Gunman and Alchemist

鹿野苑 捨名

第1話ロマン溢るる荒野

 まだ法よりも力に重きがおかれ、正義に力がついてくるのではなく力が結果的に正義となった時代。新しく発見された大陸の荒野は空前絶後の活気に満ち溢れていた。




 人、土地、鉱石等、手垢のついていないまっさらな資源はまさにフロンティアを象徴するものであり、多くの人間が一攫千金のロマンを求めてやってきた。




 しかし・・・・・




 ロマンというオブラートを広げて中身を改めてみれば、そこには白人の意地汚い銭計算があるだけだった。しかもその白人も一部の限られた、つまりは元々金持ちだった人間に限られたのである。ロマンは、理想と現実の二つの顔で以って荒野に充満していったのである。




 鉄道の敷設、街の建設、ゴールドラッシュ。イベントは各地で巻き起こり、そのこと如くが大賑わいし人々は沸いた。しかし、その裏にはいつも暴力が暗躍していたのである。




 黄金色のロマンの影には、いつも悪党どもが潜んでいた。列車強盗やギャング等、薄汚い腐った犯罪者達が狙うのはいつだって金や宝石、黄金といったお宝だった。そして、そんな犯罪者達からお宝を守るために雇われたのが「ガンマン」だったのである。




 理屈はいたってシンプル、「より強い力で追っ払えば」いいだけ、しかも命は使い捨て、自分のお宝さえ守れればガンマンなんぞいくら死んだって構わないのである。




 荒野にいくつも残酷にちりばめられた「ロマン」。それが次第にいくつもの顔を覗かせると「強さへのロマン」だなどというものまで現れた。豊かさの象徴が「金」なら、力の象徴は「銃」。ロマンは、ガンマンにさえ甘い夢を見せるのであった。








 (・・・クソッ、やっぱり引き受けるんじゃなかったかな・・・・・。)




 心の中で或る男が毒づく。廃墟となった村には既に人影はなく、代わりといっては何だが銃を持った男たちが十数人ばかり待ち構えていた。






 前日の昼頃






 バーのカウンターで一人の男が酒をあおっている。


 彼の名前はスミス・カーター。荒野に、いや、ガンマンという職業に夢を見てしまった男である。ガンマンとしての依頼が無い日はこのバー入り浸り、たまにウェイトレスの尻を触ってひっぱたかれるのが日常であった。




 ガンマン暦はそこそこ長く、知り合いが多いのが彼の特徴だった。ガンマンの知り合いも、そうでない知り合いも多いのだ。




「所でよマスター、何か面白い話でも入ってないかい?」




 頬に赤い手形を付けてカーターがいう




「ん~?いや、旅の家族がカートン一味に殺されたって話くらいだな・・・」


「・・・またカートンか・・・・・」




 カートン一味、禄でもない犯罪者が集団になるともっと禄でもなくなる好例とでも言おうか。頭目の名前はスミス・カートン、フルネームが似ているのでカーターは取り分けカートン一味を嫌っている。




