第13話 雨の日曜日…
ある雨の日曜日に私は待っていた…
駅の南側ロータリーで待っていた…私の前には15、6人並んで待っていた…来る予定時間の12時26分になってもやって来ない…
それから10分ほどしてやっと現れた…そして、列の前に停まった。そいつは、阪神尼崎行きのバスである。
私は、列の順番通りバスに乗り込み中央付近のつり革を握りながら、立った。バスは、ほぼ満杯に近かった…それから、バスはいくつかのバス停に停まり、その都度何人かが降りて行った。乗ってくる人は殆どいなかった…約10分ほどで終点の阪神尼崎に着いた。着く頃には、乗客は半分ほどになっていた…
バスを降りた私は、携帯の時計で時間を確認した。12時47分であった…「ちょうどいい。」と私は、心の中で呟いた…
私が向かっているのは、そこから約2、3分歩いた所にある店だ…本日、私が参加するカラオケ大会の会場である。
その店は、アーケード商店街の中にあり、「ノーベル商店劇場」というちょっと変わった名前の店であった。
本日、私が参加するカラオケ大会は、馴染みの小料理屋「リトルキッチンかなちゃん」が主催し、そのお客と楽しむ為に企画されたイベントであった。今回は、去年に続き開催され2回目である。時間は、13時〜16時の予定である。
会場の前に着いた私は、入口から中を覗き込んだ…すると見覚えのある男が目に入った。
男は、昨日頑固店主のタコ焼き屋で出会ったナレーターであった。
私が手を上げて合図すると、その男は入口の方にやって来た。その後ろから、美人風のマダムもやって来た。私達は、再会を喜び入口で写真を撮った…
店内に入ると1番奥にカラオケ部屋があったがその前で、受付した。受付の美人風マダムに会費の2000円を払い、くじ引きをした。歌う順番を決めるくじ引きらしい…17番であった。この日の参加者は、21人だったので最後の方であった…
カラオケ部屋に入ろうとしたところ、本日の主催者であるかなちゃんとマスターがいた。私達は、再会を喜び記念撮影した。
この大会は、1ドリンク付きなので私は迷わず「キリンラガー瓶ビール」を頂き、部屋の中に入った。まだ、2人しか来ていなかった…私は、中央のテーブル席に座りコップにビールを注いでから、その2人と「乾杯!」と叫んでこの日1回目の乾杯をした。
その後、次々と参加者が入って来て殆どが顔見知りなので、再会を喜び記念撮影した。
そして、いよいよカラオケ大会の始まりである。
司会者がステージに上がる。司会者は、2人で1人はタコ焼き屋であったナレーターの男、もう1人はリトルキッチンのマスターであった。
まず始めに主催者の挨拶があり、その後は乾杯である。乾杯の音頭に指名されたのは、なんと私であった…去年に続き2回目である…指名されるのも光栄なことなので、私は気持ちよくステージに上がり乾杯の音頭をとったのであった…「カンパーイ‼️」
その後、司会者からカラオケ大会のルール説明があった。去年とはルールが変わっていた…今回のルールは、先にくじを引きそこに書かれていたジャンルの曲を歌えば、カラオケ機の採点プラス5点もらえるというものであった。もちろん、自分が歌おうと思った曲を歌うことも出来るが、その場合ジャンルが違えば5点はもらえない…
私が引いたのは、「カバー曲」であった。もちろん、私が用意していた曲はカバー曲ではない…
そして、カラオケが始まった…最初は、主催者のかなちゃん以外は、仮装も被り物もなしで歌を聴きながら、みんな比較的おとなしめだった…ちなみにかなちゃんは、というと最初から金髪妖怪の仮装をしていた…
私もビールをコップに入れて飲んでいた…
だが、ビールを2本3本と飲んでいるうちにだんだん楽しくなって来た。
周りの皆んなも被り物を被り始め、踊り始め、かなり盛り上がって行った…
私も被り物を被ってみた…瓶ビールは、コップに注ぐのが面倒になり、ラッパ飲み…記念写真は、数え切れないぐらい撮っていた…
そして、私のカラオケの番が回って来た…
私は、カバー曲にするか用意して来た曲にするかまだ迷っていた…
そこでステージに上がってから、皆んなに聞いてみた。圧倒的に5点を捨てろという答えだった…
それで、1番を取る為に用意して来た曲を入力した。そして、歌った。「月月火水木金金」という軍歌であった。
全ての人が歌い終わって、結果発表…1位は、メガネをかけたおじさんであった…
私はというとビリ…最下位であった…しかも去年に続き2年連続の最下位であった…
でも、ある意味2連覇である…だから、「まっ、いいか!」と私は、心で呟いた…
その後もフリーでカラオケを歌え皆んな大盛り上がりで、歌っていた…
私もビールをかなり飲み、さらに記念写真を撮りまくったのであった…
次の日、確認すると記念写真の枚数は300枚近くあった…
カラオケ大会がお開きになった時、時間は18時近かった…
私は、少しギョッとした。予定では、16時までだったので、妻には17時の門限までには帰ると言っていたのである…
そう私の門限は、休みの日は17時なのである…
何故そうなったかは、また次の機会に…
とにかく、私は焦った…そして、急いで歩いて帰ろうと外に飛び出したのだった。
外は、雨…私は、完全なる千鳥足になっていた…フラフラになりながら、歩いているとリトルキッチンのマスターに話し掛けられたが、私はさらに歩いた…そして諦めた…タクシーで帰ろ…
タクシーはすぐに捕まり、タクシーの運転手にだいたいの家の場所を告げた。
私が目を開けると、家を通り過ぎていた…急いでタクシーを降り、そこから歩いて帰った。
無事、家に着くと私の分の夕食だけテーブルに置かれていた…「ケンタッキーフライドチキン」が2個…
私は、それを食べた。門限破りしたが…妻は、珍しく怒っていなかった…
私は、安心してそのまま座椅子に座って眠りについた…カラオケ大会の余韻を楽しみながら…
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