第20話 魔の三角地帯

「ボヘミアン・ラプソディー」の余韻が残ったまま私は、TSUTAYAの店内ポストにそのブルーレイを返却した…


 私は、TSUTAYAから自転車である場所に向かった。


 空には、雲一つない青空が広がっていた…

 自転車を漕ぐ私には、朝の澄んだ空気が凄く気持ちよく感じられた。


 そして、目的地に着いた私は、その店の前に自転車を停めた。

 まだ、開店時間の数分前だったので、店は開店準備中だった。私は、恐る恐る店内を覗いた。すると、いつもは寡黙で頑固そうな店主が、「おはようございます!」と元気で明るい笑顔で言った。「あっ、お…おはようございます。」私は少し驚いたが、挨拶を返した。


 その店は、以前行ったことのあるたこ焼き屋である。その時、食べた雪塩たこ焼きが忘れられず、朝一番でやって来たのである。


 カウンター席に座った私に「ビールでいいですか?」と店主が言った。「はい。」と私が返すと、すぐにキリン一番搾りが私の前に置かれた。

 私が、ビールを一口飲むと店主が話を切り出した。「あの…ちょっと相談させてもらってもいいですか?」

 私は、少しびっくりしたが、「いいですよ。」と返事した。

 それから、店主は自分のお金に関する家族の問題について話し始めた…


 その時である。あの男が突然店に入って来て、私の横の席に座った。

 その男は、以前もこの店で会ったナレーターの男であった。


 店主は、その男を睨みながら言った。「小羽さん、今相談事をしているので、10分ほど待ってもらえますか?」

 その男は、店主の迫力に押されて「はい…」というのが精一杯であった。


 そして、店主は私に話を続け、その後私がアドバイスをして話し合いは、一段落した。

 私の「たこ焼きを注文してもいいですか?」という台詞をきっかけに私とナレーターの男は、注文した。

 私のファーストオーダーは、もちろん雪塩たこ焼きであった。


 すぐに雪塩たこ焼きが4個乗った皿が私の前に置かれた。

 私は、ナレーターの男と乾杯してから、たこ焼きを頂いた。

 たこ焼きの中にはプリプリの大きな蛸が入っており、雪塩が蛸の旨味を引き立たせていた。すかさず、私は一番搾りを流し込んだ。「旨い!」私は思わず叫んでいた。たこ焼きには、キリン一番搾りがベストマッチであると私は再認識した。


 2種類目のたこ焼きは、店内でしか食べれない「丸ちゃん焼き」と呼ばれているたこ焼きを注文した。

 丸ちゃん焼きとは、皿に乗ったたこ焼きにチーズを乗せ、バーナーで炙ってたこ焼きにコーティングするというものである。

 皿の丸ちゃん焼きをつまようじで刺し、口に運ぶとチーズがビヨーンと伸びるのでインスタ映えすると評判らしい。味もチーズとたこ焼きの相性が良く癖になる感じで旨い。


 3種類目のたこ焼きは、「昔ながらのたこ焼き」を注文した。

 このたこ焼きは、その名の通り一番ポピュラーなもので、たこ焼きにソースを塗り粉の鰹節と青のりをかけるだけというものである。

 ポピュラーだけどその店のソースのレベルが一番わかる。もちろん、この店のこだわりソースは最高である。ビールに合うようにブレンドして作っているらしい。


 たこ焼きを食べ終わると、店主とナレーターの男に別れを告げた。

 すると、店主は言った。「次はこの道をまっすぐ行って突き当りを右に曲がった所にある店に行くように!」

 私は、意味が分からなかったが、店主の言う通り行くことにした。


 たこ焼き屋の店主の言う通りに行くとその店はあった。


 店には、縄のれんが掛かっており、「ジョニーのからあげ」という店名が書かれてあった。私は、以前来たことがあるような気がしたが、思い出せなかった…


 店に入ると筋肉質っぽい体格であるが、少し女性っぽい眼差しの店長らしき男が、「いらっしゃいませ。」と言ってにっこり笑顔で迎えてくれた。


 私はカウンターの端の席に座った。そして、メニューを見ていると、いきなりキンキンに冷えたジョッキに入った生ビールを店長が持って来て私の前に置いた…「極冷え生ビール、おまたせしました!」

