第87話 おまけ 二人飲み〜アイリーンとクリス〜
アイリーンとクリスは、仕事帰りにシルド市内のレストランで食事をした。
「昇進おめでとうございます」
「ありがとう、もう知ってたのね。今日報告しようと思ってたんだけど」
クリスが頷く。
「どういう気分ですか?」
「嬉しいわよ」
「本当に?」
クリスは私を見透かしているように感じる。こんなに人に興味がある人間だっただろうか、とアイリーンは思った。
「正直に言えば複雑だけどね」
班長を任されるのは嬉しいが、ルイス班を抜ける事になる。おそらく第1箒兵大隊からも移動になるはず。セオリー通りだと、第1よりも危険度の低い隊に行くことになるだろう。
「隊長には指揮を学んで欲しいと言われた事があるけど……、結局エミリアを超えられなかった」
「まだ諦めてなかったんですか?」
「何よ。能力的な話よ」
「別にアイリーンさんがエミリアより能力が劣るなんて誰も思っていないですよ。ただ得意な分野が違うってだけの事でしょう。そんな事言われると俺より昇進するのに、立つ瀬がない」
「そういうつもりじゃなかったんだど……、ごめんなさい」
「隊長の事は諦めたんですか?」
「なかなか人の傷をえぐる事を言うわね……前からだけど」
「協力してあげてたのにもう不要なのかなと」
「その節は……」
アイリーンはワインのグラスを片手に頭をぺこりと下げた。
お見合いパーティーの際、クリスはアイリーンがルイスと喋れるように場を整えてくれたのである。
「……私を見てくれる人がいいなぁ。それで私もちゃんとまともに喋れないと意味ないよね」
「成長しましたね」
「……そう言うあんたの方が女性への対応に慣れているように思えないけど?」
「僕はあまり興味がないからいいんです」
「え、ホモ」
「違います」
「恋がどうのこうのより、まずはルイス隊長のように強くなるのが先です。あとアイリーンさんを抜かしたい」
「言ってくれるわね」
「俺のが先に小隊長になりますから」
「私も負けないわよ」
いつの間にこうして気軽にクリスと喋れるようになったのだろうか。まぁ、近いうちにパートナーではなくなるんだけど。ワインも美味しいし、またこうして二人で近況報告がてら飲むのも楽しいかもね。
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