第3話 自分の世界をなくした神々

 客である六名に囲まれるようにして、あたしたちの車はゆっくり村内を進んでいった。

 それなりに防備があったようだが、どうやら押し切られてしまったようだ。

 この世界では珍しくないが、破壊された村は凄惨な風景を醸し出していた。

「やれやれ、何度みても嫌なもんだな。全隊停止、あの一四時方向のくそボロい納屋が怪しいぜ!!」

 ロータスの声で外の六人は止まり、同時に車も止まった。

「リズ、ぶち込んでみろ!!」

「あいよ、榴弾でいいんだろ?」

 あたしの問いに、ロータスは小さく笑った。

「納屋をぶっ壊すだけならな。どうも、鉄と油くせぇ。この馬鹿どもの虎の子が潜んでいるかもな。徹甲弾をガンガンぶち込め。どうせ、今まで使ってねぇんだからよ!!」

「あとで使う時、なかったら困るぞ!!」

 あたしは苦笑して、目の前の画面をみた。

 そこには、確かにあの納屋の中身は車両であると、熱分布が示していた。

 あたしは納屋に向けて、二五ミリを連射した。

「うぉ!?」

 まるでぶち切れたように納屋をぶっ壊し、車両が飛び出てきた。

 その車種を特定するまもなく、外の連中が放った何かが白煙をたなびかせながら車両に突っ込み、派手に爆発した。

「携行がた対戦車ミサイルだか。用意がいいこった!!」

「ああ、こいつらいいもん持ってるぜ。でも、まだ3回くらいしかここにきていないんだとさ。でも、ここのヤバさは察したらしくてな。装備だけはよくしたんだと!!」

「その考えは悪くないな。実際、今助かったぞ!!」

 納屋をぶっ壊して飛び出てきたのは、よく見かけるM60という比較的小ぶりの戦車だった。

 徹甲弾とはいっても、ゴブリン相手に対戦車ミサイルを全て撃ちつくしている現状では、なかなか苦労しただろう。

「よし、索敵を終わらせちまおう。大して掛からんだろ!!」

 ロータスの声通り、索敵をして残党がいないことを確認した。

「よし、悪いが弔っている暇がない。ちと急ぐぞ!!」

 ロータスの声で、外の二人は再び乗客となり、車は轟音を上げて村を出た


 街道に出た車は、隣の村から街に向かってひた走った。

「し、しょうがねぇんだけど、高速装甲で舗装路を走ると、ドガガガって揺れがね」

 この車は普通の丸い車輪ではなく、履帯という帯状のなにかをぶん回して走る。

 車輪が衝撃を吸収どころか、衝撃の元になっているので、整った舗装路を走ると、なかっなかの乗り心地だった。

「分かってねぇな、コレがいいんだよ!!」

「まあ、平和な状況だったんだよ。アレでも!!」

 ロータスとエリーナの声が聞こえた。

「アレでもか……、自分で消滅させちまったからな。アイツの隣にいるようなもんの時に。あたしもどうかしていたんだろ。思わず『バルス!!』って、神として最悪の『コマンドを入力』しちまったからな。って、おい!!」

 あたし椅子の上で爆笑した。

「なんだ、お前。あの言葉を使えるのかよ。怖いねぇ」

 インカムに入ったのだろう。

 ロータスの苦笑が聞こえた。

「あのバカ……まあ、いいけど!!」

 エリーナも笑い小さく笑った。

「まあ、今の私たちの世界はここだぜ。早く宿にいかねぇとな。平気な顔してるけど、あの六人ビビっちまったのは確かだ」

「そうねぇ、早くいくぞ!!」

 車が増速し、轟音を立てながら突き進んだのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る