第8話謎の贈り物 幸福の招き猫
私、佐々木麻里が不幸になってしまったのは、小学3年の夏の事であった
夏休みに入り、ラジオ体操へと眠たい体を母に起こされて近所の公園へ行き、終わって帰り道の事であった。
クラスメイトの俊哉が前を歩き、私は後ろでオロオロと体を揺らして歩いていた
俊哉がなにか言ったが、全く気にしておらず、嫌な感触が足に当たりやってしまったと後悔した
犬のう〇こを踏んでしまったのだ
お気にいりの靴が汚れ、前にいた俊哉には笑われてしまった
9月になって、新学期が始まると俊哉が広めたのか、男子達の私の呼び名は、う〇こマンになっていた
馬鹿な男子達、マンは男を現すのだから、そこはウーマンだろうと突っ込みたくなったが、それでもイラつく
あれから、余り良い人生を過ごしていない私は、20代も後半になり、周りの結婚ダッシュにちょっとばかり焦っていた
「子供欲しいな」
とある深夜に、ドンドンドンとドアが何度もなる
不審者か何かと思っていると、「夜分遅くすいません。ここは佐々木麻里様のお宅ですか?」と訪ねられ、余りの恐怖に布団から出られず、ジッとドアを見つめていました
「佐々木麻里様、あなたにお届け物があります、これは、あなた様が今まで不幸でこられた日々を幸せに過ごせる品でございます。
ただし、注意事項だけはご確認ください。それだけ守れれば幸せな日々が老後までずっと幸せに続いていくでしょう
もし、怪しいと思われましたら、その場で捨てても構いません。
それでは素敵な人生を・・・」
ガタンッとポストに何か入ったと思うと、気配は消えてしまった。
一人暮らしのアパートでの怪現象に、朝まで布団から出ることはなかった
朝、あれは夢だと自分に思わせながらポストの中を見ると、封筒が入っていた
あれは夢ではなかったのだ
封筒を開けると、紙で作られな招き猫と説明書と注意事項がかかれてある紙があった
説明書
この招き猫に一日300円入れ、願い事を書いた紙をお腹の部分貼ると、その日に願い事が叶うとの事であった
注意事項は、
一日300円だけ入れること
願い事は一日のみ有効、継続はできない
人を蘇らせることはできない
それだけであった
人の蘇りか、誰も生き返らせたい人なんていない
「胡散臭いな、でもやってみよっと」
(紙に付箋が沢山欲しい)
これくらいな、何の問題ないよね
佐々木麻里は、そう書いて招き猫に貼ると、会社に出掛けるのであった。
何もおこらない、静かな一日のはずだっだ。
会社に届いたダンボール箱は、付箋が満ぱいに詰められた状態で私のディスクに置かれてあった
宛先のないダンボールに、周りは不気味がっていたが、私は別の意味で驚いていた
あの招き猫は、本物だったのだ
それに、沢山の付箋は、私の好みのモノばかりで、素直に嬉しかった
その日の内に使い、パソコンや手帳に気に入った付箋を貼り付けると、ちょっと幸せになっていた
だが、一日がたち付箋達は全て消えてしまっていた。注意事項に書かれていたとおり 一日の効果しかないようだ
それからは、一日で使えるだけの金を書いて招き猫に貼ることにした
欲しいときに、欲しいモノしたいことがどれだけ、幸せかたまらなく実感してしまう。どんなことでも書いていたが、やっと決心して、あることを書いた
家族が欲しい
次の日は、休みであった
私の前に3才ほどの子供と、調理をしている男性がいた
「壮ちゃん?」
私は、漫画にのっていた推しメンの主人公の名をつけ、旦那には(拓哉)私の名が、木村だからつけてみた
彼らとの一日は楽しく過ぎていった
私は、今日の思い出を残すために、携帯で写真を撮った
次の日、誰もいない一日が始まる。ただ、彼らとの思い出は写真の中にある
幸せだった一日を、何度も見て楽しんでいた
それからは、毎週休日の時だけ、家族ごっこをやっていた
一年ずつ彼らには年をとってもらい、半年後には、とうとう壮も結婚することになった
綺麗な女性との結婚に涙が出てしまう
一年後には孫も成人になっていて、恋人を私に紹介すると言うのだ。その女性のお腹には、新しい命が授かっており、二人は幸せそうであった。
曾孫の誕生になにか気持ちが揺らいでしまい、家族ごっこをするのをやめた
恋人が欲しいと感じてしまった
孫の幸せそうな姿に、私は本当の家族が欲しくなった
会社の男性に好きな人はいたが、私は諦めていた。でも面と向かって彼に告白をしてみた。
招き猫に明日してと書いて、彼に告白をしたのだ。彼からの答えはダメだった
災厄な一日であるが、別にかまわない
なぜなら、今日体験しているのは明日の自分だからだ。どんなことが起きても平気なのである
でも、フラれる事がわかっているとはいえ、やっぱり少しは傷つきはしていた
すると、私の後輩の男性が、「先輩、大丈夫ですか?」と尋ねてくるので、「そう見える」と、怖い顔で睨み付けた
「やだな、可愛い顔が台無しですよ」
「なに、冗談言っているの」
後輩の彼は私に気があるのか、ちょくちょくちょっかいを出してくるのだが、私にはその気がない
だが、明日の後輩君は、仕事終わりに私を待っていて、「今日、ご飯行きません?」と尋ねるのであった
「いいえ、行きません」
私はキッパリ断ると、彼は寂しそうに帰って行った。
朝、私は男性への告白をやめて、また、静かに一日を過ごしていた
その日の帰り、後輩君が会社の入口前で待っていたことに、ビックリした。
彼は、どちらにしろ私を食事に誘うつもりだったのだ
私は、彼への返事にNOと応え、彼の落ち込んだ姿を見て帰るのであった
次の日、後輩君は休んでいた。昼過ぎ後輩君が事故で死んだことをしる
私は絶望した、彼の誘いにのっていれば、後輩君が死ぬことはなかったのだ
私は、一日前に戻してと招き猫に頼むと、その日の彼を事故から助けることに成功した
その日の夜、ジリジリジリと鳴り響くベルが聴こえた
私のベッドの前に、黒い電話が置かれてあった、その電話に出ると、あのドアを叩いた人物と同じ声が聞こえてきた
「佐々木麻里様、あなたは注意事項に書かれた、死者の蘇生を行いましたね。」
「しっしかし、」
「言い訳は無しです、あなたは罰を与えねばなりません。彼の命はその日の夜まで、だが、次の日には死者になり、周りの人の記憶に矛盾ができてしまう
あなたは、それほどの重罪を犯したのです」
「そっそんなの・・・いや」
・・・・・・・・・・・・・・・・
朝がきた、私は目を覚ました
見知らぬ天井、見知らぬソファに寝ていた私は、トイレを探した
トイレを終え鏡をみて驚いた。後輩君の姿が私の前に、いや、鏡に中に写っていた
私が後輩君になってしまった。
体に着いた赤い血が、あまりにも臭い
彼(私)は誰かを殺したのだろうか?
この体をシャワーで洗い流そうと、浴槽に入ると、私の血に染まった体が置かれてあった
彼の血は私のであった
謎の贈り物 西田 正歩 @hotarunohaka
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