だ?天使?」

 とか言われたらしい。

「今じゃ、堕天使って怖がられて多少よくなってるけどな。」

「ふうん。」

 変な名前同士で、慰めあっていたのかもしれないが、そんな穏やかに過ごせたのもあいつが停学になるまでだった。


「パチンコ屋に出入りしているって話しよ。」

「カツアゲしていたらしい。」

「万引きして補導されたって。」

 入学当初から目をつけられていただけに、色々な噂が飛び交った。


 実際のところは、パチンコ屋には、鍵をかけたまま遊びに出ていた親を探しに行っただけだし、カツアゲされて困っていたやつに渡したお金を返してもらってたところを見られただけ。補導ってのも、見た目だけで万引きグループの仲間だと思われただけだった。

 あいつは言い訳はダサいと思っているから、何も言わないし、教師の本当のことはわかっていたのかもしれないが、他の親たちのクレームに耐え切れなくなって、処分したというのが本音だろう。


 お陰で、あいつは一年留年だ。

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