13

「しょうがないでしょ! あなたはあくまでも、生徒なんだから」


「はいはい。じゃあその間は別の場所で、ね?」


意味ありげに笑った彼は、英語準備室を出て行った。


別の場所…会わないという選択肢は無いのか。


「はぁ…」


乱れた服装を直し、イスに座る。


彼が卒業するまで、あと約2年…。持つだろうか、アタシの体と心。


ぼんやりしていると、扉がノックされた。


「はっはい!?」


「美咲、わたしよ」


「涼子? どうしたの?」


声をかけると、涼子は扉を開けて入ってきた。


「『どうしたの?』はこっちのセリフよ。最近ぼんやりしちゃってさ。世納クン、授業に出るようになったんでしょ? 喜んでも良いのに」


「よっ喜んではいるわよ。ただ…」


「何よ?」


「ひょっ拍子抜けしちゃっただけ。今まで力が入っていた分、疲れが出ただけよ」


「にしては、色気漂うようになったのは何故? 恋人でもできた?」


いいえ、おもちゃになりました―なんてことは人として決して口に出せない…!


恋人なんて甘いものじゃない。


彼が気の向くままに構って、遊ぶ。まさにおもちゃだ。


「…美容にかける時間ができただけ」


「ふぅん。エステにでも行ってるの?」


「うっうん」


彼の紹介で、彼の母親が経営するエステの上客になってしまっている。


…もちろん、タダで。VIPのカードで、好きなだけ利用できる。


涼子は疑わしげにジロジロ見ていたけれど、アタシが口を割らないことを感じ取ったのか、深く息を吐いた。


「…分かったわ。アンタが不幸になってなきゃ、わたしは良いのよ」



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