第28話 ゴンタの彼女は、……。

 今夜の食卓で3人は、話し合っていた…


 午後8時半ごろ、ゴンタが北海道帯広市から家に帰って来る。その前にゴンタ以外の家族で夕食を食べながら、作戦会議を開いていたのである。


 ゴンタというのは、私の家の長男のあだ名である。そのゴンタに去年の秋から帯広で彼女が出来たのであるが、以前から私達が「彼女の写真を見たいから送れ!」と言ってもゴンタは応じようとはしなかった。そこで今回、帰省している間に写真をどうにかして見ようと3人で作戦を練っていたのである。


 まず、3人は「どうして、ゴンタは写真を見せないのだろう?」ということを話し合った。そして、見せたくない理由を3つに絞って結論を出した。「多分、ゴンタの彼女は、デブかブスか男なんじゃないか?だから、写真を見せたくないんじゃないのか?」と私が言うと後の2人も同意した。


 次にどうやって写真を見るか?という作戦について話し合った。

 パンマンが、「携帯をどうにかしてゴンタから奪い取って見るしかない!」と言った。


 パンマンというのは、この家の長女でゴンタの妹である。

 そして、パンマンは続けた。「やっぱり、お風呂に入ってる時に脱衣所から奪いましょう!」発言している時のパンマンは、満面の笑顔であった。


「でも、ゴンタは携帯に暗証番号でロック掛けてるんだよなぁ~」とパンマンは困った顔をした。

 私は、「だったら、本人に聞くしかないなぁ~、ゴンタに酒を飲まして聞き出そう!」と言った。私達は、他にいい案が思い浮かばないままだった…


 その時である。玄関でゴソゴソ物音がした。「あっ、ゴンタが帰って来た!」私は、急いで自分の携帯を持ち、玄関に行き電気を点けた。そこには、大きな荷物を持ったゴンタがいた。

 ゴンタは、私を見て察したのであろう…敬礼をした。私は、その敬礼ポーズを写真撮影してからゴンタに言った。「そこの電気消しとけよ!」

 そして、私はリビングに戻って行った。


 ゴンタも後からリビングにやって来て、みんなにお土産を渡した。

 そして、最後に箱に入った余市ワインのボトルを出して、「このワイン美味しいから、みんなで飲もうと思って…」とゴンタが言った。

 私は、ちょうどいいと思い、妻にワインオープナーとグラスを持ってくるように指示した。

 グラスがテーブルに並べられ、私がワインのコルク栓をオープナーで開けた。そして、グラスにワインを注ぎ、4人で乾杯した。


 しばらくして、私がゴンタに切り出した。「お前、携帯にロックかけてるの?」

 ゴンタは、私達がゴンタの夕食に用意しておいた蟹のちらし寿司を食べながら答えた。

「かけてるよ。」

 私は、更に質問した。

「暗証番号、何番?」

 ゴンタは、少しビックリしながら言った。

「教えたら、ロックの意味ないよ。」

 私は、更に続けた。

「お前の携帯の中の写真見たいんだよ。教えろよ!」

 ゴンタは、「嫌だよ!」と拒否した。

 私は更に「お前、今、蟹のちらし寿司食べただろう!教えろよ!」と迫った。

 ゴンタは、「何の写真を見るの?」と困った顔をした。

「お前の彼女の写真を見たいんだよ!何で彼女の写真見せないんだよ!前の彼女の時は、喜んで見せたのに!」と私が言った。

 ゴンタは、絶句した…

 そして、今度はパンマンが言い出した。

「ゴンタの彼女は、デブなんだろう?」

 ゴンタは、反論した。

「デブではないと思う。」

 パンマンは、質問を変えた。

「ブスなのか?」

 ゴンタは、「……。」

 パンマンは、更に質問を続けた。

「ひょっとして、男か?」

 ゴンタは、「違う!女だ!」

 私は言った。「ということは、ブスなんだな⁉︎」

 ゴンタは、少し小声で「そんなことはないと思う。」と言い、

 私は、「じゃ、見てやるから見せろよ!」と言うと、

 パンマンも「見せろ!見せろ!」と迫った。


 するとゴンタは、携帯を出し写真を探し始めた。そして、手が止まったところでパンマンが強引に携帯を奪い取って写真を見てから、私の前に差し出しながら言った。

「なんか普通に綺麗なんだけど…」

私は、携帯をパンマンから受け取ると写真を見た。

 その写真は、クリスマスのサンタクロースを中央にしてアベックが両サイドに分かれて写っている写真だった。もちろん、男はゴンタであった。そして、女は普通に綺麗な人だった。

 私は、思った何か怪しいと…

 この女性が彼女なら、写真を見せるのを嫌がるのがおかしい。

 そして、私はある仮説を立てた。写真を見せるのを嫌がった理由を…

 私は、その仮説をゴンタに恐る恐るぶつけてみた。

「お前の彼女というのは、この女性では無く、この真ん中のサンタクロースの格好をしたおじさんなんじゃないのか?」


 ゴンタの顔色が明らかに変わった…

 そして、私に言った。

「ぜっーーーたい、違うから!」


 私は叫んだ。

「なーーーんだ、面白くない!」


 私は思った…ドキドキして損したと…

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