第5話 素人装備の一新と、控えめな神の力

 翌早朝、あたしより先に起きていた三人に促されて、宿からほど近い武器・兵器の市場へとブラッドレーで移動した。

「ったく、ゴブリンなんぞに二発もぶち込みやがって!!」

「……ごめんなさい」

 あたしの頭にロータスのゲンコツが落ちた。

「お見通し。反省もしてねぇ!!

「……んだよ、つまんねぇな!!」

 あたしは、ポカンとしているトモミを見た。

「ああ、朝の挨拶みてぇなもんだ。ロータスの前じゃ、嘘は通じねえぇ!!」

「今のは誰でも分かるぜ。そのくらい、、なげぇ付き合いになっちまったんだ」

 ロータスが笑った。

「はい、三人とも仲がいいのは分かります。私は普段こんな機会はないですからね」

「それくらいがいいかもな。こっちの住人がいうのもなんだけどよ。よし、ミサイルからだな。あれのいいところは、大体どこでも手に入るところだ。

 まずはと、あたしたちはTOW対戦車ミサイルを買った。

「さてと……トモミだったな。他の連中も装備が全然イケてねぇ。後は二五ミリ砲弾を補給したら、宿に戻って飯食って、また全員引き連れてここだ。まともに戦える装備にしねぇとな!!」

 「えっ、やはりこれではダメでしたか。動きにくいというか………」

「だろうな。他にも多々あるぜ。見てられねぇから、ここでまともにすればいいさ」


「あ、ありがとうございます。正直、どうしていいか困っていたので…………」

 ロータスが小さく笑った。

「正直、お前ら全員よく生きてたなって感じだぞ。あえていおう、くそボロいと!!」

「……うん、出たね。期待値が」

 あたしは笑った。


 弾薬類の補給が終わり宿に戻ると、他のメンツも起き出して、ちょうど宿の一階に設けられたロビーにいた全員を連れ、あたしたちは再び市場に戻った。

「リズとエリーナはそれでいいと思うが、一応市場をチェックしてろ。私はこっちの世話がある!!」

 市場に着くと、ロータスは六人を連れて市場の置くに進んでいった」

「私たちはどうしようかね。今更、武器はいらないしねぇ」

 イリーナがマントの下に忍ばせた、腰の辺りの拳銃を見みせた。

「まあ、そうなんだけどな。これ以上は要らん!!」

 あたしは、やはり腰の辺りに拳銃を提げ、反対側の腰には銃身をカットして、できるだけ車内で邪魔にならないようにした、ショット・ガンを装備という感じだった。

「まっ、適当に歩こうか。お姉さんがお手々繋いでやろうか?」

「うん、そうしないとエリーナが迷子になりやがるからな!!」

 あたしが笑うと、エリーナは顔を引きつらせた。

「……またこうなるのかよ」

「ほれ、いくぞ!!」

 あたしはエリーナの手を引っ張って、市場を歩いた。


「おっ、『バールのようなもの』があったぜ。シャレに買っておくぞ」

「そ、そういうのだけ、決定事項なんかいかい!!