「1銭でも持ってりゃ女子供まで平気で殺すクズ共め・・・。」




 何時もはやる気の欠片も感じられない眼に一瞬光が灯る。




「被害ばっかり増えやがる、アジトも割れてるし賞金は欲しいが命はもっと惜しい。」




 バーのマスターは後ろをチラリと見る。生死問わずのお尋ね者の張り紙にはカートン一味の似顔絵がデカデカと張り出されている。賞金総額もかなりの額だ。




「一人じゃどうしようもねぇ・・・なぁ・・・・・。」




 お尋ね者を倒せば当然名は上がる。依頼も増えるし大きい仕事だって転がり込んでくる。しかし、請け負うリスクは自分の腕前と要相談だった。


 今までガンマンとしてならしてきたスミス・カーター、腕に自信が無いわけじゃない。しかし、数の差はいかんともしがたかった。




「なら、二人じゃどうかしら?」




 いつの間にか隣に女が座っていた。格好はいっぱしだが、顔つきはどうもこのバーには不釣合いに見える。




「・・・お嬢ちゃん、何も呑んでねぇのに酔っ払うってぇのは、あんまりいただけねぇなぁ。」


「酔ってなんかないわよ!」




 カウンターを叩く。素面なら余計性質が悪い、と思ったがカーターは口に出すのは止めておいた。




「貴方達がさっき話してたカートン一味に殺された家族、私の両親なの・・・。」


「「!?」」




 落ち着いて先ずは話を聞くことにした。それによると、どうやら仇討ちに協力して欲しいとのことだった。両親の機転でどうにか自分ひとりは助かったものの、親を殺したカートン一味は許せない。かといって単身乗り込んでどうにかなるような相手じゃない。せめてパートナーが欲しいということだった。




「報酬は一万払うわ、どうかしら・・・。」




 結構な額であった、しかもちゃんと現物も見せている(他の者に見えないように隠しながらであったが)。慎ましく暮らさなくても一年は暮らせるんじゃなかろうか、そんな額である。しかも懸賞金は全額カーターが持って行っていいという、・・・しかし。




「・・・・・報酬は兎も角、勝つアテはあんのか?お前さん終始強気で喋ってるが、死んじまっちゃぁ・・・。」




 当然といえば当然過ぎる疑問、しかし彼女は不適に笑う。




「私の名前はマリア・ダニッチ。ロジャー・ダニッチの娘よ。」


「な!・・・お前さん、あのドクトル・ミラヴィリスの娘か。」




 マスターが声を上げて驚く。




 「ロジャー・ダニッチ」


 錬金術師とも魔術師とも言われ、その研究分野は幅がしれない。多くの功績と伝説を築きドクトル・ミラヴィリス(驚異博士)と呼ばれてきたが、教会と対立したため現在は行方不明であった。




「あのロジャー・ダニッチがまさかこんなところでなぁ・・・・・。」


「父の知識の殆どは私が受け継いだわ、色んな道具もね。まぁ、まだまだ教えてもらいたいことは山ほどあったけど・・・・・。」




 騒がしいバーの中でそこだけが冷たく静かになる。気丈に見えるのもそう装っているからかもしれない。


 カーターは指先で帽子のツバをくいと上げた。




「一発当てりゃぁ一流ガンマンの仲間入りか・・・悪くないかもな。」




 正直なところ、悪い。傍から見れば二人の馬鹿が地獄へ頭から突っ込んで行く様にしか見えないはずだ。伝説の錬金術師の娘に如何程の勝算があるのか知らないが、そんなものとても信じられたものじゃない。


 カーターを動かしたのも功名心ではなく、目下同情心だった。




(そういやぁ、こういう話に滅法弱かったっけな・・・・・。)




 マスターは心の中で十字を切った。


 ロマンを夢見るガンマンの中には時々こういう男がいるのだ。依頼の損得ではなく依頼人の心情を汲む、というやつだ。最も、そういうガンマン程早死にするのが定説だが・・・・・。




「請けて、くれるの?」




 少しオズオズしながらマリアがいう。今までに何回依頼を出したかは知らないが、恐らく一回とてマトモに取り合っては貰えなかっただろう。その方が良かったのかも知れないが。




「伝説の錬金術師の娘さんよぉ、一丁目の覚めるような作戦を頼むぜ。」




 マジメに今後の作戦を話し合う二人、しかしカウンターではマスターが遠い目をしながら二人を見ていた。




(スミス・カーター、良い奴だったんだがなぁ・・・・・。)




 話が纏まり勘定を置いて店を後にする二人、マスターは黙って二人を見送るしかなかった。




「マスター、あの二人。」




 やり取りを遠目から見ていたのかスミスの知り合いと思しきガンマンが三人マスターのところへと歩み寄る。




「誰の目から見ても無茶なんだろうがなぁ・・・、相手も悪けりゃ手札も悪い。それでも勝負に乗っちまった以上、後はあいつらの運次第だな・・・・・。」




 ギィギィとなる扉を四人は見送る。カートン一味に勝負を仕掛けた者は今まで大勢いた。しかしそれだって数を揃えた上でのこと、カーターは前提条件からして既に詰んでいる。誰も彼が生きて戻ってくるとは思っていないだろう。






