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そう言って満面の笑みを浮かべる彼を見て、思わずイヤな予感が浮かぶ。


なっ何だろう? 補習を軽くしろとか? もっと授業レベルを上げろとか?


いろいろな考えが頭の中を巡った挙げ句、結局聞いてみることにした。


「…ちなみに、その『お願い』って、何?」


「うん。ねぇ、センセ。オレのものになってよ」


「………はい?」


彼の言葉を理解するのに、たっぷり30秒は必要だった。


「オレのものになって。そうしたら、センセの言うこと何でも聞いてあげるからさ」


目の前にいるのは…教え子ではなく、悪魔なのだろうか?


一瞬そんな考えが浮かぶほど、混乱しているアタシ。


「もっものって…」


「オレ、センセが気に入ったんだよね。そのめげない性格とか、問題児を軽蔑しないところとかさ」


「あなたはアタシの教え子です! そんなことするワケないでしょう!」


思わず声を張り上げてしまった!


慌てて口を手で押さえ、後ろに引く。


「ごっゴメンなさい。ちょっと熱くなったわ」


「…ううん。センセのそういうところも、オレ、気に入っているから良いよ」


そう言って女子生徒達が失神しそうなほど甘い微笑を浮かべる。


でもこれって…間違いなく、愛の告白じゃないわよね?


子供がおもちゃを欲しがるような…アタシ、彼のおもちゃ?


いやいやっ! 何てことを考えるんだ、アタシは!


「で、返事は?」


「えっ? ほっ本気?」


「もちろん♪」


彼は立ち上がり、身を乗り出すと、その流れのままアタシにキスをしてきた。


「っ!?」


がたんっ!


イスを蹴りながら、アタシは口を押さえて壁に背を付けた。

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