4話 eスポーツは、それはそれは驚きの連続で


――― 株式会社AKSメディアカンパニー


コンピュータ上の様々なアプリを開発し、今や情報メディア業界の重鎮まで上り詰めた超大企業である。日本全国に支社を50社以上も設けており、多くの企業を下請け会社に持つ。


明石麗加はAKS社長の第一令嬢、つまり名家の生まれのお嬢様なのだ。

容姿端麗で学業は優秀、他の分野においても劣る所など見つけるのが難しいほどの完璧令嬢がなぜこんな部活に・・・!!??



「飯田、こちらは明石麗加。同じ高校二年生だ・・・といってもおそらく知っているだろうがな。」


「え・・・なんで・・・!!??」


「明石、こちらはたった今この部に入部した飯田知人、こちらも高校二年生で君と同じだ。」


松尾先生の紹介と共に、あのあのあの超完璧美少女令嬢がこっちに来るッ・・・!!!!

大和撫子を軽く連想させる可憐な見た目のあの明石麗加が、俺の目の前にやってくるだと・・・!!??

信じられんッ!!!やべぇ~変なヤツだって思われたらどうしよ~・・・


「・・・君が飯田くんね。私は明石麗加・2年A組1番、よろしくね。君には一度会ってみたかったの。」


おぉ~~~近ヶヶ~~~!!!!

すげーいい匂いするんですけどッ!!!

えッ?今「会ってみたかったの。」って言いましたかッ!?言いましたよねッ!?


「あぁ明石、こいつがあの『ゲーム機没収神』ことぼっしーくんだ。」


「やはり飯田くんだったのですね、『ぼっしー』の方は。」


・・・ん?

なんか思ってたのと違くね?


「松尾先生がよく飯田くんから没収してきたゲーム機を見せてくれてて、結構レアなものがいくつもあったから・・・」


ハァ・・・なんと、

興味があったのは俺・・・じゃなくて、俺のゲーム機でした。

クソ!さとちゃんッ・・・!!何言ってくれてんだッ・・・!!


「ところで先生たちは何のゲームをプレイしていたのですか?」


「あぁ、これだよ。」


松尾先生はそう言って自分のスマホの画面を麗加に見せた。

画面は先程の通信対戦のスコア結果のページのまま、先に進まずそのままの状態だ。


「へ~、いかがでしt・・・あれッ・・」


ふと麗加、スマホの画面のどこかに気づいたのか、そのまま少しの間固まってしまった。

しかし何となくユーザ名に目が行っているような・・・


「・・・あ~それそこの飯田くんだよ~。確かれいちん気になってたでしょ~?」


「えッ、君があの『神格のグランブルー』なの・・・!?」


西京の言葉にかなり驚いたような表情を、麗加は知人の方に直で向けてくる。


「ま、まぁそうだけど・・・」




次の瞬間、明石麗加の表情が一気に咲いた。




「え~!!??君がそうだったの!?ブログ見てるよ!!へぇ~君が~!!」



ってすごく驚かれたんですけど

ま、まぁ別に・・・いやではないですけど・・・////

・・・てかさっきからこの人顔近い・・・///


「あッ、ごめんごめん・・・ついはしゃいじゃった・・・えへへ~///」



この部活に来てから、色々な意味でのイメージ崩壊が止まってくれないんだが。

鬼教師松尾の場合は、部活では恥ずかしがってる姿が可愛く見えるさとちゃん先生だし・・・

あの完璧令嬢に至ってはゲームではしゃぐわんぱくれいかちゃんだし・・・

ゲームは人を変えるってテレビで言ってたのはあながち間違いじゃないな、うん


「あれ、てことは明石さんもOREやってるの?」


「ま、まぁね・・・あと私のことは『麗加』でいいよ。」


「へぇ~何レベなの?ちょっと見せてよ~!」


まさかあの明石麗加までOREをやっていたなんて・・・!!OREというゲームはなんてすばらしいんだ!!

