第2章;陽明館高校eスポーツ部の部員になりました

9話 この部って、ハイスペックな人多くね?


初夏の時期が終わり、時はいよいよ梅雨真っただ中を迎える。

この頃の天気は梅雨で崩れるのかと思いきや実際そうでもなく、6月中旬だというのに湿り気があまりなくて過ごしやすい。

学校全体を大きな森が囲っていてジメジメするのかと思ってせっかくシャツの替え何枚も買っておいたのにこれかよ・・・と、財布のヒモはもう少しきつくしておこうと決めた時もあったが今はそんなのどうでもいい。

俺こと飯田知人は今、とある切実な願いを必死に届けていた・・・

それは、




「クーラー早く直ってくれッ・・・・」




ここは陽明館高等学校eスポーツ部の部室内 ―――

ただいまこの部屋のクーラー、なぜかぶっ壊れてしまった。

・・・いや、正確に言うと『ぶっ壊れて』ではない、『ぶっ壊して』である。

えッ、誰がやったのって?いやそんなの決まってんじゃん


――― この私です。



「飯田、元はと言えばお前が設定温度下げ過ぎたからじゃないか・・・このクーラーは結構古いと言っていただろう・・・」


というのは胸元汗ばむ松尾先生。なんかちょっとエロい・・・


「仕方ないっすよ・・なんで今年の梅雨はこんなに暑いんですか、ですよ・・・」


今年の梅雨はなぜここまで暑いんだってほどの異常気象は、もうすでに学校にまでも侵食を始めている。おそらく異常な暑さで古いクーラーがおかしくなってしまったのだろう。壊れるタイミングが知人の温度変更時と重なったと考えられる。

しかし本当に暑い・・・部屋の温度計は29度となっている。



「失礼します。あ、ぼっしーくんに先生、いらしてたんですか。」


と、そこへ麗加が部室に入ってきた。しかし麗加、制服がなんかラフで涼し気のような気が・・・


「・・・麗加、なんでお前夏服なんだ?まだ衣替えまだだったろ?」


「違うわよ?確か昨日のホームルームで衣替えの日が早まったのを聞いていなかったのかしら?」


「え、ホームルーム?はッ、誰があんな退屈なの聞いてるかってんだ!俺んとこの担任は話長くて聞いてらんねーよ。」


「・・・そう、でもそれは違う場所で言うべきだったわね。」


「へ?・・・」


知人がゆっくり首を曲げた左となりには、ゴゴゴ雰囲気を出す『鬼教師』の姿が。


(あ、やべ。そういえば担任この人だった・・・)


「いいだぁ~・・・!!!!!」


「いやウソですよ ―――

「私だってなぁ!!あんな長く話したくはないんだ!!でも教頭がやれって職員会議でうるさいから!!必死に話考えて話してるんだよ!!!私だってホントはいやなんだよぉぉ~~~!!!!」


・・・・・あ、なんかすいません

てか口調が飲み屋にいるおっさんの愚痴ですよ?先生まだ27歳なのに・・・


「・・・次回からはちゃんと聞いてあげなさいよ?」


「ま、そうするわ・・・」


麗加も麗加で『聞いてあげなさいよ』っていうのは少しどうかと思うけどな・・・




「にしてもこの部屋はあついわね・・・」


「あぁ、こんな時にあの子がいてくれればなぁ・・・」


「確かに彼女はこんな時こそ問題を解決してくれそうですね。今は仕事が終わってないといってしばらく出ていませんが・・・」


「あぁ、あの子はこういう道の天才だからな。来て欲しいものだ。」


何やら二人とも知人が多分知らないであろう人について、頼む来てくれと嘆願しているようだが・・・

・・・あ、やっぱり知人知らなかったみたい


「・・・あの~、さっきから『あの子』とか『彼女』とか・・・一体誰ですか?」


「ん?あぁ、飯田は確か会っていなかったな。まぁ伝えておこう、彼女はこの部のもう一人の部員で名前はs ―――



先生がその人物の名前を言いかけた瞬間にバタンッと部室の扉が開き、そしてとある少女が中へ勢いよく入ってきた。



ッ!!!


