第32話 ゴンタの「サプライズプレゼント」前編

「リュック買いたい!」とパンマンが言い出した…


 ランチを終えた私達は、パンマンのその声で近くのショッピングモールに向かう事になった。

 パンマンは、卓球用のリュックがボロボロになって来たので、新しいリュックを買おうと思っていたのである。先日、駅前のショッピングモールでいいリュックを見つけたのであるが買おうか悩んでいた。だが、やっと買う決心をしたみたいであった。


 目的の店に着くとパンマンは、値下げコーナーのワゴンに向かった。すると目的のリュックがまだ残っている事を確認した。

 そして、ゴンタを呼んで言った。

「これ買って〜!」

 ゴンタは、値札を見てから言った。

「こんなのなんで俺が買わないとダメなんだ!」値札には値下げになっている金額が書いてあったが、それでも五千円近くしていた。

 パンマンは、「財布持って来てないもん。」と悲しそうな顔をした。

 私がゴンタに言った。

「代わりに払っといてやれよ。」

 ゴンタは、渋々リュックを持ってレジに行った。

 会計を済ませると、ゴンタは言った。

「俺も名刺入れ買おうかな⁉︎」


 3人は、ショッピングモール内の別の店に行き物色し始めた。私は、途中から自分の財布もボロボロなので、財布を見始めた。そして、1つの財布を選びレジで会計した。


 会計が終わると2人の所に戻った。

 するとゴンタも気に入った名刺入れを見つけたみたいだった。値札には、3500円と書かれていた。

 それを見たパンマンがニヤリと笑った。

 そして、ゴンタに話しかけた。

「ゴンタ、それお前の誕生日プレゼントに買ってやるよ。1月の誕生日にプレゼント渡せなかったから…」

 ゴンタは警戒して聞いた。

「どうしたんだ!何か企んでるんだろう⁉︎」

 パンマンは、笑顔で言った。

「だから、さっきのリュック、私の誕生日プレゼントということでいいよな!」

 ゴンタは、反論した。

「俺の方が1500円も損じゃないか!」

 パンマンは、「お前は、24歳の誕生日だろう?こっちは20歳の節目の誕生日なんだよ!」と言い返した。

 ゴンタは、うな垂れて「仕方ない…わかった。」と言った。


 それから、パンマンと私が前を歩く形で歩いているとある店の店頭に手長ザルとナマケモノの縫いぐるみが置いてあるのを見つけた。その縫いぐるみは、肩や腕に手を引っ掛けるようになっており、パンマンと私はその縫いぐるみでいろいろ引っ掛けて試している内にある感情が芽生えて来た…「欲しい!」

 値札を見るとどちらも税別で2700円だった。

 両方買うとなるとかなりの金額になる…

 買うと後で妻に確実に怒られる…

 私とパンマンが目を合わせた瞬間に2人の頭には、素晴らしいアイデアが閃いた!お金を払うことも無く、妻に怒られない方法が…


 私達2人は、すぐにゴンタを呼んで言った。

「お前、いつ帯広に帰るんだったかな?」

 ゴンタは、「5月2日だけど…」と言った。

 パンマンは、質問を続けた。

「じゃ、ブーちゃんの誕生日も母の日もこっちにいないんだ?」

 ブーとは、ゴンタとパンマンの母親で私の妻のあだ名である。


 ゴンタは怪しみながら、パンマンの質問に

「そうだね。」と答える。

 私がゴンタにある提案をする。「サプライズプレゼントをしたらどうだ?」

 ゴンタは、えっという顔をした。

 私は、続けた。

「当日に渡してもサプライズにならないから、今夜夕食を食べに行く時、乾杯の後にお前がサプライズで渡したら、きっと喜ぶぞ!」

 ゴンタは、「そうかな⁉︎何をプレゼントしたらいいのかな?」と聞いて来た。

 すかさずパンマンが、

「これがいいよ。」と手長ザルとナマケモノの縫いぐるみを差し出す。

 ゴンタは、少しビックリした顔で

「なんで縫いぐるみ?」と聞いた。

 パンマンは、説明した。

「よーちんさんにはクマちゃんがいて、ゴンタには犬のシバタくんがいて、私にはブルちゃんがいるでしょう!ブーちゃんだけ自分の縫いぐるみ持って無くて、寂しがってたから。」

 ゴンタは、「そうなんだ…」と納得したが、

「でも、一個じゃダメなのか?」と聞いて来た。

 パンマンは、すぐに答えた。

「一個は5月11日の誕生日用、もう一個は5月12日の母の日用なんだよ!」

 ゴンタは、「そうか…」と納得して2個の縫いぐるみと共にレジに歩いて行った。


 私とパンマンは、顔を見合わせてニッコリ笑った…


 そして、この話は後編へと続く…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る