第42話 唐揚げと岡山土産とオバちゃまと…

 連休中の気持ちのいい朝、私は1時間ほどスポーツをした…


 気持ちはよかったが、私はヘトヘトになった。そして、気持ちのいい陽気の中、ビールが飲みたくなった。

 私は、散歩がてら歩いてビールを飲める店を探した。


 閑静な住宅街の道を歩いていると道をのぼり旗が、横断しているのが見えた。よく見るとのぼり旗を人が運んでいるところであった。

 のぼり旗を立てると、その人は私に気づき言った。

「おう!今、店を開けてやるから、ちょっと待ってろ!」

 その人は、たこ焼き屋の頑固オヤジであった。


 すぐに店は、開店して、私はカウンター席に座った。

 すると、目の前に後光の刺したカリスマ女神様が現れて、私に微笑んだ。私は、「今日はいい日になる」という予感がした。


 そして、私は千円を頑固オヤジに払った。

 頑固オヤジは言った。

「一番搾りが新しく美味しくなったので、これ飲め!」と言って一番搾りの缶を私の前に置いた。

 私は、一気にビールを喉に流し込む。春のポカポカ陽気の中飲むビールは、最高であった。

 私は、「気持ちいい〜!」と叫んだ。

 それを聞いた頑固オヤジが言った。

「お前の奢りで俺も一本飲むぞ!」

 私は、「はい…」というしか無かった…

 頑固オヤジが一番搾りの栓を抜いて、私達は乾杯した。


 乾杯後すぐに頑固オヤジは、私の前に皿を置き言った。

「今日も雪塩からだ!」

 私は爪楊枝で一つ刺し、口に運ぶ。蛸の旨味が雪塩で引き立った。すかさず、私は一番搾りを流し込む。

「旨いなぁ〜!」私は、思わず叫んだ。

 その後、頑固オヤジは一旦裏の自宅に行って、小さな箱を取って来て、ビニール袋に入れて私に渡した。

「岡山のお土産のお菓子だ!」と頑固オヤジは言った。

 私は、「ありがとうございます。」と言って遠慮なく頂いた。


 その時である黒装束の男が店に入って来て私の隣に座った。男は、ビールを注文した。頑固オヤジは、その男の前にスーパードライの缶を置いた。

 私とその男は、乾杯した。

 その男は、右翼団体の幹部であり、その日の午後に大阪駅の駅前で演説するとの事であった。

 それから、しばらくその男は、今までの武勇伝を語り、私は聞いていた。武勇伝を語るその男は、凄く嬉しそうだった。


 その後、1人の男が店の前に現れ、たこ焼きを注文した。

 すると、頑固オヤジが私に言った。

「次山さんですよ。」

 私は、少し身を乗り出して店の前を見て言った。

「久しぶりです。今日は、休みですか?」

 その男は、「はい。」と言ってニッコリ笑った。

 私は、「向こうの席に行きましょう!」と言って奥の玄関前にあるテーブル席に誘った。

 私は、右翼幹部の男に別れを告げて、テーブル席に次山という男と一緒に移動した。


 この次山という男は、ディーンフジオカみたいな男の友達で、以前このたこ焼き屋で一緒になった知り合いである。

 私達は、しばらくディーンフジオカみたいな男と次山という男が雰囲気が似ている話、私が書いている小説の話、今度、立花という地区で飲み会をしようという話などをしてから、私は次山という男にこの後の予定を聞いた。

