第45話 私が引き籠る理由
まだ、明るい日差しの中、私は家への帰路についていた…
駅から出た私は、いつも駅前で立っている女性に心の中で挨拶した。
「梅川ちゃん、ただいま…」
彼女は、少し微笑んだ様な気がした。
大型連休明けの初日の労働から解放された私は、気分が良かった。
そして、連休中の事を少し思い起こしていた…
連休の始まる日の前日の夜は、凄く開放的でウキウキして眠れなかったこと…
連休中に何しようか考えては、ニヤニヤしていたこと…
連休が始まって、息子が家に帰って来て家族でワインで乾杯したこと…
連休が始まると朝が来るたび、あと何日で連休が終わるかカウントダウンを始めたこと…
息子もやっぱりカウントダウンをしていることを知ったこと…
娘とカレーを食べに行ったこと…
息子と娘とショッピングしたこと…
息子の奢りで家族で寿司屋で美味しいものを食べたこと…
家族でたこ焼きを食べたこと…
連休後半に入り、息子が北海道に戻って行ったこと…
娘とゲームセンターで卓球したこと…
妻としゃぶしゃぶ食べ放題に行ったこと…
仲間とツーリングツアーで楽しく乾杯したこと…
たこ焼き屋でいろんな人と乾杯したこと…
甘い玉子焼きの旨い店で乾杯したこと…
そして、最終日に家で引き籠っていたこと…
私は、大型連休の最終日は基本的に家で引き籠ることにしている。お酒も飲まないようにしている。翌日からの仕事のために…というよりも最終日という現実から逃避しているのだ…
私は、大型連休の最終日は楽しむ余裕がないのだ。楽しい休みが終わってしまうという悲しみと、明日からまた社会の中で戦って行かないとダメだというプレッシャーに押し潰されそうになるのだ…
だが、休み明けの朝になるといつも開き直って、ネクタイを締めてシャキッと出勤出来る。
だから、連休最終日が一番辛い…
この話を妻にするといつも馬鹿にされる…
妻は、シフト制の仕事をしているので、大型連休がない…だから、こういう気持ちがわからない。
大型連休最終日という恐怖は、経験した者にしかわからない贅沢な地獄なのである…
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