5話 プロゲーマーへ、第一歩!
「ORE全国大会にAKSメディアカンパニー代表として、この大会に出場してくれないかしら?」
・・・
「えぇぇぇぇぇ~~~~~!!!!????」(本日二回目)
麗加は自分のカバンから何かの広告チラシのようなものを取り出して、知人にそれを見せた。
そのチラシの大太字を見ると、確かにそこには『全国ORE対戦大会』という文字列が並べられている。
でもえッ、これに出ろってこと?
「確かこの大会、色々な企業がスポンサーとして付いている屈指のプロゲーマーたちが参加する大会だったな。賞金は1000万円という大きな規模だそうだ。プロゲーマーになるためには一度出ておいた方がいいと思うぞ飯田?」
「えッ、飯田くんプロゲーマーになりたいの?ならこの大会程美味しい経験が出来るチャンスはないと思うわ。本物のプロゲーマーたちと一戦してみてはいかがかしら?」
「ッ・・・!?」
「あぁそうだな!確かにこんなチャンスは滅多にないかもな!リスクのない状況下だから思いっきりeスポーツを体験できる貴重なチャンスだぞ?」
「ま、まぁ先生・・・リスクは少なからずあるのですが・・・」
「でも飯田、これは今後のゲームの腕上げに大きく響くものだと思うぞ?どうする?」
「・・・」
確かに俺の夢はプロゲーマーだ。
しかしその目標は漠然としたもので、はっきり言ってそこまで深く考えたことも無かった。
正直言ってプロゲーマーというものが見え始めたのもこの部を見てからだ。
しかし今、プロゲーマーを『考える』チャンスが舞い降りてきているんだッ・・・!!!
周りは強敵ばかりだけど・・・
――― やってみたいッ!!
「・・・麗加さん、俺出るよ。その大会に出るよ!」
「本当!?ならこのエントリー用紙に名前とチーム名・・・は私が書くからとりあえず名前だけ書いてくれる?」
言われるままに名前をフルネームで、結構高そうな紙を使ったこの申込用紙に書き込んでいく。
「えっと、いいだぁ・・・この下の名前は何というのかしら?」
「あ、これで『ともひと』って読むんだ。」
中学の頃はこの『知人』って名前をみんな『ちじん』って読んでいたせいで、中学の頃のあだ名が『知り合いくん』だったことは心の奥に閉まっておこう・・・
どっかの先生の二の前になってしまう・・・
「ん、ありがとう飯田くん。・・・で、西京くんは本当に出ないのかしら?」
「ん~、だってそれ開始時間が朝9時じゃん~。絶対起きれない~・・・」
おいおい部長さん案外クソみたいな理由で欠場なさるのですね。
「・・・まぁいいわ。では飯田くんと松尾先生、当日は宜しくお願いします。」
「えッ?先生も出るんすか?」
「ん?あぁ、私も出るぞ。」
「え、え~・・・」マジデ?
「なッ、なんだ飯田ッ!?なんだその眼はッ!?私だって大会出たいんだぞ!?」
いや、この人戦力になるのかなーっていう目で見てたんですけど。
「大丈夫よ飯田くん、先生はこちらの大会に出てもらうことになっているから。」
そして麗加が見せてきた用紙は、『AKS主催 BL選手権 ~ホ〇王に、俺はなるッ!!~』。
あ、なるほどこっちか。
「なッ!!明石それまで見せなくていいッ!!!////」
「まぁさとちゃんはこの分野だと覚醒するからね~」
「もう言うなッ!!あとさとちゃんやめろッ!!///」
「ということで、開催は一週間後。場所は後日に伝えるわ。それまでに飯田くんはみっちり練習してよね。」
それからこの一週間、約半分の時間をOREに費やした。
家ではもちろんのこと、休み時間はトイレに籠ってひたすら練習。
放課後になってからはすぐに部室に駆け込み、eスポーツ部員(といってもこの時はずとあの二人だが)と先生の3人に通信対戦をしたりなど色々手伝ってもらい、遅い時で8時半くらいまでゲームをしていた日もあったくらいだ。
家に帰ってからは一人プレイで自分のスキルを上げたりなど・・・まぁ要するに頭の約半分はOREのことを考えた一週間となった。
片岡や松本はそんな俺を見て『ついにぼっしーもゲーム廃人になってしまったか・・・』と、結構な哀れみの目線で見られたのは置いておくとしよう。
「・・・結構飯田もスキルが上がって来ていたな。この調子ならどこまでいけると思う?」
大会の前日。知人を先に帰らせて、今部室に残っているのは麗加と松尾先生。麗加はOREの最終システムチェック、松尾先生は一応部活の顧問なので残っている。ちなみに快司は眠いとかで早く帰っていった。
「・・・私の予想ですと、結構いいところまで行けそうな気がします。」
「おぉそうか。結構順調みたいだな・・・ところで明石、君はなぜ飯田を勧誘したのだ?彼はORE上で何か目を惹くモノが