 びっくりしたが、どうやらこの店では注文しなくてもこの極冷え生ビールを飲まないとダメなシステムらしい…


 私は、その生ビールを一口飲むと立ち上がり、「トイレ貸して下さい。」と言ってトイレのある2階に行こうとしたが、店長が「ごめんなさい。今、トイレ使用中です。」と言った。が、その直後、2階に上がる入口の戸が開いた。

 そして、一見30歳前後の凛とした美女風店員がにこやかに表れた。その笑顔は、何処となく魔女をイメージさせた。


 私は、トイレに行った後、「骨なしムネ肉のから揚げ」を注文した。


 数分後、私の前に籠に入った「骨なしムネ肉のから揚げ」が並べられた。

 私は、から揚げを口に運んだ。揚げたてで熱々だったが一口噛んでみるとふわふわの食感で凄く柔らかかった。ムネ肉特有のパサパサ感は微塵もなく、ジューシーな感じであるが、あっさりしていた。そして、生ビールを流し込む。「旨い!」私は、唸った。

 生ビールが無くなったので、私は美女風店員に「水ください。」と言った。

 すぐに美女風店員は、「お待ちどうさま。極冷え生ビールです。」と言って生ビールを持って来た。


 どうやら、この店では、から揚げを食べている間は、生ビールを飲まないとダメなシステムらしい…


 から揚げを食べ終わり、生ビールを空けた私は、会計をした。

 すると店長が、言った。「ありがとうございます。次は、そこの信号を渡って道の向かえにある店に行って下さい。」

 私は、店長に言われた通り、信号を渡った所にある店に行った。


 すぐにその店は、あった。

 その店の窓は開いており、覗くと窓の向こうには鉄板が見えた。鉄板には、いい色でホルモン焼きが焼かれていた。窓の横に入口があり、入口のドアに「ホルモンかず」と書かれていた。


 中に入るとテーブルが一つあり、その脇にムーミン谷のミー風の小柄な女性が立っていた。その店主らしき女性は、「いらっしゃいませ。」と言って奥の席に案内してくれた。案内と言っても約1mの距離であるが…

 そして、私はチューハイ2杯と豚足を注文した。チューハイが注がれると店主と乾杯し、記念写真を撮った。

 そして、豚足がやって来た。

 その豚足は、塩豚足で塩と胡椒で味付けされていたが、絶妙な塩加減で最高に旨かった。プルプルの食感も最高であった。


 豚足を食べながら、私は店主の話を聞いていた。

 店主は、最近あった面白い話をいくつか話してくれた。中でも私の印象に残った話は、昨夜この店の近くで起こった喧嘩の話で、二人の男が路上で殴り合いをしていたのだが、一人の男が転んだところを上からもう一人の男が殴ったらしい。その時、男は「グーパ~ンチ!」と言いながら殴ったらしい。まるで、仮面ライダーの「ライダーキック」のように…


 そんな話をしていると客が一人入って来た。その客は、なんと「グーパンチの男」であった。

 それから、そのグーパンチの男と乾杯して、グーパンチの話で盛り上がった。


 グーパンチの男が帰った後、私はたこ焼き屋の前に自転車を置いているのを思い出し、ミー風の店主に別れを告げた。店主は言った。「魔の三角地帯、制覇です。おめでとうございます。」


 たこ焼き屋、からあげ屋、ホルモン屋の三軒の店は、「魔の三角地帯」と呼ばれているらしい…なぜなら、この三軒を制覇しないと家に帰れないという伝説があるらしい。


 自転車を取りにたこ焼き屋の前に行くとそこには、グーパンチの男とホルモンかずのオーナーとディーンフジオカみないな男がいた。たこ焼き屋の店主を含めた5人は、そこで記念写真を撮ったのであった…

 そして、私とディーンフジオカみたいな男は、たこ焼き屋で乾杯した。


 そのディーンフジオカみたいな男の鞄は、やけに重かった…

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