第28話 これはここでも重要
なんかな……の仕事を終え、初心者の街に戻ったあたしたち。
あばら屋に戻ってくると、ロータスは手に持っていた依頼書にクレームを叩き付け、それをそのまま斡旋所に持っていった。
「あれでも、ちゃんとお金になるんだよ。場合によっては、迷惑料上乗せもありってね!!」
イリーナが笑った。
「へぇ、知らなかったな。任せっぱなしだからよ!!」
「リズはまず近寄らない方がいいよ。仕事にありつけない連中がカリカリしてるから、変な事するとぶん殴られかねないから!!」
イリーナが笑みを浮かべた。
「ああ、そういやスズキとトモミは?」
「先に着いているはずだよ。そのうちくるんじゃない」
その言葉通り、しばらくするとスズキがやってきた。
「いや、凄いね。なに、あの問答無用な感じのやつは?」
「も、問答無用って……あれが、神の力だよ。滅多に使わねぇ理由分かるだろ。強すぎて、下手にやるとこの世界をぶっ壊しかねないんだ」
あたしは苦笑した。
「そりゃそうだよ。あれでなんでもかんでもやっちゃったら、なにも面白くないもん。で、今回敵だったあれってなんなの。今までみた事もないよ」
スズキが不思議そうな顔をした。
「ああ、悪魔っていってな。神とは対極にある存在なんだ。あれは突如現れて世界をぶっ壊して回るから、今回この位で潰せてよかったぜ!!」
「へぇ、そんな物騒なもんがねぇ。ああ、トモミは温泉で汗流すって。あんなの初めてだて、冷や汗かきまくったんだって」
スズキが笑った。
「それじゃ、ロータスを待って、みんなでいこうか。これ忘れてたよ、返す」
イリーナがあたしに無線機を手渡した。
「ほら、役に立ったでしょ。ないよりはマシ程度でね」
スズキが笑みを浮かべた。
気合い入れてクレーム入れたら、結構な大金になったようで、ロータスがほくほく笑顔で戻ってきた。
「こういうときは、山分けがここの不文律だな!!」
ロータスが握りこぶし大の麻袋を、スズキに手渡した。
「あんまり働いてないけどね。ミサイル代に取っておくよ」
スズキが麻袋を受け取った。
「よし、温泉にいくぞ!!」
イリーナがあたしの肩を叩いた。
全員で温泉に行くと、トモミが露天風呂に浸かっているのが、内風呂のガラス越しに見えた。
「おっ、いたいた。やっぱり露天だな。トモミは空が見える方が好きだからね」
スズキが指さしていった。
「さすが、飛行機野郎だぜ!!」
イリーナが笑った。
あたしたちもかけ湯で体を流し、洗い場で洗ってから露天風呂に移動した。
「あたしも露天がいいな。慣れてるって事もあるけど!!」
あたしたちが湯船に入ると、トモミが小さく敬礼を放った。
「お疲れ様でした。ほとんどお役に立てず、申し訳ありませんでした」
「んなことねぇぞ。最後の一撃がなかったら、ちと面倒な事になってたぜ!!」
トモミがあたしの腕を掴んだ。
「リズさんです。リズさんを機首に搭載して飛べば、もう無敵です!!」
「と、搭載!?」
「馬鹿者、守り神になにをする!!」
スズキの拳が、ここぞとばかりにトモミの頭に拳をめり込ませた。
「……ここぞとばかりって?」
「前からやってみたかったんだ。めり込ませってヤツをね。ほうほう、これがツッコミだな。ボケる、ドツく、その余韻か。なるほどな」
「す、スズキが!?」
あたしがのけぞると、ロータスが笑った。
「いよいよ、我慢出来なくなったか。リズってボケだっけツッコミだっけ?」
「ど、どっちも出来るよ。なんなら、混合も可能だ!!」
……スタンスが曖昧。
「まあ、いいや。暴れたあとは、これに限るぜ!!」
あたしは、夕焼けの空を見上げて、大きく伸びをしたのだった。
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