 数時間後の荒野、焚き火を焚いて二人の男女が話をしている。カーターとマリアである。




 彼女の話では早朝を狙って奇襲を掛けるとのこと。ガンマン同士の決闘ではおよそ考えられないことだが、これは仇討ちであるしどちらかといえば賞金稼ぎの仕事だ。ガンマンとしてのモラルは必要ない。








「貴方が依頼を受けてくれるまでの間に奴らのアジトは分かっていたし、見張りの動きだって確認したわ。簡単に言うと、見張りを最初に倒してそこから出てくる奴らを釣瓶打ちにしていくわけだけど・・・・・。」








 サラッと危険な発言をしているがカーターは流した。歳若いが行動力はあるようだ、前向きに考えるようにしたのだ。








 トントンと作戦が説明されていく。作戦自体はカーターが見ても文句はなく、少人数(二人)で戦うために練られてもいた。この通りに行けば確かに勝てるかもしれない、飽くまで絵図面どおりに行けばの話しであるが・・・。












 そして早朝のアジト












 作戦実行の為に二手に分かれた二人。アジト自体は廃墟となった村で、別段防衛に向いているとか小規模の砦が形成されているわけでもない・・・しかし。








(おいおい、随分話と違うぞ・・・・・。)








 カートンの要ると思しき建物の入り口付近には聞いた話どおり三人の見張りがいた。しかし、その周りにも数人の見張りが出張っていたのだ。








(クソッ、やっぱり引き受けるんじゃなかったな・・・。)








 大変今更なことをいいながらそれでもゆっくりと廃墟の中心付近まで移動する。予定ではここから少人数づつ相手にして確実に少しずつ倒していく予定だったのだが・・・。








(出たら蜂の巣になるのは目に見えてるな、コレ。)








 不意打ちで撃ち込めば何人かは倒せるだろう、カーターの連射は上手く当たるほうである。しかし人数がいすぎた。パッと見るだけで6人以上の敵が確認できる。ホルスターの中の相棒は6連発・・・。








(何かキッカケが欲しいな、マリアに期待するしかないが・・・。)








 陽動を掛けるとマリアは言ったが、ソレが何かまでは言わなかった。期待して待っててねといわれたが、その時のいたずらっ子みたいな笑顔に逆に不安がよぎった・・・。




 どうにも出来ず物陰から様子を伺うカーター。その時、まるで様式美といわんばかりに踵で小石を弾いてしまった。








カツーン








「ん?」








 見張りの一人が訝しげな顔をした、当然カーターのほうに歩み寄ってくる。








(な、何てベタな失敗をおおぉぉぉぉぉ!?)








 カーターは腰に手をやる。覚悟を決め十のグリップを握りこみ撃鉄を起こす。








(後は野となれ山となれか。)








 歩み寄ってきた見張りの影が見えた。




 瞬間。












ドガン!












 見張り小屋と思しき建物の一つが突如として吹き飛んだ。誰がやったのかは大体検討がついたが、何をやったのかはさっぱり分からなかった。




 爆音を聞いて見張りたちは足を止めている。




 カーターは撃鉄を起こした銃をそのままホルスターに収め、左手でナイフを抜くと素早く見張りを刺した。








「う・・・ぉ?!」








 一瞬呻き声をあげて倒れこむ見張りA。カーターは体を入れ替えるようにして見張りを物陰に隠しやり、ナイフを引き抜くと同時に見張りの銃を奪って走り出した。








 周囲の家屋がランダムに爆発していく。とんでもないことやりやがったと思いつつも、カーターはしっかりと銃を握り撃つ。銃声は爆音でかき消され、パニックになった敵達は右往左往。倒した敵から銃を奪って撃ち続け、外の敵は何とか全員あの世逝きとなった。








