第26話 ちゃーちゃんとその仲間たち

 突然LINEメールが来た…


 私があるショッピングモールのベンチに座っている時にそのLINEメールが来た。

 ホルモン屋のムーミン谷のミーに似た店主からであった。そのメールを見た私は、驚きと落胆で頭の中が真っ白になった…


 彼女は足に以前から腫瘍が出来ていたのだが、ある大学病院でその腫瘍の精密検査を行った。そして、本日は結果を聞く為、診察を受けに行ったのだ…

 そのメールは、その結果の報告であった。足の腫瘍は、悪性の癌であり、すでに両肺に転移しているとのこと。今後は、抗がん剤治療を行い、腫瘍が小さくなれば、摘出手術を行う。腫瘍が小さくならなければ、足を切断するしかないとのこと。

 私は、なんて言って励ましたらいいのか、いい言葉が見つからず、当たり障りのない返事をするしかなかった…


 その日の仕事が終わり早めに帰宅した私は、とにかく外呑みしたい気分であった。

 そこで私は、自転車で駅前の牛丼屋に行き、店の券売機で生ビールとおつまみにお新香と目玉焼きウインナーの券を買った。全部で370円であった。「安い…」私は、思わず心で呟いた。

 そして、店の一番奥のテーブル席に座り、テーブルの上に券を置いた。すぐに40代の女性店員が、やって来て券をちぎって注文を読み上げた。私が頷くと店員は、奥の厨房に下がって行き、すぐに生ビールとおつまみを持って来た。


 私は、生ビールを一口喉に流し込んだ…なぜだか胸を締め付けられる思いがした…

 私は、生ビールを一杯お替りしてから、店を出た。


 そして、私は自転車に乗りホルモン屋を目指した…


「ホルモンかず」それが、その店の名前であった…店に入ると数人の客がいた。

 ムーミン谷のミーに似た店主は、私の顔を見るなり泣き出した。

 私は、チューハイを飲みながら店主が差し出した大学病院の診断書を見た。そこには、LINEメールで報告を受けた通りの結果が書かれていた。「足の腫瘍は悪性であり、両肺に転移性肺腫瘍の疑いあり」という内容であった。

 私は、チューハイを2杯飲んでから店を出た。店主の顔が見てられなかったのである…


 私は、ホルモン屋を出た足でたこ焼き屋に行った。

 ちょうどたこ焼き屋の頑固オヤジは、SNSを見ていたところであった。私が店に入るなり頑固オヤジは言った。「ちゃーちゃん、大変じゃないですか?」

 ちゃーちゃんというのは、ホルモン屋のミーに似た店主のあだ名であった。


 頑固オヤジと私は、少しの間ちゃーちゃんの病気についての話をした。そして、たこ焼き屋の営業時間が終わったら、二人でもう一度ホルモン屋に行こうという話になった。

 そして、閉店時間の19時の3分前からその店は急に賑わい始めた。結局、たこ焼き屋を閉めれたのは20時15分であった。


 頑固オヤジと私は、ホルモン屋に行き1時間程ちゃーちゃんと過ごした。店には、他の客もいてその中にはあの「グーパンチの男」もいた。


 ホルモン屋の閉店後、私は白タクの中にいた…私以外にその車に乗っていたのは、ちゃーちゃんとホルモンかずのオーナーとグーパンチの男であった。車に乗って10分程で車はあるカラオケ屋の前に停まった。その店の看板には「ジャンボカラオケ」と書いてあった。


 カラオケ屋のパーティールームには、ちゃーちゃんの事を元気づけようと仲間が20人近く集まって来た。その中には「リトルキッチンかなちゃん」のかなちゃんとマスターの姿もあった。店の閉店後ちゃーちゃんの為に駆け付けたのだ。


 ちゃーちゃんを励ますカラオケ大会は、涙あり笑顔あり乾杯あり大いに盛り上がった…やっぱり、ちゃーちゃんの仲間たちは楽しい奴らだった。


 私は、記録に残す為、必死で写真を撮り続けた。その撮影された写真は、200枚を超えていた…


 私は、名残惜しかったが、翌日の仕事もあるので途中で抜けてタクシーで家に帰った。


 家に着いた時、もう午前1時を回っていた。

 ふと自転車置き場を見ると私の自転車がなかった。そういえば、ホルモン屋の前に置きっぱなしだった。

「明日、取りに行かないとなぁ~」と私は、心で呟いた…

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