第41話 恐怖の宝くじ
私は、駅前のショッピングモールに向かって歩いていた…
土曜日の夕方は、毎週駅前のショッピングモールの一階にある宝くじ売り場に行くことになっている。
私が宝くじ売り場に着くと妻が前で待っていた。いつも妻と待ち合わせしているのである。
私は無言で宝くじ売り場の横に置いてあるロト6とロト7のマークシートを取り、鉛筆でマークして行く。
ロト6は、自分で決めたいつも同じ番号を1口とその時に適当に何も考えず選んだ番号を1口の合計2口記入する。そして、継続回数の欄の2をマークする。
ロト7も同じように自分で決めた番号1口と適当な番号を1口の合計2口記入する。しかし、継続回数欄は、マークしない。
私は、1週間分のロトを土曜日にまとめて購入しているのだ。だから、ロト6は2回分ロト7は1回分なのである。
私は、記入したマークシートを妻に渡す。そして、財布から先週購入したロト6とロト7の券も妻に渡した。
妻が宝くじ売り場の窓口に行き、まず先週購入したロトの券を出すと、窓口の女性が言った。「お調べですね。3枚お預かりします。モニター表示されますので、ご覧下さい。」とマニュアル通りの台詞を言った。
私達が、モニターを見ているとモニターの照会結果という欄に赤い文字で「あたり 1000円」と表示された。
妻は、表情を変えず窓口に私が記入したマークシートと400円を差し出した。毎回の購入金額は、1400円と決まっている。
そして、ロト6の券2枚とロト7の券を1枚受け取ると私に渡した。
私は、ロト6を販売開始された2000年10月の第1回から購入し続けている。
ロト6が販売開始になった頃、私は大変興奮した。何故なら、私は宝くじに不満を抱いていた。以前買っていた宝くじは、宝くじの番号がすでに印刷されており、自分で番号を決める事が出来なかったからである。自分で番号が決めれるロト6は、正に私が待ち望んでいた宝くじであったのだ。
そして、私はロト6を買う度に必ず一口ある決まった番号を買っていた。それを可能にしてくれたロト6がとても好きだった…その頃は、まだこのロト6の本当の恐ろしさに気づいていなかったから…
私は、ロト6を買い始めてから時々4等と5等が当たった。だが、当選してもそれほどの喜びは感じなかった。当選金額が少なかったからである。
私は、あくまでも宝くじには億以上の金額を期待しているのだ。それに当選番号をその都度確認する事もあまりない。次のくじ券を購入する時に窓口で調べて貰っている。
だから、宝くじに関してはあまりドキドキした事はない。
そんな私であったが、ロト6を買い始めて数ヶ月後にこの宝くじの恐ろしさを知る事となった。
その頃は、まだロト6が毎週木曜日だけの週一回の抽選の頃でネット販売も無かった。
私はその週、仕事が非常に忙しくてロト6の事を忘れていたのである。気がつくと金曜日になっていた。
私は、「あっ、しまった。ロト6を買うの忘れてた!」と心で叫んだ!
「まぁ、帰りに来週分のを買えばいいか…」と気楽に考えていた。
そして、その日の仕事帰りに私は宝くじ売り場に向かった。
宝くじ売り場に行く間に私はある事に気がついた…「昨日の抽選分のロト6買い忘れたけど、いつも買う決まった番号当たり番号じゃないよな?」と私は、心で呟いた。
もし、自分の決めてた数字が1等だったら、私は一生後悔する事になる…私は、今までに感じた事のないような恐怖を感じた。
宝くじ売り場に着く頃私は、心臓の鼓動が異常に高鳴っているのを感じた…
そして、震える足で宝くじ売り場の当選番号の掲示板の前に私は立ち、番号を確認した。
その結果、当たっていた…だが、5等であった。
私は、心の底からホッとしたのであった…
その後も私は何度か買い忘れた事があるが、その都度同じ恐怖を体験をする事になった…
それから、19年の間にロト6は週2回になり、ロト7も発売開始になった。
私は、一回の購入口数を減らして対応しているが、買うのをやめる事は出来ない…
1等が当たるか死ぬまで買い続けるしかないのである…
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