「さて、あとはアソコだけかね・・・。」








 カーターの視線の先にはカートンのいると思しき小屋。当然のようにアソコの周囲だけは爆発を逃れている。そして当然のようにそこから出てくるカートンの取り巻き達。








「後は持久戦かな、ちまちまやってりゃまぁいけそうだが。」








 敵から奪ったライフルを纏めて物陰に隠し、自分もその影に隠れて撃っていく。








「さぁて、マリアちゃんは無事かねぇ?」








 すでに大勢は決していた。カートン一味は瓦解、取り巻き連中は数も少なくなった上にパニック状態だ。








「何やったか知らないが、あの爆発はそりゃ驚くよな・・・」








 ビクビクオドオドと周りを警戒するカートンの取り巻き達。いつまた爆発が起こるかもしれないし仲間を殺した奴がコチラを伺っているかもしれない。恐怖に駆られた奴らはどれだけいようがガンマンの敵ではなかった。








「上手くいったわね。」








 その頃、カートンの小屋の裏手側にマリアはいた。見張りにばれないように動きつつ小屋に特製の爆薬をしかけ、導火線の長さを調節して次々と小屋を爆破していったのだ。








「表でカーターが頑張っている内に・・・。」








 窓から小屋に侵入し何かと物色を始めるマリア。どうやらなにか目的のものがあるらしかった。




 ・・・しかし。








「ない・・・何故!?」








 目的の物が見つからないようである。もしも売り払われてしまったのなら万事休すといったところだろう。








「何かお探しかい、お嬢ちゃん?」








 背後から聞き覚えのある声がした。




 振り返るとそこにいたのは紛れも無く親の仇、カートンだった。








「・・・・・カートン。」




「驚いたぜぇ、たまたまぶっ殺したのがあの驚異博士ロジャー・ダニッチだったなんてなぁ。」








 一体どこで知ったのか、カートンはマリアの父親のことを知っていた。








「・・・本は何処?」








 カートン一味が馬車ごと奪い去っていくのをマリアはみていた。故に取り返そうとしたのだろうが、目的が本であったとは・・・。








「コイツの事だろ?お嬢ちゃん。」




「!?」








 懐から一冊の本を取り出すカートン。表紙には一見して何やら訳の分からない記号やら文字がうってある。








「あのロジャー・ダニッチの持っていた本、売っ払っちまおうかとも思ったが娘が生きているのなら話は別だ!もしコイツが研究書か何かで娘の貴様が読めるとしたら、俺はコイツで巨万の富を得ることが出来る!」








