第4話 二神半神という正体

 とにかくひたすら車を走らせ続け、あたしたちが街に着いた頃には、日が落ちる寸前だった。

「とりあえず宿だ。ここが決まらなきゃな!!」

  ロータスの声で、車は適当に街中を走り、これまた適当に宿を見つけ、建物脇に駐車した。

「どれ、いってくるか!!」

 ロータスが砲塔ハッチから外に出て行った。

 すぐに外の装甲板を叩く音が聞こえ、あたしは砲塔上ハッチから体を外に出した。

 どこにでもある、ひなびた田舎街だが、田舎育ちのあたしはゴミゴミした都会よりよかった。

「まずは部屋わけだ。といっても、くそボロいから最初から二部屋しかねぇ。だが、安い!!」

 あたしは、じっとしているエリーナに視線を送った。

「えっ………ああっ、なんでも美味くて早くて安けりゃいいってもんじゃねぇ!!」

 エリーナの拳は、あっさりロータスに避けられた。

「そうじゃねぇだろ。馬鹿野郎、男女の比率を考えろ。九人中三人しかいねぇぞ。一部屋に六人ぶち込む気か!!」

 あたしは、にやっと笑みを浮かべた。

「……そうだよ。それが一番の問題なんだよ。そこを突くからツッコミっていうんだよな」

 ロータスが視線をどっかに飛ばしながら、イリーナの肩を叩いた。

「……くっ、銃弾よりダメージがデカいぞ。こんなことで」

 あたしは笑い、お客様たちを見た。

「ここはお客さん優先だろあたしたちは車で寝るから、宿の部屋はそっちで好きに使ってくれ」

  あたしはロータスから鍵をひったくり、六人にむかって放った。

「えっと、あの……」

 たまたま鍵を受け取ったお姉ちゃんが、困ったような顔をした。

「ん、なんかマズいのか?」

「あの、六人中二人が婚約者なんです。一部屋はこれでいいとして、私とこっちは余ってしまうというか……」

「俺はイチャイチャしてるのを邪魔してやればいいさ。トモミはこっちの人たちと同じ部屋に入ればいいだろ」

 あたしは苦笑した。

「嫌じゃなきゃそうすればいいよ。決まったなら、まずは部屋で一休みだ!!」

「は、はい、お邪魔します」

 こうして、異世界人同士の異世界での同室が決まった


 宿の部屋は四人部屋だった。

 それぞれが勝手にベッドに荷物をぶち込み、とりあえずベッドに座って息を吐いた。

「さて、休憩だな。トモミだったな、聞きてぇ事あるんだろ。お見通しだぜ!!」

 ロータスが笑い、トモミがピクッと体を震わせた。

「ど、どうしてそれを……」

 あたしは笑って手を振った。

「ああ、こいつの前で隠し事は通用しねぇぜ。なんか、勝手に読やがるからな!!」

「そ、そうなんですか。やはり、ここは面白い方が多いですね」

 トモミが笑って、鞄の中から水晶球のようなものを取り出した。

「ああそれ、種族が分かるっていうやつな!!」

「はい、危険な方もいると聞いて、全員が持っています。失礼ながら、どこから見ても人間のあなた方もみたのですが、全く定まらないのです。これはなんだと、みんなで話していたんですよ」

「ありゃ、そんなモロにバレちゃう道具があったのね。なんてしようかねぇ」

 エリーナが苦笑した。

「あなたは半分だけ神を信じますか?」

 ロータスが柔和な笑みをトモミに向けた。

 あたしとエリーナがベッドから立ち上がり、ロータスの顔面めがけて漂白剤をぶちまけた。

「ぎゃあぁぁ、目が目がぁ!?」

「こうなるよな……」

「全く……」

 ……よい子は真似しないでね。これ、大事!!

「な、なにしやがる!!」

「なに、ほんのジョークだぜ」

「さて、トモミ。私たちは何だと思う?」

 イリーナが笑みを浮かべた。

「まあ、まともでない。その水晶球はぶっ壊れてはいないぜ!!」

 あたしは笑みを浮かべた。

「……想像もつかないですね。何でしょう?」

 トモミは小首をかしげた。

「まあ、引っ張ってもしょうがねぇ。この二人は、今は消えちまって存在しねぇが、別世界の管理をしていた『神』って存在なんだ。実在するな。賽銭でもくれてやれば、コロシ意外ななんだってやるぜ!!」

 笑顔を浮かべたロータスの顔面に、イリーナが素早く落書きして、開いていた口にインク瓶を突っ込んで自分のベッドに腰を下ろした。

「まあ、こいつがいってた最初の方は本当なんだな。でまぁ、居場所がないしっていうんで、今はここで遊んでるんだけどね。そっちのインク瓶くわえてる野郎は、実はかなり頼りになるんだな。私たちにはありがたいよ!!」

 あたしはイリーナの言葉に少し驚いた。

「め、珍しいな。お前がロータスの事を褒めるなんて……」

「褒めるどころか、尊敬すらしてるぞ。だから、ぶちのめしてやろうってマジになっちゃうんだな!!」

 イリーナは笑って、あたしとトモミをベッドから立たせて握らせた。

「前の世界じゃこのリズが中心だったから、みんなで守れって必死こいてたけど、やっと楽しい感じになったかな。私もリズも元はちゃんと人間だったんだけどね」

 トモミが目を見開いた。

「す、スケールが大きすぎて……」

「きっと、あなたもこんな感じでいくつもある世界の住人だよ。アイツが描いたね!!」

「だろうな。多すぎて覚えきれねぇから、はっきりとはいえねぇけど、どっかの世界だな。じゃなきゃアイツの手のひらに乗せられねえからよ!!」

 あたしはトモミの手を強く握った。

「今もそうだが、なんか困ったら話だけでもしてくれ。大体の事は、なんとかできるだろ!!」

 トモミは戸惑ったような表情を浮かべたが、すぐに笑みを浮かべた。

「分かりました。この話は、みんなにしても大丈夫ですか?」

「もちろん、構わねぇぜ。信じるかどうかは保証しねぇがな。よし、補給とかなんとかは明日にして、だらだら喋ろう!!

 こうして、あたしたちは気がついたら、日付が変わるまで話し込んだのだった。

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