11

「う~ん…。それじゃあどこを逢引場所にしようか?」


彼は後ろ手に鍵をかけ、アタシに近寄ってくる。


「学校の中はもうやめましょう? 気が気じゃなくなるわ」


「でもスリルがあって良いでしょ?」


彼は悪魔の微笑を浮かべると、その腕の中にアタシを引き入れた。


「―会いたかった。美咲」


「…1時間前の授業で会ったじゃない」


「こうやって1人占めするのは、この前の休日以来だろう? 美咲の部屋の中でさ…」


「やっやめてってば!」


腕の中でもがくと、彼はクスクス笑って腕の力を少しゆるめてくれた。


「ゴメンゴメン。あの時の美咲があんまり可愛かったから」


…1人暮らしをしてて、良かったのか悪かったのか…。


合い鍵を渡してしまったせいで、彼は何時でも気が向けば、好きな時にわたしの部屋に出入りしている。


「今度はホテルにしよっか? 裏通りなら、誰にも見つからないかもよ?」


「見つかるに決まっているでしょう! あの裏通りで補導されたウチの生徒の数、教えてあげましょうか?」


警察からも見張られているあんな場所に行けば、アタシのクビはすぐに飛ぶ。


「冗談冗談。それじゃ、美咲の部屋で良いよ。あそこ、居心地良いもんな」


優しくアタシの頬や頭を撫でながら、愛おしそうに見つめてくる。


「…美咲、気付いてる?」


「何を?」


「この数週間で、すっごくキレイになった。生徒達の間でも評判になるぐらい」


「…あっそ」


「それってオレのせいだよね?」


「よく分かっているわね」


「そりゃ、美咲のことならば何でも」


得意げに笑い、キスをしてくる。


「んっ…」



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