第15話 旅から旅へ

「こ、この野郎……」

「まだまだだね。でも、変だな……私ってこんな上手かったかな?

 飛行場上空でアツいドッグファイトを繰り広げていたロータスとスズキが下りてきて、あたしの元に近寄ってきた。

「おい、リズ。あとであめ玉やるから、もう5%欲しいんだが……」

「まさかと思うけど、これもリズの力なの。かなりきわどい事やったのに、こんな安全にできた事ないよ」

「えっと、ロータスは意味が分からん。スズキのはなんともいえないけど、危ないことをわざとやっても安全なんでしょ。だったら、そうかもしれないけど、その辺が分からないんだよなぁ」

 あたしは頭を掻いた。

「いや、絶対そうだな。あのローリングシザーズ、失敗覚悟で突っ込んだのに普通にできちゃうんだもん。なにかの力で『修正』されたみたいにね」

「うわ、うっかりよその世界を修正しちまった!?」

「テメェ。あそこでブロークンしてくれたら勝てたのによ!!」

 ……うるさいロータスはこれではカット。

「あれ、まだよその世界なの?」

  イリーナが背後からあたしを抱きしめた。

「ここで……いや、ここがいいよ。私は。メチャメチャなようで、そうじゃないし!!」

「それもそうだな…………あたしもここがいい。適当に遊べるから!!」

 あたしは笑った。

「私もここが好きでね。あっちじゃできない事をやりたい放題。この前なんて、オークのすみかを爆撃してきたよ。ストライク・イーグルで」

 スズキが笑った。

「す、ストライク・イーグルなんてあるのかよ。いいな、ここ!!」

 ロータスが目を見開いた。

「なんでもあるんじゃない。ああ、ロータスも変な癖が消えてたからこれあげるよ。私は自分の目で見たものを信じるから、リズの力がどうとか気にしないから。

 スズキから金属製のプレートを受け取り、ロータスは感無量という感じで泣き出した。

「これ、これが欲しかったんだよ。なんで二十かそこらのガキに負けるんだよって、実は結構悔しかったんだぞ!!」

「熟練者故の癖だね。読んじゃえば四手先が見えるよ。お見通しってね」

 スズキが笑った。

「ろ、ロータスが!?」

「それだけ過酷なんだよ。マジで。にしても、お見通しが広がってるぜ!!」

 イリーナが笑った。


 飛行場で思わぬ足止めを食ったが、仕事はブラッドレーと決めていた。

 今までの慣れもあるし、あたしが飛行機を飛ばせないからだ。

 もちろん興味はあるが、今のところ覚える気はなかった。

「おい、あの村の復旧終わったみたいだぜ。お礼にもらったものが重すぎて運べねぇってよ。ご指名の依頼だぜ!!」

 ポストから郵便物を取ってきたロータスがいった。

「へぇ、ダイレクトなんて初めてだね。依頼主はトモミ?」

「他に誰がいるんだよ。他のメンツは、元の世界で仕事があるからって帰ったらしい。なんでトモミだけ残ったのか、気になるところだな!!」

 あたしはさっさとブラッドレーに乗り込んだ。

「行くんだろ。急いだ方がいい気がするぜ!!」

「だな、斡旋所を経由するとはいえ、ダイレクトの依頼は割高だからな!!」

 ロータスもブラッドレーに乗り込んだ。

「よし、いくか!!」

 イリーナがざっと外をチェックしてから、操縦席に滑り混みエンジンを掛けた。

「よし、いくぜ!!」

  こうして、あたしたちは休む間もなく初心者の街を発ったのだった。

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