 男は言った。

「家にお土産でジョニーのからあげを買って帰ろうと思ってます。開いてますかね?」

 私は、「いつもだと11時から開店なんだけど、念の為電話で聞いてみるわ!」と言った。


 先日もその店に行こうと思ったら、その日は17時オープンの日で開いていなかった事があったのだ…


 私は、携帯の時計を見た。10時53分だった。開店前だけど、11時オープンなら来ているだろうと思い電話した。

 すると、女性が出た。「はい。ジョニーのからあげでございます。」聞き覚えのある声であった。その店の美人風魔女店員である。

 私は、言った。

「今日は、11時から開店しますか?からあげをテイクアウトしたいんだけど…」

 魔女店員は、

「開いてますよ。注文はお決まりでしょうか?」と聞いて来た。

 私は、

「後で店に行って注文するわ!」と言って電話を切った。

 私もランチは、家で食べる予定だったので唐揚げをお昼のおかずに買って行こうと思った。


 それから、数分後私達は店に向かった。

 店まで歩いていると次山という男が聞いて来た。

「店は、近いんですか?」

 私はエッと思って聞いた。

「店行ったことないの?」

 男は、「はい!」と言ってニッコリ笑った。

 私は更に聞いた。

「行ったことないのにテイクアウトしようと思ったの?」

「行ったことないんですが、SNSでみんなが投稿しているのを見て、行ってみたかったんです。」

 どうやら、魔の三角地帯に興味があったみたいである…


 私達は、まずジョニーの店の前で記念撮影した。そして、店内に入った。

 ちょっと女っぽいしぐさで筋肉質なマスターと美人風魔女店員がにこやかに迎え入れてくれた。

 入口のテーブル席に座りながら、私は言った。

「唐揚げをテイクアウトしますが、飲物だけ店内で飲みます。」


 マスターがニコニコしながら、注文取りに来たので私は言った。

「彼は、車なのでジュースと私は、水お願いします。」

 マスターは、「はいよ!」と返事して厨房に入って行った。


 少しして私は、ハッとした!慌てて、カウンター越しにマスターに言った。

「一つは、本当にアルコール無しのジュースだよ!念押しするの忘れてた!」

 厨房の中を見ると一杯は、すでに生ビールが注がれており、もう一杯の生ビールを注ぐ寸前であった…

 マスターは、

「エッそうだったんですか?」と言ってから、「ジュースは何にしましょう?」と聞いて来た。私は、次山という男に確認してコーラを注文した。


 この店では、私がどんな飲物の注文しても全て「極冷え生ビール」が出て来るシステムになっているのであった…


 飲物が出て来ると、私は次山という男に紹介した。

「この人がマスターであっち系の人です。今は、私と付き合ってます。それから、彼女は30才ぐらいに見えると思いますが、8000才なんです。魔女なんで…ちなみに私の元カノです。2000年ぐらい前に付き合ってました。」

 男は、笑っていた。冗談だと思ったのかもしれないが、本当の話であった…


 それから、私達はテイクアウトの注文をした。男は、ジョニーの骨つき唐揚げとムネ肉の骨なし唐揚げを注文。私は、ムネ肉の骨なし唐揚げを注文した。


 しばらくして、テイクアウトの唐揚げが出来たので、私達はそれぞれ会計して店を出た。


 店の前で男は、質問した。

「ホルモンかずってあそこですか?」と言って信号の向こうの店を指差した。

「そう。あそこ!」

 店のシャッターは、閉まっていて開いていなかった…


 私達は、店の前で別れた。

 私は、家に帰ろうとたこ焼き屋の方に戻って行った。

 たこ焼き屋の前を素通りして帰るつもりであったが、カウンターにグーパンチの男がいるのが見えた…


 私は、グーパンチの男に声をかけた。

「グーパンチしてる写真撮らしてくれよ!」

 グーパンチの男は、隣の若者の顔に「グーパンチ!」と言って拳を突きつけた。私はそれを撮影してから、別れを告げて立ち去るハズだった…


 たこ焼き屋の玄関前のテーブル席にナレーターの男が女性と座っているのが見えた。


 その女性の顔には、見覚えがあった。

 その女性は、元美人風オバちゃまという感じで、会うのは初めてであったが、SNS上では以前から知り合いであった。


 元美人風オバちゃまと会ってしまったので、私はそのまま素通り出来なかった…


 私は、そのテーブル席に座った。

 そして、持っていたビニール袋をテーブルの上に置いた。

 テーブルの上には、何も置いていなかった。

 ナレーターの男に聞くと今来たばかりで店が混んでいるので、まだ注文出来ていない状態らしかった。

 私は、2人に飲物は水でいいのか確認してから、頑固オヤジのところに行き、ビールを1本注文して、コップに二杯の水を入れて、テーブルに戻った。


 そして、私達は乾杯した。


 その後、2人はたこ焼きを注文し、私はビールを注文した。

 やがて、バイクに乗った男が現れてテーブル席に合流した。

 その男は、ドライゼロを注文した。

 そして、私達は乾杯した。


 そのうち、オバちゃまもビールを飲み始めた。

 バイクの男は、家で烏骨鶏を飼っているらしかった。衣装ケースの中で…


 私達は、烏骨鶏の話で盛り上がった。


 やがて、店頭に1人の男がいるのを見つけた。

 そして、テーブル席に引入れた。

 私は、皆んなに紹介した。

「彼は、せんと君で〜す!」


 そして、私達は乾杯した。


 オバちゃまが突然言い出した。

「これ何?」私のビニール袋のことである。

 私は、答えた。

「お昼ごはんのおかず…」

 オバちゃまは、更に続けた。

「凄くいい匂い!」

 そして、私は諦めて言った。

「わかりました。皆んなで食べましょう!」私は包みを開けた。

 あっと言う間に唐揚げは無くなった…


 するとオバちゃまは、また質問した。

「これ何?」私のもう一つのビニール袋を指差す。

 私は、答えた。

「頑固オヤジの岡山のお土産のお菓子…」

 オバちゃまは、私を見つめた…

 私は、プレッシャーに負けて言った。

「わかりました。皆んなで食べましょう!」

 オバちゃまは満面の笑みを浮かべた…


 食べ終わると私は、「もう帰るわ!」と言って皆んなに別れを告げた。


 そして、私が家に向かって歩いていると、二台の自転車が私を追い抜いた。

 私が声をかけると自転車は止まった。


 そして、振り向くその2人は、ナレーターの男とオバちゃまだった…


 私達は、信号待ちをしている間に記念撮影した。


 空には雲ひとつない青空が広がっていた…

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