第17話 討伐完了

 移動の途中で立ち寄った街。

 馬鹿野郎な盗賊が乗った暴走車を撃破したのち、街の長から近くに盗賊の住処があって困っているという話を聞いた。

 もののついでとばかりに、あたしたちは余闇迫る中、急ぎ街を出発したのだった。

「それで、その盗賊のアジトってのは、どこにあるんだ?」

 あたしは暗視モードの画面を見ながらいった。

「大して遠くはないぞ。十分もかからねぇだろ。初心者の街でスズキが無人機で航空支援してるし……ちょっと待て。向こうも気がついたらしい。こりゃすげぇな、装甲車両が八両。主力戦車も混じっているってよ。こいつは楽しくなってきた!!」

「……出たな、ハイテクなアレ」

 あたしはため息を吐き、画面に集中した。

「おい、こいつ一両じゃ難しいぞ。集中砲火を食らったら、さすがに重機関銃程度しか防げねぇ装甲じゃもたねぇぜ!!」

 あたしはロータスにいった。

「分かってる。スズキの指示で暇してたアパッチ野郎が二機飛んでくる。逆に全部ぶっ壊さねぇか心配だぜ」

「……それでも、ミッションコンプリートだぜ」

 栗真が急に右に曲がった。

「いたぜ、M-113だな。二十五ミリで十分だ。十三時に三両。

「あいよ!!」

 あたしの操作で砲塔がやや動き、画面上の照準点に向かって二十五ミリ機関砲を発射した。

 闇の中にパッと爆光が走り、たちまち三両が擱座した。

 そこからわらわら出てきた連中に向かって、ロータスがハッチに備え付けのM2重機関銃を撃ちまくった。

「よし、こんなもんだろ!!」

 ロータスがいったとき、近くの地面がめくれ上がり、遠雷のような砲撃音が聞こえた。

 次の瞬間には車が急発進し、近くの岩陰に逃げ込んだ

「分かってるな、戦車だぞ。どこにいやがるんだか。下車チームが乗ってねぇと、こういうときに困るんだよな」

 ぶつくさいいながら、砲塔上ハッチから身を乗り出したまま、ロータスが辺りを見回した。

「無理すんな。そもそも、主力戦車とタイマン張れる車両じゃねぇ!!」

 そう、歩兵戦闘車は乗車している歩兵とセットで、はじめてその真価を発揮するのだ。

 装甲だって機関銃弾を弾き飛ばす程度で、主力戦車と正面からぶち当たれるものではなかった。

「まぁ、そういうな。いたぞ、この岩陰から飛び出した瞬間が勝負だぜ。イリーナ、一気に左急旋回だ、リズはついてけ。ちゃんといいポジションに出るぜ!!」

「あいよ、左旋回一丁!!」

「オーダー違いだぜ……」

 あたしは苦笑した。

「分かったよ、やるぞ!!」

「よし、いけ!!」

 砲塔に上っていたロータスがストンと砲塔内に戻った。

 それに合わせたかのように、エンジンの轟音と共に車は岩陰から飛び出した。

 どっかぶっ壊れるんじゃないかと思う、左急旋回の中画面に浮いた照準に形式は分からなかったが、明らかに戦車と分かるものを捉えた。

「いい読みだぜ……ロックオン。発射!!」

 発射機からミサイルが飛び出て、迫ってきていた戦車にぶち当たって爆発した。

 それでノックアウトとなったらしく、少なくとも目の前の画面では動かなくなった。

「よし、撃破だ。次は……」

 ロータスが言いかけた時、重低音を伴ってあたしたちの頭上を二機のヘリが通過していき、派手な炎をまき散らしながら、明らかにミサイルと分かるそれを連発した。

「ああ、きちまった。終わっちまった!!」

 ロータスが悔しそうに怒鳴った。

「……呼んだのロータスじゃん」

 こうして、盗賊一味は一層され、飛んできたアパッチの猛攻でアジトの残党と共に、炎に消えたのだった。

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