「さのめみすずですッ!!高校二年生のC組13番ですッ!!」



小学生みたいな声が大音量で部室内に響いたけど、正直ビクッってなって全然聞いてなかったわ。


「・・・飯田、お前『小学生みたいな声が大音量で部室内に響いたけど、正直ビクッってなって全然聞いてなかったわ。』みたいな顔してるな。」


え、なんで一字一句間違ってないの?うわこわッ・・


「まぁ改めて・・・この子は佐之味さのめ美鈴みすず、君と同じ高校二年生だ。」


「そう、私は佐之味美鈴!みんなこの苗字間違って『さのあじ』って読むけど違うから!『さのめ』だから!!」


へぇ~と思ってスマホのキーボードで『さのめ』と打つと、出てきたのは『佐野目』という変換だけ。


「あ、そこで『さのめ』って打っても『佐之味』は出てこないよ。打つ時は『さのあじ』ってやんないと。」


って言ったから『さのあじ』で文字打ったけど出てきたのは『差の味』ですけど・・・


「・・・まぁ名前はこれで覚えただろう。それで佐之味、あっちの方はもう片付いたのか?」


「さとちゃん久しぶり~!!元気だった!?」

「さとちゃん言うなッ!!!////」


「あははごめんごめん!!・・・であっちの方はもう片付けてきたよ。だからしばらくはこっちにいられるかな。」


「おぉ、そうか・・・」


「・・・なになにさとちゃん!!ひょっとしてすずがいなくて寂しかったの!?」


「・・・あぁそうだ。」


「えぇ~~~!!!ホントだったの~~!?もう、さとちゃんかw ―――

「早くこのクーラーを直してくれ、頼む。」

「えぇ~~!!??ホントは寂しかったんでしょ~~!!??」





♢ ♢ ♢ ♢ ♢


「・・・どうやらフィルターにホコリが溜まってるね。これじゃエラー起こしても仕方ないよ~。」


「そうだったのか。してそれはまだ使えそうか?」


「え~とねぇ・・・うん、使えそうだよ。」


「そうか。では佐之味、どうか直してくれ。」


「はいはい~」


そうして佐之味美鈴は脚立にまたがってフィルター取り外しと掃除を行っている。

・・・でもそんな不具合よくわかるなぁ

まぁ『フィルターにゴミが溜まってる』って誰でも気づくような気がするけど


「・・・ところで先生、さっきの『あっち』って何ですか?ちょっと気になって・・・」


「ん?あ、あぁ、言ってなかったな。では教えよう。」


「はい、お願いします。」



「佐之味美鈴はな、実はな・・・ ―――


「」ゴクリ







「株式会社『院天堂』の契約社員なんだ。」





株式会社『院天堂』 ―――

主に玩具やコンピュータ上のゲームアプリやソフトの開発・製造・販売を行っている、現代の3代メディア企業の一つである。

この会社の一番人気はやはり『院天堂Sowitch』。ユニークなデザインにコントローラを左右に装備し、一人プレイだけでなく二人での共同プレイも可能にした画期的なゲーム機として、今大人気沸騰中である。


つくづくここの部員たちはハイスペックだなぁ~と思っていた。方や大人気ゲームの開発責任者、方や前年度の全国高校Eスポーツ選手権準優勝者、そして顧問は会社と契約しているプロゲーマー・・・(ちなみに二番目とは西京くんです!大会の日でゲームしてるときに聞きました!)

すげぇなと思っていたが、まさか『院天堂の契約社員』まで行くとは思っていなかったわ


はい、恒例の『アレ』行きまーす





「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!????」



いや待てって!!

この年であの一流企業と契約とか普通出来るワケねーだろ!!??どんだけスペック高いんだよ!!


「佐之味は高度な機械工学知識と4つのプログラミング言語を習得しているほどの能力を持っているんだ。その箇所が院天堂に認められて、今は確かゲームシステム管理をやっているのだったな?」


「うん、今回のやつはあのOREがsowitch版で出た時に起こった全エラーを修正するものだったから結構かかっちゃったけどね。あれ結構凝ったプログラムだからめんどくさくて・・・」


「めんどくさくて悪かったわね。・・・でも確かにSowitch版は合わない所が多かったわね。」


「まぁでもちょくちょくれいちゃん(=麗加)から連絡もらえたのは嬉しかったよ!!ありがとう!!」


「そ、そう・・・別に私はそんなつもりではないのだけれど・・・////」


「だから君のことは知ってるよ!ぼっしーって呼べばいいかな?宜しくね!」


「あ、あぁ・・・宜しくな。」




このeスポーツ部に入ってから、また驚愕な事実を知ってしまった。

まさか同じ学年に契約社員がいたなんて・・・いや、これ普通ならめちゃめちゃありえないからねッ!?

しかしこんなに凄いヤツと一緒の部活に入ってるって、なんか得した気分だ。

得した気分がてらに、ちょっと気になってることを聞いてみよう。



「あのさ、佐之味さんは・・・ ―――

「あぁあぁ・・・すずのことは『美鈴』でいいよ!れいちゃんだってすずのことは『すずちゃん』って呼ぶんだから!」


さっき君のこと『かのじょ』って呼んでたよ?


「・・・////」


「まぁまぁ飯田、明石は結構内気な子なんだ。だからこういうのは少し恥ずかしいんだよ。な、明石?」

「先生は少しお黙りになってください。」シレッ・・・

「えッ・・・」


照れ顔から一気に冷めた顔になる様に、ここまで衝撃を受けることがあっただろうか・・・

・・・いやないッ!!

先生も変わりように少しショック受けてるし・・・




では、改めて


「・・・じゃあ、美鈴。」


「どうしたのぼっしー!」


知人は、一番気になっているあることを聞いてみた。





「・・・お前って、OREやってるか?」





さぁ、答えは・・・!?


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