10

「うん、かけない。美咲に誓うよ」


アタシの左手を取ると、薬指にキスをする。


まるで誓いのキスのように…。


「それと…あくまでも秘密よ? このことは…」


「分かっているよ。美咲に迷惑は一切かけない。学校にいる間は、普通の生徒だよ。…今を抜かしてね」


アタシの体は壁に付けられ、そのままズルズルと床に落ちていく。


「オレと美咲のこと、他の誰にも言うもんか。二人だけの秘密だよ」


「そう…ね」


床に倒れたアタシに覆い被さる彼は、男の顔をして微笑んでいた。


欲しいものを手に入れて喜んだ悪魔の微笑…思わず心奪われる。


近付いてくる彼の首に手を回し、アタシは彼を…受け入れた。


「…何てことをしてしまったんだろう…」


壁に向かい、呟く。


鍵をかけた英語準備室の中1人、アタシは毎日のように後悔の念にかられていた。


『あの日』から数週間が経った。


彼は言った通り、授業に出てくれるようになった。


そして担任の先生にもちゃんと謝罪して、真面目になった。


ここぞとばかりに、担任も教頭も喜んでいたけれど…アタシの心は重くなっていくばかり。


あの時、どうかしていたとしか思えない!


けどっ! …もう関係は始まってしまっている。


ブルルルッ!


ケータイのバイブが鳴った! コレは合図。


アタシは深くため息をつき、準備室の鍵を開けた。


「やっ、センセ。待たせたかな?」


扉を開けて入ってきたのは…彼だ。


「…いいえ。やること多いから。でもテスト1週間前は立ち入り禁止になるからね」


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