あったのか?」
「はい・・・たまたまシステムチェックで彼のアバターの戦歴を見ていた時に、こんな特徴を見つけたのです。」キテキテ
「ん?」
麗加はシステムチェックから知人の戦歴が載っているページを開くと、先生にそれを見せた。
「・・・ほう、なるほど。確かにこれは面白いな。」
「はい、これは一荒れありそうな気がします。面白い大会になりそうです・・・!!」
そして翌日。決戦の地は、まさかの東京ビックサイト。
「おぉ・・・ここでやるのか・・・!!??」
聞いたところによると、施設は全面貸し切りで観客は優に万を超える程の大会だそうだ。OREが全国に普及したのは約1年前だから、たった1年でここまでの影響力を持つゲームは滅多に無い。
今は最寄り駅の国際展示場駅の改札で、今は松尾先生と共に麗加の到着を待っている所だ。
でもお嬢様だから、やっぱ来るときはリムジンなのかな~・・・と思った矢先に、白いワンピースを身に纏った明石麗加が改札から出てきた。
さすが容姿端麗のお嬢様、白いワンピースがここまで似合うとは・・・!!!(スゲー)
「おぉ明石来たか。今回はリムジンではなかったのか?」
なんだよやっぱリムジン乗るのかい
「はい、たまには公共交通機関も良いかな、と。」
と、まさしくお嬢様が言いそうなテンプレ台詞を言いながら、集合時間の5分前に麗加は集合場所にやってきた。
「飯田くん、今日はプロゲーマーたちにとって『戦争』よ。覚悟は良いかしら?」
「ま、まぁッ?ダイジョブですけどッ?」
というように全然大丈夫でない受け答えをするところは、やっぱ俺だなと自分で実感する。
というもの緊張が大きすぎて、昨日はろくに眠ることが出来なかった飯田氏。
すると松尾先生、自分のバッグから何かを取り出す。
「・・・飯田、そんなときはコレでも飲んで気合注入だ!大丈夫ッ、私はこの日のために1ダース買ってあるから!!」
といって開いたバッグにあるのは、まぁ予想していたレッ〇ブル、マジで1ダース持ってきてるよ・・・
でも今日は何だか落ち着く感じが・・・
「ふぅ・・・」
「・・・落ち着いた?」
「・・・あぁ、でも先生それ1本貰ってもいいっすか?」
「えッ、ホントにいるのか・・・!?」
え、さっきの冗談だったの?
「ま、まぁ別にいいが・・・」ヒョイ
この人すげーな
一瞬で気まずい空気を作れるなんてもはや才能だよ
うわッ、しかもぬるい・・・
「が、ガンバレヨ・・・」
(わ、私の200円分の食料が・・・)グスン
しかし一旦会場内に入ってみると、改めて規模の大きさが身に沁み込んでくる。こんな場所でゲームをするのか・・・と、少し驚いたところもあったが、それも含めて何だか楽しみだ。
「でも飯田くん、先生。私は行く場所があるので、ここで失礼します。」
「あぁ。また後程な。」
「・・・麗加さん、どこに行くんすか?」
「あぁ、この大会の主催者はAKSメディアカンパニーだからな、おそらく開会式の壇上挨拶だろう。」
「な、なるほど・・・」
「・・・まぁそんなに固くなるな。楽しんでいけ。・・・おっと、では私はこっちだから。頑張れよ!」
「はい!さとちゃ「その名前で呼ぶなッ!!///」・・・先生!」
それから受付を済ませ、番号が書かれたベストを着て、所定の場所へ移動する。
・・・しかしさすがOREの全国大会だ、挑戦者の数が異常に多い。
だって俺の番号は987番だ。後ろにも結構いたから、計2000人くらいいるんじゃないか?
この人達のほぼ全員はスポンサー持ちのプロゲーマーらしいし、ヤベぇところに来ちまったぜッ!!
ちなみにAKS社のORE対戦部門代表は知人のみだが、他の企業は数人ずつ出してきているらしい。参加する企業はおよそ650社ほどだと、受付の用紙をチラ見して知った。
この大会は、まず一回戦はスコアタイムアタック。上位300人でまたタイムアタックを行い、そこからまた上位45人でタイムアタックを行い・・・など、合計5回戦まで同じで、最終的に5人に絞られる。
2000分の5・・・ファイナル進出の倍率は何と400倍ッ!!
全員のエントリーが終了したところで、開会声明としてAKS社長・明石亨と明石麗加が壇上に上がり、それぞれ5分程の声明を行った。
まぁ集中してたからあまり聞いてなかったけど。
そして・・・
「ではこれより一回戦を行います!!コントローラを手に持ち、開始準備をしてください!」
飯田知人、プロゲーマーへの第一歩が、今 ―――
「では第一回戦・・・ ――――
――― ゴングを鳴らす
「開始ッ!!!」
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