第52話 ノンアルブラックボールを飲んでみて…

 定時過ぎに私は、駅に向かっていた…


 そして、歩きながら携帯で妻に電話した。

 妻が電話に出ると私は言った。

「なに?」

「麻婆豆腐とあら汁」

「そう。コーヒー買った?」

「買ってない。」

「わかった。」

 私は、電話を切った。


「今日は、休肝日だな…」私は呟いた。


 やがて、駅に着き、私は改札を通ろうとしたが、たくさんの人達が押し寄せて来た。

「しまった!」私は呟く。

 どうやら、いつも乗る電車に乗り遅れたらしい…


 私は、人の波がおさまってから改札を抜けた。

 そして、階段を上がり、次の電車が来るのを待った。


 私がホームに上がってから、約5分で次の電車がホームに入って来た。

 私は、電車のドアが開き降りて来る人が、居なくなってから電車に乗った。

 約4分程電車に乗っていると次の駅に着いた。


 この駅では、かなりの人が下りる。電車に乗っていた半分近くの人が降りた。私も降りた。私が、電車からホームに降りると目の前にエスカレーターがあった。

 私は、エスカレーターで2階に上がり改札を出た。


 改札を出た所にコンビニがあったが、今日はそのコンビニには入らなかった。


 駅の構内を出た所にその女性がいつものように立っていた。

 私は、「梅川ちゃん、ただいま。」と心の中で呟く。

 その女性とは、人形浄瑠璃の近松門左衛門の代表作「冥途の飛脚」に登場するヒロインであるが、駅の入口にある「梅川の像」のことである。


 私は、駅の行き帰りに挨拶している。

 その「梅川の像」を過ぎて、そのまま駅前のショッピングモールの横を抜けてから、階段を下りる。下りてから北に向かうとすぐにコンビニがある。


 私は、迷わずそのコンビニ入った。

 そして、品出ししていた20代の女性店員に携帯のアプリのクーポンを見せて言った。

「これ使いたいんだけど、どうすればいいの?」

 それは、「金の食パンの無料クーポン」である。

 店員は、パンの棚から「金の食パン」を取って、私に渡しながら

「これをレジに持って行って、そのクーポンを見せれば大丈夫です。」とニッコリ笑顔で言った。私は、礼を言ってからパンを持って飲み物の冷蔵庫に向かい、ブラック無糖の缶コーヒーを1本取った。


 レジのテーブルの上にコーヒーとパンを置き、レジ係の店員に言った。

「このクーポン使います。」

 レジ係は、クーポンのバーコードをスキャンした。

 私は、コンビニのプリペイドカードで清算した。


 家に帰るとリビングに妻がいたので無料クーポンでもらったパンを渡し、缶コーヒーは冷蔵庫に入れた。


 妻は、言った。

「どうしたの?」

 私は、「無料クーポンで貰った。」と言う。


 着替えてから、リビングに行くとテーブルに夕食が並んでいた。

 私は、自分の席に座った。

 すると妻が、缶コーヒーとノンアルビールとグラスを持って来た。


 私は、早速グラスにブラックコーヒーを三分の一ぐらい注ぎ、その上からノンアルビールを注いだ。泡はすごくいい感じだった。

 飲んでみるとコーヒーの味が強すぎる感じであった。私は、少し飲んでからノンアルビールだけを注ぎ足した。

 そして、私は一口飲んでから言った。

「ちょうどいい!」

 これだとノンアルビールの嫌な後味が感じられない気がした。


 それから、夕食の我が家特製和風麻婆豆腐を食べた。

「やっぱり、旨い!」と私は思った。


 グラスのノンアルブラックボールを飲み干すと私は、もう一本ノンアルビールを持って来た。

 そして、グラスに四分の一ぐらいコーヒーを注ぎ、その上からノンアルビールを注いでから飲んでみた。

「ちょうどいい!」と私は、言った。

 これで分量の割合もわかったと私は思い、満足であった。


 その後、私は夕食をノンアルブラックボールで楽しんでいたが、すぐに満腹になった。

「やっぱり、ノンアルだと満腹中枢が麻痺しないので、不味くなくても2本が限界だな…」と私は呟いた。


 そして、「でも、この方が食べ過ぎが無いから、健康にはいいんだろうなぁ~」と私は自分に言い聞かせた。


 だが、何となく寂しい思いが自分の中に芽生えていることを感じていた…

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