第22話 三位一体のチームワークの店
私は、早めに事務所を出た…
午後のアポには早過ぎる時間に私は事務所を出たのである。そして、私は歩き始めた…
線路を越えて駅の向こう側に行った。道沿いにはあの完全無欠の塩ラーメンの「麺や ひなた」があった。その前をさらに進む。前方には吉野家が見えて来た。その店は、吉野家の手前にあった。
私の本日の目的地、それは「麺処 飯田屋」鶏白湯ラーメンの名店らしい。
だが、その店は開いていなかった。開店時間は過ぎているのに…店の前に貼り紙がしてあった。どうやら、店長が体調不良で昨日休みで、今日も何時に開くかわからないみたいであった。
仕方なく、私は近くの店を調べた。そして、行く店を決めた。
私は、来た道を戻る。「麺や ひなた」の前に来て店を見ると開店直後であるが、もうかなり客が入っている様子…私は、ひなたの前を通り過ぎて線路を越えた。そして、信号を左に曲がり少し行くとその店は、あった。
表に店名が書いてあった。
「醤油と貝と麺 そして人と夢」
かなり変わった店名である。
店内は、テーブル席2つにカウンター7席という少し狭い店であった。すでに客でテーブル席が埋まり、カウンター席も半分が埋まっている状態であった。
店に入ると小太りの店長と若者店員とギャル店員が元気良く「いらっしゃいませ!」という挨拶で迎え入れてくれた。
そして、小太り店長が言った。「カウンター席へどうぞ。」私は、カウンターの端の席に座った。すかさず、ギャル店員が水を私の前に置きながら、「注文が決まりましたら、お知らせ下さい。」と言った。
私は、店名からすると醤油ラーメンで貝の入ったものがいいと思っていたので、すぐに決まった。
カウンターの店長に「蛤醤油ラーメンと鶏ユッケ丼のセット」を私はオーダーした。
カウンターの横の席だったので、カウンター内の調理風景がよく見えた。
店長が「麺あがりま〜す。」と叫び、麺をあげ湯切りする。そして、スープの入った丼に麺を入れる。すかさず、ギャル店員が具材を盛り付けていく。盛り付けたラーメンを若者店員にパスする。パスを受けた若者店員がそれをテーブル席の客に持って行く。まさに流れるような動き、三位一体のチームワーク…
「素晴らしい…」私は唸った。
数分後、カウンター越しに店長が蛤醤油ラーメンを私の前に置いた。同時に客席側から、若者店員が鶏ユッケ丼を持って来る。「ナイスコンビネーション…」と私は心の中で呟いた。
私は、まず蛤醤油ラーメンのスープを口に運ぶ…醤油ベースだが、少し不思議な味のコクと深みがあるスープで、食べ進めるうちに癖になる感じ。麺は中細ストレート麺でスープとよく合う。具は、蛤3個と鶏チャーシューが2枚でこのラーメンとベストマッチ。
そして、セットの鶏ユッケ丼は、この店のあっさりラーメンの為にあるような丼である。卵を潰してよく混ぜて食べると具材の旨味が混ざり合って増幅される感じの旨さであった。
一気に食べ切った私の顔から汗が吹き出た…
心地いい汗だった…
水を飲んでから、私はゆっくり立ち上がりレジに向かった。「ありがとうございます!」と店長は言った。
レジで会計した時、店長の名刺が置いてあったので一枚頂いた。私は、旨いラーメン屋の名刺は貰う事にしている。
私は、出口に向かい、カウンターの中にいる店長に「ご馳走さま。美味しかった。」と声をかけた…
店を出る私の背中に向かって「ありがとうございました。おおきに!」と言う濱西店長の元気な声が聞こえた…
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