3

「ええ。今日も、よ。今日でめでたくなく、3ヶ月が突破したわ」


「それはおめでたくないわね。慰めにコーヒーでもいかが?」


「いただくわ」


壁際の長椅子に腰をかけ、首を鳴らす。


「ご苦労様。もうすぐ期末テストで忙しい時期に、相変わらずなんて大変じゃない?」


「事実、大変よ。教頭先生からは毎日お小言をいただいているしね。担任の先生も頭痛がするみたい」


「どうりで良く頭痛薬を貰いに来ると思った」


涼子は肩を竦め、コーヒーカップを渡してくれた。


「ありがと。でもいい加減にしないと、彼、もう夏休み中の補習決定なのよ」


「自業自得ね。でもこれがずっと続けば…」


「ええ、今度は進級の問題になるわ。世納くん、成績自体は良いのだから、勿体無い話よね」


「随分他人事のように言うのね。もう諦めた?」


イスに座り、涼子は楽しそうに言ってくる。


ここ三ヶ月のアタシの苦労を良く知っているから、こういう顔ができるんだろうな。


…いい性格をしているよ。彼とはまた違って。


「彼だけの問題じゃないわよ。アタシや担任の先生にだって、処分は回ってくるんだから」


「指導力不足と言われても、困ることよね。教頭先生からはあたしにも声がかかっているのよ。どうにか彼を説得できないか、ってね」


「でも居場所が特定できないからねぇ。まさか授業中に探しに行くわけにもいかないし」


「校舎の中にいるのは分かっていることなんだけどね」


「ええ。アタシの次の授業には必ず出席するもの」


つまり彼はアタシの受け持つ英語だけが、問題になっている。


このままじゃ本当に進級も危うい。


「アンタも厄年なんじゃない? そろそろ担任になりたいなんて言っていた時に、問題児と当たるなんてね」


「ホント。この5年間、何とか平穏無事に過ごせてきたんだけどね」


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