漢倭奴国王の「奴」に意味は無い

 「漢倭奴国王」の読みは通説では「カンのワのナのコクオウ」となっていますが、「カンのワドコクオウ」と読むべきです。あるいは「カンのワコクオウ」です。

 「倭奴国」は「倭」の「奴国」ではなく「倭奴国」です。

 「奴」は恐らくは蛮族の国と明示するために付けられた文字です。


 同じように「奴」を付けられた国に「匈奴」が有り、「匈」の字だけで「フン」と読み、種族の名前も「フン」だったようですから、本来であれば「奴」を付ける意味がありません。

 似たような例で「戎」は「戎狄」などと呼ばれたようです。


 漢民族の国が一文字であることから、是非とも蛮族の国と見なしたい国については二文字の国名で表し、それと容易に判別できるようにしているのだと考えれば腑に落ちます。

 だから「奴」を読む意味もないことでしょう。


 魏志倭人伝では「倭奴国」ではなく「倭国」と呼ばれます。上記の想像通りであればえらい出世です。蛮族ではないかも知れないと見なされた訳ですから。


 時代が下って旧唐書には「倭国」が古の「倭奴国」だと明記されています。

 しかし、時の大和朝廷は国名を改めます。


「これからは『日本』と呼べ」

「ほう、自ら蛮族を名乗るのか。良かろう」


 容易に国名変更が受け入れられた理由はそんなところではないでしょうか。


 ただ、それを伝えた遣唐使はどうにも横柄に見えたようで、旧唐書で中国側の不満が述べられています。

 もしかしたら次のような事を思っていたのかも知れません。


「格上の一文字国名の字義が気に入らないからと蛮族の二文字国名を名乗る? 馬鹿にしているのか?」

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