第35話 焼き海苔トッピング無料のラーメン店

 私と妻と娘は、南に向かって歩いていた…


 空は、雲で覆われている…

 私達は、昨日から娘と約束していた店にランチに行くところであった。

 家から約10分歩いた所に駅前のショッピングモールがあった。エスカレーターで4階まで上がるとそこは、飲食店フロアであった。

 もう13時をかなり過ぎていたが、フロアは沢山の人である。ほとんどの店に行列が出来ていた…


 私達は、迷わずその店に行った。昨日からその店に行くと決めていたから…

 その店の看板には、「希望軒」と書かれてあった。ラーメンチェーン店である。

 娘は、まだこのラーメン屋には入ったことがなかったが、私が以前行った時の写真を見て行きたがっていたのである。


 私達は、行列に並んだ…店の外には7、8人待っていたが、10分ぐらいで入れた。店内は、もちろん満席で、私達は店員に奥の中央にある4人掛けテーブル席に案内された。私と娘は、すでに注文するものは決まっていたので、席に案内された時にすぐ注文しようと思った。それで、妻に「注文決まってる?」と聞いてみた。

 妻は、えっという顔で急いでメニューを見た。

 店員もすぐに注文すると思ったみたいで、しばらく横で待っていたが、なかなか決まらないので、少しずつ後退りして消えて行った…


 妻は、しばらく悩んでいたが、

「ごま味噌ラーメンにするわ!」と言った。


 私は、店員を呼んで言った。

「とんこつラーメンのチャーシュー大盛りで煮卵トッピングを2つとごま味噌ラーメンをお願いします。」

 店員は、注文を繰り返してから、

「以上でよろしいですか?」と決まり文句を言った。

 私は3枚の券を出し、店員に聞いた。

「このサービス券は、今渡すの?レジで会計の時渡すの?」

 店員は、にこやかに

「レジでお願いします。」と言った。

 私達は、サービス券を持っていたのである。前回来た時にもらった「トッピング無料券」2枚と「200円割引券」1枚を…


 数分後、私達の前に注文したラーメンが並べられた。

 私は、2回目だったが娘は、初めてだったので、

「わぁ〜、すごい!」と叫んだ!

 とんこつラーメンのチャーシュー大盛りがビジュアル的にインパクトがあったのである。ラーメンのどんぶりの縁にチャーシューが一周敷き詰められているのは、圧巻であった。


 そして、私は店員にニンニクを注文した。店員は、容器に入ったニンニクとガーリックプレスを持って来て、私の前に置いた。

 私は、ガーリックプレスにニンニクを入れ、絞ってどんぶりの中に入れた。

 ニンニクを入れることにより、とんこつスープの旨味が増すのである。

 この店のとんこつラーメンは、見た目よりあっさりしている。私は、これぐらいのあっさりとんこつが好きである。

 私は、一気にとんこつラーメンチャーシュー大盛りを食べた。そして、後の2人が食べ終わるのを水を飲みながら、ゆっくり待っていた。

 ふとテーブルの上を何気なく見た私は、大変な事実に気付き、「あっ〜〜〜!」と叫んでしまった。

 私の視線の先にあったのは、容器に入った焼き海苔であった。

 そうこの店は、テーブルの上の海苔がトッピングし放題だったのだ。私は、前回来た時にそれを知って海苔をラーメンに心置きなくトッピングして、食べたのであった。海苔を入れるとどんぶりに磯の香りが漂い、ラーメンの旨さが増すのである。


 だが、今回私は海苔の事は、完全に忘れていて、ラーメンを食べ終わってしまった。

 私は、悔しかったので、海苔を掴み何も無いどんぶりに投入した。

 そして、私はそれを口に運んで食べた。口一杯に磯の香りが広がった…

「これラーメンに入れたかったなぁ〜」と思わず呟いた。


 でも、「後から海苔食べてもお腹の中で混ざるから、まぁ〜いいかぁ〜」と私は気持ちを切換えることにした…


 少し残念な気持ちはあったが、私の心と胃袋は満たされていた…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る