第59話 合同演習⑥〜イケメン外国人箒兵ルジェク少尉の登場〜

 合同演習五日目


 今日もルジェクは巧みな剣さばきでゴーレムに斬りかかっていった。きっとルジェクはモテる。何故ルジェクに好かれてしまったのか、エミリアには理解できなかった。


 順番が来て、エミリアは防御魔法を唱えた。が、上手く発動出来ない。


「あれ? どうして? 」


 魔法に集中できない。


「ここはこの呪文でいけ」


 背後からエミリアに代わり詠唱が始まる。


『――全ての物を拒絶せん、我らを守りたまえ』


 青白い魔方陣が広がり、防御魔法が発動。光の粒子が隊員達を包み込む。


 あぁぁ、やってしまった。この人にだけは防御呪文唱えさせたくないのに。そしてなぜ詠唱。いつもはお互い短いワードを唱えるだけで魔法を発動できるのだ。


 エミリアは心臓が急激にうるさく鼓動した。

 恐る恐る振り返ると、魔法を唱えた人物、ルイスがいた。

 ルイスはすでにリパロヴィナ軍の幹部と話をしている。そして上級ダンジョン向けに作戦が立てられた。


「我々第1箒兵大隊が周辺を取り囲み、正面から侵入。貴国第二大隊が裏へ回り挟み討ちにします。では、どの呪文をご覧になりますか?」


 両国の上層部が見学にきて、現場は、より一層緊張した空気に包まれる。


「全ての属性の上級魔法を見せて頂けるかな?」


 リパロヴィナ軍の幹部がルイスに注文する。


「畏まりました」


 ルイスの魔法に当たらないよう、隊員や幹部が安全な位置に移動する。



「ではまず水魔法を」

 ルイスの足元に、強い光を帯びた水色の巨大な魔方陣が広がる。その魔方陣は素早く正確に複雑な紋様を描いていく。


「Taidal Wave」

 大量の水が勢いよく発生し、ゴーレムへと襲いかかった。ルイスの水魔法の一撃で大きなゴーレムは崩れ再起不能になった。


「続いて雷魔法。Thunder Storm」

 上空に雷雲が発生し稲妻の矢がまた別のゴーレムに無数に降り注ぐ。


「土魔法。Meteo Fall」

 隕石の群れを作り出し、ゴーレムへと衝突させる。


「風魔法。Tornado」

 竜巻が発生しゴーレムを襲い、土塊にしてしまう。


 いずれの魔法も、恐ろしく、そして美しくもあった。見本を見せたところで、完璧な魔方陣を描き、発動させることは、一般兵士からすれば、とても難しい事だろう。



「最後、炎魔法です。Inferno」

 紅蓮の炎がゴーレムに焼きつき、辺りを灼熱地獄にした。



「ありがとう。ルイス君。さすがアーデルランドきっての魔術士だね。こんな立派な魔術は初めて拝ませて頂きました。是非今後とも我々の魔法技術向上に力を貸していただけますか?」


 リパロヴィナ軍の幹部の言葉に、ルイスは快く返事をした。

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