第9話 その男は、突然やって来た!

 午前3時過ぎに目が覚めた…


 よく覚えていないが、凄く嫌な夢を見た…

 それから、眠れなくなったが、休日の朝にベッドの中でうだうだしているのが、実に気持ちいい…

 それから、数時間ウトウトしながら、過ごしたが9時前になってやっとベッドから起きる決心をした。



 ベッドから出てシャワーを浴びながら、今日何するか考えていた…

 そして、思い立った…数日前に仕事の合間に立ち寄った和菓子屋のいちご大福を買いに行こう!

 シャワーから出て着替えた私は、早速出掛けることにした。


 外は雲一つない晴天だったので、サイクリングを兼ねて自転車で出発した。自転車を漕ぐと少し冷たい風が気持ちよかった。


 自転車で和菓子屋に向かうと意外に早く店に着いた。まだ、開店時間の9時30分の数分前だったので、行列は出来ていなかった。少し店の前で待つと店のシャッターが上がってオープンとなった。

 店に入ると相変わらずの頑固そうな風貌の店主がいた。

 私は、いちご大福をテイクアウトで注文した。

 すると、頑固店主は、私に言った「いちご大福は、もうやってない…」

 私は、少しがっかりして問い返した「今日は、何がありますか?」

 店主は、低い声で言った「たこ焼き…」


 私は恐る恐る店主に聞いてみた「和菓子屋さんじゃなかったんですか?」

 店主は言った「和菓子は辞めた…この塩に出会ったからな…」

 そして、容器に入った塩を私に見せた。


 店主の話によるとその塩は、雪塩という宮古島で作られているもので、非常にきめが細かく粉雪のような見た目であるが、成分はマグネシウムやカルシウム等のミネラル成分が通常の塩の何倍も含まれている凄い塩らしい…

 店主は、その塩と出会って和菓子屋を辞め、その塩を最大限に活かせるたこ焼き屋を始めたらしいのだ。


 そのたこ焼き屋の店内を見るとたこ焼きのメニューが壁に貼ってあり、メインの塩以外にもポン酢、醤油、ソース、チーズ等のメニューもあるようだ。


 私は、テイクアウトで雪塩たこ焼きを8個とソースたこ焼きを8個注文した。

 店主は低い声で言った「今から焼き始めるから、カウンター席で待ってろ!」

 私は、指示通りカウンター席で待つことにした…


 その男は、突然やって来た!

 がっちりした眼鏡をかけた男が店に入って来て私の隣の席に座った。

 男は、チーズたこ焼きとソースたこ焼きを注文した…

 そして、店主と私に人懐っこい感じで話し掛けてきた。男は、ナレーションの仕事をしているようで昨日、広島まで行ってCMの仕事をして来たことを話し始めた…

 そういえば、ちょっと低めでよくとおる声をしていた…広島での仕事は、2時間の予定だったが、スムーズに進み20分で終わったと子供のような満面の笑顔で話した。

 また、明日その男は、あるカラオケ大会の司会をすることも話した。私は、エッと思った。何故なら、そのカラオケ大会とは、私の馴染みの店が主催する会で私も出席予定であったからである。世の中は、狭いものである…


 それから、男は三ツ矢サイダーを注文した。たこ焼きも出来上がりカウンターに置かれた…もちろん、私のテイクアウトのたこ焼きもやって来た。

 私は、男に明日の再会を約束し、店を後にした…


 外は、相変わらずのポカポカ陽気で自転車を漕ぐのが気持ちよかった…



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