俺は心の中でそう叫んだ。明石麗加のレベルが気になって気になってしょうがない。


しかし麗加は自分のスマホではなく、なぜか部室内のパソコン一台を起動し始めたのだ。


「・・・何やってるの?」


「まぁ飯田、そのまま見ていろ。」


「せ、先生・・・?」



麗加がパソコンを起動してからおよそ2分が経った頃、


「・・・はい、これが私のだよ。」


麗加は今まで作業していたパソコンから離れ、知人を画面の前に誘導する。

あのお嬢様もOREをやっていたことがとにかく驚きで、しかも何だか嬉しくて。

まさかこんな接点があったなんて思っていなかったから・・・


しかし、その画面に表示されていたものは、



知人を、さらなる驚きへ導いた ――――








・・・え


なにコレ・・・いや、えッ?




「『オンライン・ルーン・イーター運営部』・・・!!??」




え?

ナニ、アカウント名に『運営部』って?

しかも鳥の絵がマークの某SNSの公式アカウントによくあるあのチェックマークもついてる・・・

え、どういうこと?


知人の頭は、驚きを通り越して混乱に陥る。

しかしその混乱から救い出すような先生の言葉で、再び驚きに戻ることになる。





「飯田いいか?明石は・・明石麗加は・・・ ―――







――― オンライン・ルーン・イーターの開発責任者だ ――――






♢ ♢ ♢ ♢ ♢


・・・



「えぇぇぇぇぇ~~~~~!!!!????」



今月一の俺の大声が、小さめの部室に何度もこだました瞬間であった。


「ま、マジでッ!?これ、麗加さんが作ったものなのかッ!?」


「ま、まぁね・・・最近のお父さんの会社でゲームに力を入れていると聞いて、そのプレゼン会議で私の企画が通ったことがきっかけなの。それでお父さんの会社がスポンサーになって、OREが出来たの。」


えぇぇぇぇぇ!!!!???


「あー、だから飯田くんがOREに費やした総課金16800円の半分は、私の口座に入っているのよ。」


えぇぇぇぇぇ!!!!???


「飯田くんのプレイ時間もスコアもアイテム一覧も、調べれば全部分かるシステムもあるからちょくちょく覗いていたのだけれど・・・ごめんねッ」テヘツ


お、かわいい・・・

じゃなくてッ!!


「こ、これッ、これ作ったのかッ!?相当なプログラム仕込まれてそうだぞッ!?まさか全部・・・!?」


「あ、あぁッ!!さすがに全部ではないわ!!・・・でもグラフィック案を描いたのは全部私よ。だから君のアバターを描いたのは私ということになるわね。」


「えッこれ描いたの麗加さんッ!?めちゃめちゃクオリティー高いぞッ!??」


「あ、ありがとう・・・///」


「・・・まぁ飯田、つまりはこういうことだ。」


「僕はれいちんの作ったゲームは操作多すぎて苦手なんだけどね~。」



す、すげぇ・・・

このゲームの始まりがまさかの社長令嬢だなんて・・・

いやすげーよ普通にすげーよマジですげーよ!!!


「そうだ飯田、要するに明石のメインアカウントにレベルはない。ちなみにこのパソコンはORE内で起こったエラーを修復するためのプログラムがインストールされている。だから使う時は慎重にお願いしたい。」


いやそんなに大事な機器をこんな学校なんかに・・・いいんですか開発者さん?


「まぁメイン機器は本社の方にあるから、いざとなればそちらを使う形になるのだけれど・・・」


今日の出来事はあまりにも多すぎて、知人はもうお腹いっぱいだ。

朝までORE対戦、昼間は麻痺した手の回復に専念(という建前で6限まで爆睡)、そして西京(とまぁおまけ一人)との対戦、そしてORE開発者の出現・・・

今日はまだ夜が残っているというのにもう3日ほど経ったかのような出来事の流出。


そしてさらにその驚きの濁流は、


まだまだ終わらない ――――






「ねぇ飯田くん、ちょっといいかしら?」


麗加は急に改まった口調と態度でこちらの方を向いた。何か重大なことを告げるのか、表情は少し緊迫しているような・・・

そしてその勘は、見事に的中した。

その内容とは、







「ORE全国大会にAKSメディアカンパニー代表として、この大会に出場してくれないかしら?」




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