第11話 神泡サーバー

 私は、近所のスーパーに向かっていた…


 何故スーパーに行くのかというと、ビールが無かったのだ…

 先程、買って来た たこ焼きをビールを飲みながら、食べるつもりだった…

 家の冷蔵庫を開けると買い置きのビールが一本も無かったのである。「なんてことだ!」私は心で呟いてから、すぐに家を出てスーパーを目指した…


 スーパーは、家から徒歩で2、3分の所にある。スーパーに着いた私は、買い物用の籠を取りビール売場に向かおうとしたが、思い立って惣菜コーナーに立ち寄った。一品、何かビールのつまみを買おうと思ったのだ…惣菜コーナーには、揚げ物、天ぷら、寿司、煮物など並んでいたが、私はあまり迷わず、「手羽中のガーリック焼き」のパックを取って籠に入れた。

 それから、ビールコーナーに向かい、いつも飲んでいる第3のビールを手に取ろうとした。その時、横に積み上げられているビールの山に目が止まった…そこには、「プレミアムモルツ」の6本パックが積まれていたのだ。値段は、いつも買う第3のビールの倍程の値段だった。だが、そのパックにオマケが付いていた…「神泡サーバー」が付いていたのだ…そして、箱には「お店のようなクリーミーな泡が注げる!」というキャッチコピーが書いてあった…

 私は、見事にキャッチされてしまった…プレミアムモルツのパックを籠に入れ、レジに向かった。

 レジは空いていて、待つことなく籠をレジ係のおばちゃん店員の前に出した。おばちゃん店員は、バーコードをスキャンしてから「レジ袋は、ご用意してもよろしいですか?お会計は4番の機械でお願いします。」とマニュアル通りの台詞を言った。最近は、レジの会計も会計機でするのが当たり前の時代になったなぁ〜と思いながら、私は会計機で精算した。


 スーパーから出ると外はポカポカ陽気だったが風が少しひんやりしていた…


 家に帰って、スーパーで買った手羽中焼きを電子レンジに入れてから、ビアグラスを用意した。電子レンジがチンっと鳴って、私はテーブルに手羽中、ビール、ビアグラス、そして、たこ焼きを並べた…たこ焼きはかなり冷めていたがレンジで温めない…何故なら、たこ焼き屋の頑固店主に言われたのだ…「このたこ焼きは、冷めてもレンジで温めないで食べろ!冷めても旨いから…」私は、頑固店主の言い付けを守ることにした。


 それから、缶ビールを開け、そこに神泡サーバーを取り付けた。そして、ビアグラスにビールを注ぎ始めた…最初はグラスを傾けてグラスに沿ってゆっくり注ぎ込み、泡を立てないようにする。グラスにビールが6割ぐらい入ったら、グラスを起こしサーバーのレバーを押しながら注ぐと泡が出てくる…泡をグラスの上までのせると完成である。

 私は、そのビールをゆっくり飲み始めた…旨い…やっぱり、泡が違うなぁ〜という気がした…

 それから、冷めかけたたこ焼きを口に運ぶ…やっぱり旨い!あの頑固店主の言う通りである。


 そして、私は少し疑問に思った。神泡サーバーで注いだビールの泡とサーバー無しで普通に注いだビールの泡とどれくらい違うのかなぁ…

 そこで、私は2本目のビールを神泡サーバー無しで注いでみることにした。ビアグラスを先程と同じように最初は傾けてグラスに沿ってゆっくりビールを注ぐ、6割ぐらい入ったらグラスを起こし、ビールの缶を少し高い位置に上げビールを落下させながら注ぐと泡がたち始める。そして、完成…神泡サーバーで注いだのと同じ感じのビールが完成した…泡の細かさも同じに見える…飲んでみる…違いがわからない…


 3本目からもサーバー無しで飲んだ…


 私は思った。この神泡サーバーは、このまま使われず何処かに片付けられたまま出てくることがないかもしれないと…

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