第58話 総菜の旨いホルモン屋

 私は、絡まれていた…


 私がたこ焼き屋でたこ焼きを食べていると面倒な人がやって来た。

 カウンターの私の隣の席に座り、訳わからない話をして来る…


 私は、助けて欲しくて頑固オヤジを見た。

 頑固オヤジは、私と目を合わさず気付かない振りをした…


 私が困っているとあの人がやって来た!

 その人は、ムーミン谷のミーに似ていた…


 私は、その人をカウンターの私と面倒な人の間に招き入れた。

 その人は、私の代わりに相手をしてくれて私は救われた…


 面倒な人が帰った後、私はその人に礼を言い少し話した。


 その人は、どうやらこのたこ焼き屋の近くでホルモン焼き屋をやっているとのことであった。

 私は、その日のお昼にホルモン焼きを食べに行くことを約束して、一旦別れた。


 しばらくして、私は頑固オヤジに別れを告げて、そのホルモン焼き屋に向かった。


 ホルモン焼き屋は、たこ焼き屋から歩いて2分ほどの所にあった。

 その店の名は、「ホルモンかず」

 店の中に入ると先程のムーミン谷のミーみたいな人がいた。

「ちゃーちゃん」という名前らしかった。


 店は、支度中であったが、中で待つように言われた。

 私は、店の奥のテーブル席に座って待つことにした。


 しばらくして、その店のマスターと言われる男がやって来た。

 何処となくその男は、ペンキ屋のような雰囲気があった…


 マスターみたいな男が私にチューハイをサーバーから注いでくれて、私達は乾杯した。

 その後、ちゃーちゃんは私のホルモンを鉄板で焼いてくれているようであった…


 数分後、鉄板で焼いていたものをちゃーちゃんが皿に入れて私の前に置いた。

 私は、「凄く美味しそうなホルモン」と言おうとしたが、それはどう見てもホルモンには見えなかった。

 私はちゃーちゃんに聞いた。

「これは、何ですか?」

「見ての通りのお好み焼きでございます。」と普通に言った。


 どうやら、この店はちゃーちゃんが、お客にあったものを提供するシステムのようであった…


 私は、そのお好み焼きを一口食べてみた。食感がとてもふわふわであった。そして、普通のお好み焼きよりキャベツの旨味が凝縮されているようでとても甘く感じられた。キャベツの水分だけで作るお好み焼きらしい…


 私は思わず、「旨い!」と叫んでしまった!

 それを聞いてちゃーちゃんは、にっこり微笑み

「よかったです!」と言った。


 それから、マスターみたいな男とちゃーちゃんと私は乾杯した。


 私がお好み焼きを完食し、「美味しかった!」というと、

 ちゃーちゃんは、

「次は、いよいよお待たせのこれでございます!」と言いながら、小鉢に入ったものを私の前に置いた。

 私は、「まぁ~、おいしそうなホルモン!」と言いかけてよく見るとそれは、どう見てもホルモンには見えない白っぽいものであった。


 私は、ちゃーちゃんに聞いた。

「これは、何ですか?」

 ちゃーちゃんは、ニッコリ笑顔で言った。

「見ての通りのポテトサラダでございます。」


 私は、一口食べてみた。ふわふわで芋本来の味も楽しめて最高に旨いポテトサラダであった。

 私は、「これも旨いなぁ~」と言うとちゃーちゃんは、

「それは、よかったです。」と満面の笑顔であった。


 そして、私は少し昔のことを思い出し、ちゃーちゃんに言った。

「以前私が、住んでいたマンションの近くに総菜屋さんがあって、ちゃーちゃんの料理を食べるとなんかその店の味を思い出すわ!」

 ちゃーちゃんは、「その店の名前は、なんていう店ですか?」と聞いて来た。

 私は、「まんたらやという店です。」と言うと、

 ちゃーちゃんは、言った。

「私も知ってます。」

 世の中狭い!…と私は思った。


 私は、満腹になりちゃーちゃんとマスターみたいな男に別れを告げて店を出た。

 そして、私は振り返って店の名前を確認した。

 そこには、「ホルモンかず」と書かれていた…


 ホルモンは最高に美味しいが、客があまりホルモンを食べない店…

 それは、総菜が旨いからである…

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