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「なっ何をっ…」


「そういうウブなところも良いなぁ」


うっとりした顔をしないでっ!


カーッと頭に血が上る。きっキスされた! 年下の、しかも教え子にっ!


「センセ、彼氏いるの?」


「いっいるワケないでしょ? 教育に全てをかけているんだから!」


「ホント、教師の鑑だね」


彼は立ち上がり、アタシの正面に立った。


「こっ来ないでよ!」


壁伝いに逃げようとしたけれど、彼の両手が壁につき、アタシを閉じ込めた。


「―逃げないでよ、センセ。コレでもマジなんだからさ」


そう言う彼の顔は照れている。


ほっ本気でおもちゃ扱いされてる!?


「本気でセンセのこと、欲しいんだ。オレのものになってよ。大事にするからさ」


大事そうにアタシの顔を両手で包み込み、また唇が近付いてくる。


「ちょっ…んんっ!」


抵抗する暇なく、再び唇が重なる。


あたたかく、少し湿った彼の唇が、今度は角度を変えて何度もアタシの顔に触れる。


「やめっ…、世納くんっ…!」


「華月って呼んでよ。美咲」


「なっ! 呼び捨てで…」


「アメリカじゃ、当たり前のことだよ」


「ここは日本よ」


せめてもの反撃の言葉も、再びキスで塞がれる。


「大好きだよ、美咲」


耳元で甘く囁かれ、膝の力が抜ける。


けれどすぐに彼の腕がアタシの腰に回り、引き寄せられた。


「他の誰にも見せたくないぐらい、大好き。オレがこんなに独占力が強いのは、美咲のせいなんだよ?」


「うっそ…。なら、アタシを困らせるようなこと、しないでよ」

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