12

彼のキスは、まだ正直慣れない。


数え切れないぐらい、キスをしたのに…まだ心臓に悪いキスだ。


「…でもそういうあなただって、女子生徒の間ではウワサになっているわよ」


「だからオレは美咲以外興味が無いって。勝手に言っているだけだろう? 美咲も気にしないでよ」


「してないわよ」


「ウソ。もしかしてヤキモチ焼いた?」


ニヤニヤ笑う彼の顔に腹が立って、思わず眉をひそめる。


「だからしてないってば!」


「してなきゃそんなこと、言い出さないよ。フツー。オレのことが気になっている証拠だよ」


「自意識過剰よ」


「かもね。オレ、美咲のことになるとおかしくなるみたいだから」


「自覚があるなら、抑えてほしいわ…。こっちの身が持たなくなる」


「そうなったらオレがずっと面倒を見てあげる」

嬉しそうに額にキスをする彼を見て、本気なのを悟った。


「そっそんなに弱くないから、アタシ…」


「そうかな? 押しに弱い気もするけど?」


「誰のせいよ?」


「オレのせいだね。だから責任をとって、一生面倒を見てあげるよ」


「社会人になってから、そういうことを言いなさい」


「厳しいなぁ、美咲は」


アタシを腕の中に閉じ込めながら、何度もキスをし、触れてくる。


その優しさと甘さに、溶けそうになってしまう…。


このまま彼に、全てを預けてしまいたい気持ちになる。


けれど予鈴の音で、目が覚めた。


「ほっホラ、お昼休みはもう終わりよ! 授業にはちゃんと間に合うように行きなさい」


「はいはい。それじゃ、また夜に電話するね」


「テスト1週間前からは、家に来るのも禁止だからね」


「うっ! それは本気でキツイんだけど…」




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