番外編 送り主はだあれ? 前編

 ある日の放課後。俺こと逢崎タケヒコはとっとと帰り支度をしていた。というのも今日は委員会でただでさえ終わりが遅いのだから、なるべく早めに帰りたかったのさ。


だが、そうもいかなかった。


「あれ、たっちゃんだ。今から帰るの?」


「あ、さあちゃん!そうそう、さっきまで委員会だったんだ。」


「そうなんだ。私も今帰るところ。」


その時、パサッ… と音がした。プリントでも落としたのだろうか。


「ん?何これ… ?手紙… ?誰からだろ… ?」


「どうしたんだ?」


「見てこれ。私の机の中に入ってたんだけど… なになに、『明るくて素敵な貴方の事が大好きです。いつも側に居たい位、好きで好きで… 』って、どう見ても私宛じゃないよね!?こんな可愛い封筒使ってるんだし、女の子からかな?はっ… !わかった!」


「は?何がわかったんだよ?」


「ラブレターだよラブレター!!平安時代から続く、想い人に書く愛の詰まった手紙!!最近ではもう死語かと思っていたけど、未だに書く人がいたなんて!!」


「 いや、偏見が凄いな!?大体さ、それがラブレターだとして、一体誰宛なんだよ… ?」


「私もそう思ったんだけど… 」


見るとその手紙にはなんと、宛名がなかった。

しかし、俺はなんとなく気がついていた。


「わかった!これ、俺宛のラブレターだ!!」


「は?」


「だーかーらー、これ俺宛のラブレターだって!?さあちゃんの机には間違って入れちゃったんだよ!」


「ええー!?そんな訳……あるかも。」


「だろ?いやー俺もついにラブレター貰っちゃったかぁ…やっぱりこういうのは嬉しいなあー」


「でもたっちゃん、送り主がわからなきゃ返事できないよ?」


有頂天になっていた俺は、さあちゃんの声で気を取り戻した。


「確かにそうだな…さあちゃん、誰か心当たりあるか?」


「…一人だけあるかも。ほら、たっちゃんと同じ委員会の後輩の子!」


「ああ…夕丘の事か。」


「そうそう、よくたっちゃんと話してるの見かけるし…」


「なるほど…あ、俺も心当たりあるわ。ほら…あの、転校してきたやついるじゃん?」


「あー…園咲ちゃんね。確かに、たっちゃんと話してる時凄く楽しそうにしてるし。ってあーっ!!」


「な、なんだよ。」


「いたよ!もう一人!怪しい人!!」


「いや、その言い方だと不審者みたいだな!?…で、誰なんだ?」


「同じクラスの佐藤ちゃん。佐藤ちゃんもたっちゃんと仲いいし、違うかな!?」


「うーん…可能性はなくもないけどな…もはやもうこれわかんねえな…」


「私も…混乱してきちゃった…」


「よし、とりあえず皆が帰る前に今の三人だけ聞きにいくぞ!!」


俺達は走って教室を出た。

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