 カートンにとっては今回のマリアの襲撃は僥倖であったらしかった。暗号だらけで読めない本でも、身内ならば読めるかもしれないと思ったのだろう。








「私が貴方に協力するとでも?」








 当然の反応であった。そしてカートンはマリアの一言を聞くとおもむろに腰から銃を抜いて言った。








「両足ブチ抜かれたあとにも同じこといえるか試してみるか、クソガキィ?。」








 銃口を向けるカートン、負けじとにらみ続けるマリア。両者の間に冷たい空気が流れる。




 ふと、カートンが気づいたように言った。








「お、銃声が止んだな。どこぞかのガンマン共でも雇ったんだろうが、今頃は全員蜂の巣よ。」








 高らかに笑い声をあげ勝利を確信するカートン。一方マリアは俯きうなだれている。








「観念したか?まぁ、本さえ解読できれば命まではとらねぇ。俺は仏のカートンで通ってるからな。」








 銃を収めマリアに歩み寄るカートン。部屋の中央付近まで来たとき、ドアがノックされた。








「何だ?。」




「カートンさん、ご無事ですか?」








 部下らしき人物の声を聞いてカートンの顔が緩む。








「おぉ、大丈夫だ。外は片付いたか?」








 扉を開けて一人中に入ってくる。その男は腰ダメにライフルを構えていた。








「あぁ、あんたで仕舞いだよ。」




「何だテメ!・・・・・。」








 カートンの言葉は途中でかき消された。銃を抜こうとしたカートンは額にカーターのライフルを受け、大の字になって転がった。もうピクリともしない。








「・・・・・遅かったじゃない?」




「人気者なもんでね、中々放してもらえなかったんだ。」








 二人で顔を合わせて笑いあう。








「その本が欲しかったのかい?・・・親父さんの?」




「ええ、父の日記なの。東洋の文字で書かれているからカートンは勘違いしたのね。」








 本には暗号が使われているわけでなく、ただ漢字で日記がつけてあるだけだった。








「これは父ロジャー・ダニッチが存在した証よ、只のね。」




「・・・よかったな、取り戻せて。」




「・・・・・えぇ。」








 マリアの声が若干震える。マリアは本を抱きしめると、顔を見られないように小走りで外に駆け出した。








「きゃぁっ!」




「!どうしたっ!?」








 そとでマリアが悲鳴を上げた。カーターが急いで外に駆け出すと、そこには銃を持った男達がわんさと待ち構えていた。








「あ、カーター。大丈夫か!」








 男の一人がカーターに駆け寄る。








「あ、何だてめぇロバートじゃねぇか!」




「?」








 事情を聞くところによると、どうも酒場で話を聞いたロバート含め三人が仲間を集めて助けに来たということらしかった。確かに周りをよく見渡せばチラホラ知ってる顔がある。








「くる途中カートン一味の奴らとやりあったんだけどよぉ、一人逃がしちまったんだよぉ。」




「なるほど、見張りの数が情報とちがったのはお前のせいだったか・・・。」








 ロバート達との一戦でカートン一味は身構えてしまったらしい。予定と色々違ったのはそのせいのようだった。








「で、カートンはどうした?」




「お陀仏さ、なかで死んでる。」








 カーターが言った瞬間男達が沸きあがった。口々にカーターを賞賛する声が聞こえる。








「スッゲェなぁカーター。コイツ等一人でやっちまったのかよ!」








 ロバートも興奮を隠しきれないようだった。そして








「いや、一人じゃないさ。」








 カーターはマリアを前に押し出し・・・








「二人でさ。」
















「いや~、まさか生きて帰ってくるとはなぁ。」








 カウンターでグラスを拭きながらマスターが言う。








「何てったってあの荒くれもののスミス・カートンを殺ったんだ。ここいらじゃぁ間違いなく知名度鯉のぼりだぜ!」








 隣ではロバートがまるで自分のことのように喜んでいる。








 あれから三日が経ち、事態も収束しつつあった。








「んでマリア、お前さんこれからどうするんだい?」








 カーターの隣に座るマリアにマスターが問いかける。








「旅の家族が目指してた街ってね、ココなのよ。」




「そうだったのか。」




「治安は悪くなさそうだし、信頼できそうな人もいるし、暫くはこの街にいようと思ってるわ。」




「おぉ、そうかそうか。まだ酒は出せないが、飯くらいだったらいつでも食いに来てくれ。」








 バーという所は騒がしい、とりわけこのバーはいつも笑い声であふれ返っている。そしてそんな店の中をふらふら歩いては客と笑い合ってる男がいる。








「父の技術の研究もしたいのだけど、研究にはお金がかかるしね。」








 マリアがもろ手を挙げる。








「おう、それなら丁度いい奴を知ってるぞ。」








 マスターがチラリと目をやる。








「最近大金持ちになったガンマンがいるんだ。」








 と、ロバート。








「で、その技術って奴で何が作れるんだい?」








 帽子のツバをくいと持ち上げてカーター。








「何でも作ってみせるわ!私はマリア・ダニッチ、あのロジャー・ダニッチの娘なんだから!」












 スミス・カーターは涙もろい、スミス・カーターは大金持ち、スミス・カーターは早撃ちの名人、スミス・カーターの銃は百発百中。色々な話がそこかしこで飛び交い、今やカーターは押しも押されぬ一流ガンマンだ。




 しかし、カーターは自分のことを一流だなどと思っていない。手に入った名声は目に見えるものじゃなく、結局ガンマンは依頼を受けて金を得るだけだった。








 たまに噂を聞いたものに聞かれる。








「あんたがあのスミス・カーターかい?」








 カーターは決まってこう返す








「あぁ、只のガンマンさ。」

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