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「海外でしない?」
「…はい?」
「その方が美咲の為にもなると思うし。あっ、もちろん旅費はオレが持つよ。夏休み中、海外をあっちこっち旅しようよ」
「それはただの海外旅行でしょう!? 補習は学校でやらなきゃ意味ないの! それにあなたの他にも、補習を受ける生徒はいるんだから」
「なぁんだ。つまんないの」
「アタシは大変よ。補習用のプリントも作らなきゃだし、のん気に旅行しているヒマなんてないの」
「う~。なら国内旅行にしとく。軽井沢辺りなんてどう?」
…アタシが今話をしているのは、人間ではないのかな?
話がいっこうに通じない。
「美咲とはじめての旅行だもんね♪ 良い思い出にしょう」
「あのねぇ…」
「あっ、やっぱり行き先はオレに決めさせてよ。美咲が驚く顔、見たいからさ」
…もう、ヤダ。
「ご馳走様~」
アタシが項垂れている間に、彼は全てを食べ終えていた。
アレルギーとかじゃないから、何でも食べられるはずなのに、好き嫌いが多い。
でも『アタシが作った』と言えば、一応食べてくれる。
嬉しいと思わなくもないけど…。
「デザート、何?」
…前言撤回。
「ケーキ買ってきてるから、ちょっと待ってて」
「うん♪ あっ、食器はオレが片付けるよ」
てきぱきと食器を片付けてくれる姿は、お坊ちゃんには見えないな。
紅茶を淹れて、ケーキをお皿に乗せて、テーブルに置いた。
「ねっねっ。あーんしてよ?」
「子供みたいなこと、言わないでよ」
「オレ、まだ子供だもん。美咲より11も下だし」
ぐっさー! …いっ言ってはならぬことを。
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