第12話 肉細切りピーマン
私は、お昼に事務所にいることがあまりない…
だから、たまに事務所にいる時は、ランチを食べる店がだいたい決まっている。
最近は、最寄り駅近くにある「ぎょうざの満洲」というチェーン店に行くことが多い。何故なら、お昼の混む時間帯でもいつも席が空いているからである…
その店は、別に人気がない店で客が入らないから…と言うわけではない。
その店は、その付近にある店より席数が多いのである…店内には、4人掛けと6人掛けのテーブルが11テーブルあり、カウンター席が8席合計で70席程ある。回転も速いので、満席になっていることがほぼ無い…ランチをゆっくり食べたいと思っている私は、どうしても此処に来てしまう。
この店の一番の売りは、もちろん餃子である。メニューのほとんどに餃子のセットメニューがある。逆に言えば、餃子を食べない客はちょっと肩身が狭い感じがする…
私は、この店で餃子を食べることがあまりない。何故なら、この店の餃子があまり好きではないからである。さらに言うと、この店のライバル店である「餃子の王将」の餃子が好きなのである…それとこの店に来るのは、仕事の日のお昼と決まっているので、ビール無しに餃子を食べるのは辛い。
私は、餃子でビールが最高に好きなのである。
今日は、珍しく夕方まで事務所にいたので、ランチはこの「ぎょうざの満洲」で食べることになった。12時過ぎに事務所を出て12時10分過ぎに私はこの店にやって来た…店の前まで来るとガラス越しに店内の様子が覗えた。店内は、約半数の席が埋まっていたが、まだまだ席はあった。店内に入ると40前後の少し細身の女性店員が、満面の笑みで迎え入れてくれて、「おひとり様ですか?カウンター席にお願いします。」と言う。いつもと同じ台詞になんとなく癒される気がした…
この店のカウンター席というのは、一般的なカウンターとは違い4人掛けのテーブルの中央に衝立で仕切っている席なのである。
本日は、気分的にラーメン系でも丼系でもない感じだったので、私はメニューを見て初めて注文する「肉細切りピーマン」を選んだ…メニューには、あたり前のように餃子セットが載っている…私は、餃子は食べないので、その単品とライス(スープ付き)を注文することにした。
私は、店員を呼び注文した。注文を受けた女性店員は、「餃子は無しでいいのですか?」と念を押して来た…私は、「はい。」と答えた。
女性店員が持って来た水を飲みながら、私は待った…
数分後、私の前に肉細切りピーマンとライスとスープとザーサイが並べられた…
私は、その肉細切りピーマンを見て思わず「綺麗…」と心の中で呟いた…
色合いが実に綺麗であった。
肉細切りピーマンは、肉とピーマンとゆでタケノコの三つの具材のシンプルな料理だが、調理の腕が味を左右する料理だと思う。
私は、それを口に運び歯応えと味を確認した…三つの具材の歯応えと炒め具合と塩加減が実に絶妙で最高に旨かった…
私がこの店で今まで食べたどの料理よりも旨かった…白ごはんとの相性も最高であった。
私は、一気に箸を休めずに食べ切った…
食べ終わった後、何かすごく心地よい達成感があった…
そして、私はゆっくり水を飲んでからレジに向かい、会計を済ませた。
店を出て、何気なく空を見上げた…空は、厚い雲で覆われていたが、私の心は晴れやかであった…
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