当て字の読み方について

 当て字の読み方には通説になっているものが多いのですが、願望も強く出ています。


 読み方としては魏志倭人伝の資料となる記録が行われただろう三国志時代の魏の言葉を元にしなければなりません。しかし、通説となっているものには時代が数百年下る漢音が当てられていたりもします。漢音より古い呉音は当たり前に使われます。そして中国の上古語の発音も使われます。それらが無秩序に組み合わされて読まれているのが実体です。


 魏志倭人伝の当て字を読む場合、漢音は論外です。漢音としてカナが当てられたのが江戸時代と言いますから、時代が懸け離れすぎています。いつ渡来したかも判らず、日本語訛りも起こしているとしても、呉音の方がまだマシだと言えます。


 とは言え、魏志倭人伝の呉音で読んだとしても「西班牙」を漢音で「セイハンガ」と読むようなもので、幾ら考えてもイスパニア(スペイン)は導き出せません。


 勿論、それを指摘して上古語で解読を試みようとしている方も多くいらっしゃいます。


 また、当て字と言うものは一音一文字が基本です。同じ文字を複数の読み方で読んだり、一つの音に複数の文字を割り当てたりはしないものです。選ぶ文字に個人差が有るでしょうから、文献が違えば異なる文字が使われることも有りましょう。しかし、同一文献内では同じ文字が使われる筈です。

 ましてや、背景からして軍事的色彩の強い報告書が元になっていると思われるため、誤解のない当て字を選んだに違いありません。


 だから「狗古智卑狗」を「くこちひこ」と読むなど考えられません。


 「こ」の音に「古」と「狗」を当てたりは考えにくいです。「狗」を「く」と読んだり「こ」と読んだりはいよいよ考えられません。そもそも中国語は例外は有るでしょうが一つの文字の読み方は一つであるようです。

 ただ、方言などの違いが有りますから、文献が違えば違う音になりえます。


 話を戻して、「卑狗」が「ヒコ」「彦」の可能性は有りますが、それならば「古」は別の音でなければ不自然です。しかし、この読みはほぼ通説に近い位置のようです。


 同様に地名や役職名なども疑ってかかる必要があります。

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