第43話 甘い玉子焼きの旨い店
私は、悩んでいた…
昼ご飯に何を食べるか考えていた。お昼ごはんのおかず用に買っていた唐揚げを先程、帰りがけに寄ったたこ焼き屋のお客に食べられてしまったのである…
仕方なく家にあったカップうどんを私は、食べる事にした。トッピングに卵とネギがあったので入れた。
安いカップうどんにしては、意外に美味かった。
そして、缶ビールも一本飲んで一息ついた。
天気のいい昼下がりにほろ酔いで気持ちよかった…
その時である私は無性に玉子焼きが食べたくなった。それも甘い玉子焼きを…
私はよく玉子焼きを作る。私の妻もよく玉子焼きを作る。
だが、その玉子焼きは、甘い玉子焼きではない…自分では、旨い甘い玉子焼きが作れない。
そんな事を考えているといてもたっても居られなくなった。
甘い玉子焼きの旨い店…思い浮かぶ店は、一軒しかなかった。その店は、その日営業しているのは、知っていた。
だが、ゴールデンウィークの特別営業の為、従業員は交代勤務だった。その店でも、旨い玉子焼きが焼けるのは1人しかいなかった。
そこで私は、その玉子焼き職人にメールをしてみた。
「今日、店何時に出るの?」
すぐ返事が返って来た。
「もうちょっとしたら行こうと思うけど、来てくれるんだったら、それまでに行くようにする。」
私は返信した。
「じゃ、30分後ぐらいに行くわ」
「お待ちしてます。」
私は、朝スポーツをしてそのままのジャージ姿だったけど、気にせずそのまま出かけることにした。
外に出ると相変わらずのポカポカ陽気であった…
私は自転車のタイヤに少し空気を入れてから、自転車で出発した。
私は真っ直ぐ南に向かい、駅の地下道を通り、駅の反対側に出た。そのまま、更に南へ向かい県立高校を越えたところにその店はあった。
その店の名は、「リトルキッチン かなちゃん」
私は、店の前に自転車を停めると、すぐに店からスキンヘッドの男が出て来た。ユリちゃんではないスキンヘッドの男である。この店のマスターであった。
その後から長身の女性も出て来た。玉子焼き職人のかなちゃんである。
店前で私達は、記念写真を撮った。そして、店内に入った。
私は、カウンターの端から2番目の席に座った。
それから、私はボトルキープしている焼酎の水割り、マスターと玉子焼き職人は生ビールで乾杯した。
そして、私は早速目的の甘い玉子焼きを注文した。
数分後、私の前に玉子焼きの皿が置かれた。
私は、それを見て「なんて美しいんだ!」と感動した。綺麗な黄色の玉子焼きは、何のくすみも無くキラキラ輝いていた。
まず、私は一切れ箸で摘み口に運んだ…玉子本来の味と旨みが砂糖の甘さと調和され、口の中に広がった。食感は、ふわふわで玉子焼きとは思えない柔らかさであった。
「旨い!旨すぎる!」私は思わず叫んだ!
私は、その玉子焼きを食べる為に、今まで生きて来たのかもしれない…と思った。
それから、その店に顔見知りの人達が何人もやって来て、とても幸せな時間を過ごすことが出来た…
そして、私のシンデレラタイムの17時が近づき、私は帰る事となった。
マスターと玉子焼き職人が表まで見送りに来てくれて、記念撮影した。それとスキンヘッドの男ユリちゃんもいたので、記念撮影に参加した。最後に私は、マスターとユリちゃんのダブルスキンヘッド頭の写真撮影にも成功して、大変満足であった。
ポカポカ陽気の中、自転車で走る私に吹いてくる春の風がとても気持ちよかった…
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