番外編 送り主はだあれ? 後編

 「遅れてすみません!!…ところで、何の用事ですか?」


夕丘が遅れて駆け込んで来た。よし、これで全員だ。


「よし、揃ったな。ああ…それなんだけど…」


サキコが例の手紙を皆の前に出した。


「これに心当たりあるヤツ…いるか?」


しかし、三人とも何も言わなかった。


「この手紙がね、私の机の中に入ってたの。でも、送り主が書いてなくて探しているの。佐藤ちゃんは心当たり無い?」


すると、やっと佐藤が口を出した。


「そうだったんだ。でも私は推しのアイドルがいるから、彼氏をつくるつもりは無いし、ラブレターなんかも、推し以外には書かないかなあ…」


「そうか…じゃあ次は夕丘、お前はどうなんだ?」


「私は…まず、逢崎先輩の事、苦手ですし…そもそも、そんな物書いてたら彼氏に怒られちゃいますし…」


「ええっ!?お前、俺の事苦手だったのか!?ってか彼氏いたのか!?」


正直、ショックだった。嫌いじゃなかったんだけどなあ…


「そっかぁ、夕丘ちゃんも違うんだね。って事は…」


「さあ、俺達が怪しいと思ったのはお前が最後だ!園咲!!どうなんだ!?」


俺は決め台詞のつもりで気取って言ってみたが、


「ねえ、私達の疑いはもう晴れたんだよね?」


変な所で邪魔が入った。


「お、おう…」


「なら、もう帰ってもいいですか…?」


「あ、ああ。急に引き止めて…あと疑ったりしてごめんな。」


「別にいいですよ。まあ疑われたのはびっくりしましたけど…」


そう言って二人は帰った。


「…さて。もう一回きくぞ。これを書いたのはお前か?」


暫くして園咲は口を開いた。


「…そうよ。それは私が書いたの。」


「おおっ!?って事は、やったね!たっちゃん!!」


「ああ…ありがとな。これ、お前が書いてくれたんだな…」


俺とさあちゃんは少し安心したが、しかしそれも束の間だった。


「はあ!?それは違うわよ!その手紙はサキコちゃんの為に書いたのよ!!」


「えっええっ!?私!?」


「お、俺じゃなくてさあちゃん宛…?」


「そうよ。サキコちゃん。貴女の為よ。私はずっと貴女と友達になりたかった。結果的にこんな形になってしまって悪いけれど、貴女の明るさを私にも分けてもらえないかしら?その為に…私が側に居ては…邪魔かしら?…サキコちゃん、もう一度きくけれど私と友達になってくれる…?」


「お前なあ!?ちょっと落ち着けよ!さあちゃん怖がってるだろ!?」


「たっちゃん…」


「さあちゃんの事が本気で好きなら、本人が困るような事するなよ!?そうだろ!?」


「…」


「…好きっていう気持ちを一方的に押しつけるんじゃなくて、相手の事を考えながら伝えていけばいいんじゃないか?」


「…そうね。私、サキコちゃんの事、何も考えてなかったわ。サキコちゃん、ごめんなさい。」


「もういいよw確かにちょっと怖かったけど。でも…わかってくれたんでしょ?」


「ええ。ありがとう。」


「よし。めでたしめでたしっと。これからも仲良くやってこうぜ。」


「…貴方には負けないから。」


「え?」


「だーかーらー、貴方にはサキコちゃんは渡さないから!!」


そう言って、園咲は走り去って行った。


「マジかよ…これってあれか?宣戦布告ってやつか?」


「多分そうじゃない?wははっwこれからまた学校生活が楽しくなりそうだね!!」


「…そうだな!!」


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