 エリーナがコケそうになったが、なんとか持ちこたえた。

「甘い。神用語では、確定事象っていうんだ。そして、確定事象に気づかないで、余計なことをすると……」

 いきなりエリーナの頭上に金だらいが現れ、中に入っていた水が盛大にぶっかけられた。 仕上げにその金だらいが落っこちて、盛大騒音がまき散らされた。

「……」

「……なるほど、別にどうでもいいけど、やておくか的なノリか。全く、相変わらず油断も隙もない世界だぜ」

 あたしは苦笑した。

「あーあ、イリーナも愛されてるな。せいぜい、ひでぇ思いをしてくれ!!」

「なんでよ、もう……」

 イリーナがため息を吐いた。

「まあ、いいじゃん。そろそろ終わってるだろ!!」

「そうねぇ。戻るぞ!!」

 帰りはイリーナに引っ張られ、あたしたちは市場の出入り口に向かった。

「おう、こんなもんだ。無理にハイスペックにする必要はねぇからな!!」

 まだ新しい戦闘服に身を包んだ六人は、無理のない装備で笑顔を浮かべていた。

「まあ、オーソドックスだけど、逆をいえばそのレベル。大きな事をしたかったら、どっかと組んだりね。バランスが悪いのはだめだぞ」

 イリーナが小さく笑った。

「よし、今日中にはいけるだろう。急いでダラダラ行こうぜ!!」

「ったく、どっちだよ!!」

 あたしは笑みを浮かべた。


 あたしたちを乗せた車は、いくつかの森を抜け、街道をぶっ通しで走り続け、あと数時間で、目的地のフォースビルに到着予定だった。

 時刻は夜で、誰もいない一人旅状態。この世界では、もっともヤバいといわれる状況だった。

「さて、なにが出てくるかねぇ……」

 あたしは暗視機能付き双眼鏡で、ロータスが身を出してる隣の砲手用砲塔ハッチから上半身を外に出して警戒していた。

 まあ、出てもくそボロい強盗まがいの馬鹿野郎程度が普通だし、この辺りは何度となく走っているので、特に気にする事もない。

「おい、リズ。なんかいるぞ」

 低いロータスの声で、あたしは砲手席に戻った。

 暗視モードにしてある画面は、自動的に入力される赤外線の量を調整して、簡単にはぶっ壊れないようになっている。

 そのため、その何かが発煙筒を炊いても、一瞬画面が真っ白になる程度だった。

「これは、救難信号だぜ!!」

「だな、エリーナ」

「分かってる、無視していっちゃたりしないって!!」

 車は六人ほどが寝ていた場所の脇に到着した。

 あたしは、それとなく砲塔を回し、ロータスのバックアップに入った。

 こういう手口の強盗もいるので、これは当然のことだった。

「ああ、リズ。心配しなくていい。だが、こっちはヤバい。毒蛇に食われたくさいが、お前の神としても力ながねぇと無理だ。久々だな」

「んだよ、ここでもういきなりかよ!!」

 あたしは、砲塔ハッチから車外に飛び降りた。

 気になったのか、いち早く後ろに乗っていた六人が手当に当たっていた。

「初心者の街で売っている全ての解毒財を使ったのですが、全く効果がないようで……」

 駆け寄ってきたトモミに笑みを浮かべ、あたしはキャンプの真ん中で手当中の人をみた。

「……アブねぇを通り超えてるぞ。まあ、知られないようにだろうけどな」

 前はここで魔法という手もあったが、ないものはない。

 あたしは苦笑して、さっと神の力を解放した。

「ほんぎゃあ!?」

 まあ、そういう状態だったので、当然ながらぐったりしていた人が、いきなり飛び上がった。

「……分かるぜ。いてぇんだよなこれ。あたしなんで、なんど食らったか」

 あまりいないので、あたしが勝手に蘇生痛と名付けたが、つまりそういうことをやったわけだ。

 ここに来たときには、すでに相手は事切れていた。

 なので、派手に光ったりしないように調整して。こそっと蘇生したのである。

「あ、あの、今……」

 トモミが何か言いたそうに声をかけてきた。

「うん、隠し芸だから、気づかなかった事にしておいて!!」

「は、はい。信じられない事が起きたのに。あの方は、どうみてもなくなっていたのです。半ばヤケで薬をぶち込んでみたのですが……」

「……そういうどっかのバカと、同じ事しないように」

 あたしは、視線をロータスをみた。

 さっと親指を立ててみせてから、ロータスはキャンプのメンツに声をかけた。

「よし、私たちは行くぞ。今からなら、明け方には着くだろう」

「あ、ありがとうございました。これはお礼なのですが……」

 キャンプにいた一人が小さな革袋を取り出した。

「そいつらに薬代程度を持たせてくれれいい。こっちは暇な神が適当にやっただけだ。なーんてな!!」

 ローラスの言葉に。あたしは小さく笑って一足先に車内に戻った。

 やや遅れて、ロータスも車内に戻り、車は轟音あげて進んでいったのだった。

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