第6話 説明はいつまでも続く…
もうすぐ昼になるというのに、私は事務所にいた…
今日は、アポが入っていないので、一日事務作業をする予定だ。
私が事務所で昼を迎えるのは、非常に稀なことであった。
だから、事務所の近くにどんな飲食店があるのか、あまりよく知らない…
事務所の最寄駅周辺は、関西でも有数のラーメン激戦区というのは知っているが、あまりこの辺りでラーメン専門店に入ったことがない…先日行った完全無欠の塩ラーメンの「麺や ひなた」ぐらいである…
そこで、私はネットで調べてみた。すると、この地区の塩ラーメンランキングが載っており、「麺や ひなた」は2位であった…完全無欠の塩ラーメンより上のラーメンがあるのだ…
私は、1位の店に行くことに決めた…
12時を過ぎ、昼休憩になると私は駅に向かって歩き出した…駅の構内を抜けて駅の反対側へ行くとその店はすぐにあった…「創作らーめん Style林」である。
時間がちょうど昼時の一番混んでいる時間帯なので、行列を覚悟していたのだが、外には誰も並んでいなかった。ドアを開けるとすぐに券売機があり、私は塩ラーメンとミニ三色丼のセットのボタンを押した。
券売機の奥の店内を見ると一階にはカウンター席しかなかった…カウンター席には、客が3人ほどしか座っていなかった。私は、少し拍子抜けしたが、カウンターの中央辺りの席に座り、食券を店長らしき人物に渡した…
私は、テーブルに置いてあるコップに水を入れ、待った…
店長は、新人らしき店員にずっと店の作業についての説明をしている…昼時の一番忙しい時間帯に説明はずっと続いている…
数分後、少し小太りの店員が塩ラーメンを私の前に置いた。それを見て私は少しギョッとした。人気店である店にしては、盛り付けがかなり雑な感じであった…
そして、まずはスープを啜ってみた…ぬるい…これは…次に麺を口に運ぶ…ゆで方があまい…ラーメン全体の味の調和もとれていない…決して美味しいとは呼べなかった。それでも、私の主義として残さないと決めていたので食べ進めた…ラーメンを三分の二ほど食べた時に気が付いた…セットの三色丼が来ていないことに…
私は、店員を探した…店長は相変わらず新人に説明を続けていた…仕方なく、小太りの店員に三色丼が来ていないことを告げた…
小太りの店員は、食券を店長に確認に行った…どうやら、店長が食券を受け取った時にちゃんと伝達出来ていなかったようである…それでも、店長は私には何も言わず、新人に説明を続けていた…小太りの店員は、慌てて三色丼を作り持ってきた。
予想はしていたが、三色丼の味の方は至って普通であった…
食べ終わって、私が席を立つと小太りの店員だけが「ありがとうございました。」と言ったのであった…店長はというと相変わらず説明中であった。
私は思った…ネットの情報を鵜呑みにするべきではないと…
そして、「この店には、もう来ることはない。」と心でつぶやいた…
外に出て、見上げると空は今日も青かった…
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