第61話 合同演習⑧〜イケメン外国人箒兵ルジェク少尉の登場〜

 合同演習六日目 土曜日


 エミリアは昼まで宿営地で寝ていた。起きて身支度をし、食事をとりに、炊き出しエリアへ向かう。ちらほらとアーデルランド兵はいるが、ほとんどの隊員は街へ出掛けたようだった。昨日の飲み会時、やっとソフィアに会えたが、ソフィアはリパロヴィナ兵に少し気になる人ができたらしい。今日もその人と会うと言っていた。


 エミリアが、炊き出しのテントで昼ごはんを食べていると、遠くからルイスが歩いてきた。寝起きなのか、目はいつも以上に細く、髪はボサボサだ。


「先輩、髪整えてから出てきてはどうですか」


「うわ! びっくり! お前いたのか」


「……、先輩も今まで寝てたんですか」


「え、何、エミリアも寝てたの?」


「はい。なんだか疲れてしまったので今日はゆっくり休みます」


「てっきり昨日のリパロヴィナ兵と観光するのかと思ってたけど」


 エミリアはスープを見つめた。


「……私は先輩といる方が楽しいんです」



「……そういえば水の精霊が昔住んでいた場所があるらしいんだけど、一緒に行くか? 俺飯食ったら行くんだけど」


 エミリアの勇気を振り絞った言葉は、いとも簡単に流された。

 でも観光に誘われたのは素直に嬉しく、「はい」と答えた。


 馬車で20分。赤や黄色に紅葉した木々に囲まれた場所に、とても綺麗な湖があった。湖畔に遊歩道、周りは秋に咲く花が咲いている。ちらほらと観光客がいてみんな散策を楽しんでいた。


「わぁぁ。すごい綺麗な場所ですね。水も凄い透明度!」


「ここに精霊住んでいたのか? 遊歩道が出来て去って行ったのか?」


「何ぶつぶつ独り言言ってるんですか……」


「だって普通に観光地じゃん」


 何気にカップルが多い。


「そうですね。観光地になっちゃったから、いなくなっちゃったのかもですね。そんな事より遊歩道歩きましょうよ! うわぁぁぁ。ほんと綺麗な場所」


「お前、めっちゃ浮かれてんな」


「だって凄い綺麗じゃないですか! この紅葉! 私、花や湖が昔から凄く好きなんですよー。故郷にも湖が綺麗な場所があるんです! わぁぁ、このお花素敵!」


「……ほんと浮かれてんな」


「力が凄いみなぎってきますよ!」


「声大きすぎ……」



 その後


 ルジェクから手紙が届いた。開けると、光に包まれた小さな鳥が出てきて、チュルンと鳴いて消えた。


「冬にアーデルランドに遊びに行きます。おすすめの場所探しておいてね!」


 エミリアは、また波乱が起きる予感がした。

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