2話 ゲームが競技ッ!?


「へ?いーすぽーつ?なんすかそれ?」


「ほう、ゲーム機没収神の君でも知らなかったとは驚きだよ。」


「そんなにポピュラーなヤツなんですか?その『イースポーツ』って。」


「『eスポーツ』な。まぁゲーマーの間では有名だな。まぁ簡単にいうと飯田がよくやってるゲームで相手と競い合いをするんだ。大会まであるんだぞ?」


「ゲームで競い合い・・・?」


「あぁ、競い合いだ。ここではゲームは競技として認識される。大会で勝てば賞金だってあるんだぞ。」


「ゲームをするだけで賞金・・・!?」


「あぁ。たしか飯田はプロゲーマーになりたいと前に言っていたが、そのプロゲーマーの生計の大半はこの賞金なんだぞ。」


「・・・!!」


「大会で勝てば賞金がもらえ、そこでの成績が良ければ企業が飯田のスポンサーになってくれる。まぁプロゲーマーはこうやって生活してるんだ、と思う。」


「おぉ・・・!」


「どうだ?ちょっと覗いては見ないか?」



知人は、正直惹かれていた。

ゲームをするだけで賞金がもらえ、ゲームをしてるだけでも生活ができる・・・

その事実が何度も頭をよぎる知人にとって、『行かない』という選択肢はいとも簡単に消されてしまった。



「はいッ、行きます!!」




内容のままに、知人は見学を受け入れたのだ。








しかしこの時、知人はまだ知らなかった



――― eスポーツの世界が、どれだけ困難な競技であるのかを









「失礼するぞ。今日は見学部員を連れてきた。」


「し、失礼しま~す・・・」


中は少し狭い部屋にコンピュータ機器が埋め尽くされた内装。まさにゲームをするための空間。


(クソつまんない学校にこんなオアシスがあったなんてッ・・・!!)


「おい西京、見学者が来たぞー」ユサユサ


松尾先生は手前のコンピュータでヘッドホンをしながらコントローラを熱く握ってプレイする、一人の生徒の方をゆさゆさしながら呼びかけている。


「・・・ん、どうしましたぁ?」カパ・・


呼びかけに気づきヘッドホンを首元に降ろし、椅子を回転させながらこちらを振り向いたのは・・・


「飯田紹介するぞ。我がeスポーツ部の部長・西京さいきょう快司かいじ、お前と同じ高校2年生だ。」


「はーい、僕は西京でーす。よろしくー」


・・・なんか適当なあいさつッ


「・・・先生、もう僕プレイ戻っていいですかー?」


「あぁ、呼び止めて済まなかったな。」


すると西京はコンピュータの画面に戻りヘッドホンを装着しなおすと、『Pause』ボタンをクリックしてプレイを続行し始めた。


「・・・どうだ飯田?」


「え?」


え?

ど、どうだといわれましても~・・・

・・・感想が出てきません。


「・・・まぁ西京はぱっと見だと、だらけているように見えるがゲームの腕はかなりのものだ。」


「へ、へぇ~・・」


「・・・ん~、なんか『え、そうなの?(笑)』みたいな目だね~。」


ふと西京がこちらに振り向いて話しかけてきた。


「・・・そうだ!なぁ西京、飯田と対戦したらどうだ?たしか西京もOREやっていただろ?」


「え~僕あれ結構苦手なんですけど・・・」


「何を言う。マグレイオスなんてワンパンだったじゃないか。」

(※マグレイオス・・・ORE内に出てくる第3章のラストボス。中々強く、高ランカーでも少し手こずる程の相手に当たる。)


「ッ!??」


ま、マグレイオスをワンパンッ・・・!?

(※ワンパン・・・相手を一撃で倒すこと。)

そんなッ、俺でもワンパンは無理だぞ・・・!!


「どうだ飯田、ちょっと面白い相手だろ?お前も手合わせしたくはないか?」


「・・・はいッ、ちょっと見てみたいです。」


「え~じゃあ一回だけね~」





西京もパソコンから離れて自分のスマホを起動、OREを起動して通信対戦のコマンドを選択。


「ん~、受け入れ準備出来たよ~。」


「あ、あぁ。」


(あいつら以外と通信対戦するなんて初めてだな・・・)


知人もルームのIDを入力し、西京が作ったルームに入場する。


「・・・あれ、何で先生も入ってるんですか~?」


「え?」


スマホの画面に目線を下ろすと、確かにメンバーの一人に『アルフィ@天翔ける剣ほすぃー!』の文字が。

いやこの名前ダセーよ恥ずかしくないのかこの先生はッ!

しかも『天翔ける剣』はもう手に入らねーよ!



「ほう、飯田は『神格のグランブルー』という名前かぁ。個性があっていいな。」


いやアンタに言われたくねーよ


「よし西京、準備出来てるぞ。」


「・・・」


「・・・ん、どうした西京?」


「・・・」


(『神格のグランブルー』・・・どこかで聞いたことあるな~・・・)


「・・・ん、さとちゃんゴメンね~。じゃあ入るよ~。」


「・・・西京、頼むから『さとちゃん』はやめてくれ・・・///」


「え、何でですか?」


「え~っとね、『さとちゃん』っていうのは松尾先生のあだ名なんだよ~。」


「あだ名?」


「うん、でもそのあだ名ってね~・・・実は先生自身で考えt ――――

「わ~~!!!わ~~!!」ババッ


「うえッ、先生!?」


「や、やめろ西京!恥ずか死ぬ・・・/////」


「んま、そういうこと~」



実をいうとこの英語教師・松尾里音さとね、27歳。

この高校の生徒であった頃に自分で考えたあだ名を自分自身で使い、みんなに広めようとしたという黒歴史が存在するのだ。

つい最近に松尾先生の友人がこの部屋に訪ねてきた時に暴露したことがきっかけで、西京は松尾先生をいじるようになったのだ。

はい、以上。


「じゃ、じゃあッ!!///切り替えてやるぞ!!」アセアセ


「さとちゃん動揺しすぎ~」

「さとちゃん言うなッ!!///」






ゲーム開始 ―――


OREの通信対戦では個人で作ったアバター同士を戦わせるものと、同じモンスターを戦わせて討伐した時のタイムを競うものの二つがあるが、今回は後方で対戦する。


相手となるモンスターは、今回は経験値が多いラグナロク2体だ。



「(ラグナロクは週末で狩りまくった実績があるんだ!レベル127の名に懸けて一位になってやるッ!!)」


知人の両手は、しだいに熱を出していく。しだいにスマホを持つ腕に力も入る入る・・・


「・・・」チラッ


対する西京は、何もないかのように淡々と作業をこなしていく。

そしてもう一人は・・・


「くッ!なッ、このッ・・・あ、あぁ!なんでそこから出てくるんだッ・・・!!」


この有り様である。あらあら声まで出ちゃってるよ。


「(・・・ホントさとちゃんにぎやかだね~)」



そして3人全ての討伐が完了し、次はスコア表示へ。



「おぉ飯田、討伐時間が48秒27とは・・・!!伊達にレベル127じゃないな!」


と、1分35秒49の人に言われても・・・正直嬉しくない

そして気になる西京快司のスコアは・・・



「・・・えッ!!??」



知人は、そのスコアを見て驚愕する ―――







「討伐タイム、16秒07・・・!!??」




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